いつか古巣の浦和や日本代表の監督候補として名前が挙がるようになれば最高だと語るセルジオ越後氏 いつか古巣の浦和や日本代表の監督候補として名前が挙がるようになれば最高だと語るセルジオ越後氏

昔と違って欧州でプレーする日本人選手は増えた。リーグやカテゴリーを問わなければ、何人いるのかも把握できないくらいだ。でも、指導者はどうか。選手にまったくついていけていないよね。そこは今後の日本サッカーの大きな課題だ。

そんななか、ちょっと楽しみなニュースが飛び込んできた。フランクフルトが、今季限りで契約の切れる38歳の長谷部(誠)と5年間の契約延長を発表。クラブの説明によれば、選手としては来季限りで引退し(同日、本人は引退決定を否定)、その後はコーチとして2027年まで指導を行なう契約だそうだ。

引退後にコーチやスタッフとして所属クラブと契約を継続するケース自体は珍しいことではない。Jリーグでも、チームの看板選手がそうすることがあるよね。ただ、言葉や文化の壁のある、いわば"アウェー"の欧州でそうした立場を築くのは大変なこと。話は全然違う。

長谷部は08年に浦和からヴォルフスブルクに加入し、ニュルンベルクを経て、14年からフランクフルトに加入。以降、8シーズンにわたってボランチやリベロとして高いレベルでチームに貢献してきた。19年にはブンデスリーガのベストイレブン候補になり、今季も主力として活躍している。その実績は申し分ない。

でも、ただ長くプレーすればいいわけじゃない。選手契約延長に加えて指導者としての長期契約も勝ち取れたのは、人間性も含めて高く評価されているからこそ。長谷部は日本代表でも長く主将を務めたけど、まじめさとリーダーシップが評価されるのは世界共通。本当に素晴らしいことだし、彼の努力のたまものだと思う。

長谷部はすでに指導者ライセンス取得に向けて動きだしているという。ひと口に指導者といっても、普及や育成などいろいろな役回りがある。また、本人がどういうプランを持っているのかはわからない。でも、こういうチャンスをもらえる人はなかなかいない。ぜひフランクフルトのトップチームの監督を目指してもらいたいね。

最初に言ったように、欧州でプレーする日本人選手は増えたけど、指導者はほぼ見当たらない。過去には、日本代表監督を務めた岡田(武史)さんが中国のクラブ、西野(朗)さんがタイ代表など、日本人指導者がアジアのチームを率いたケースはあるけど、いずれも成功したとは言い難い。

現在もリオ五輪代表監督の手倉森(誠)さんがタイのクラブ、本田(圭佑)がカンボジア代表の監督をやっているけど、残念ながら欧州へのステップアップは考えにくい。

また、たくさんの時間とお金を使って日本の指導者ライセンスを取得しても、欧州のクラブの監督はできないという、ライセンス制度のそもそもの欠陥もある。日本代表の現監督の森保(一)さんですら欧州のクラブの監督にはなれないわけだからね。

そうした状況にあって、長谷部には期待せざるをえないよ。もちろん、欧州のトップリーグの監督となれば、常に結果を求められる。厳しい世界なのは間違いない。それでも、彼が一歩踏み出せば、日本サッカーは新たな道を切り開くことになる。

そして、いつか古巣の浦和や日本代表の監督候補として名前が挙がるようになれば最高だね。

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