クリスティアーノ・ロナウドについて語った宮澤ミシェル クリスティアーノ・ロナウドについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第244回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、クリスティアーノ・ロナウドについて。3月12日のトッテナム戦で世界記録を塗り替え、歴代最多得点記録者となったC・ロナウド。そのすごさについて宮澤ミシェルがあらためて解説する。

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やっぱりスーパースターっていうのは、やることが違うよな。

クリスティアーノ・ロナウドが3月12日のトッテナム戦でキャリア通算得点を807点に伸ばして歴代最多ゴールの世界記録を塗り替えたけど、ハットトリックで決めるあたり、やっぱり派手なことが似合う男だよな。

それまで805ゴールで記録保持者だったのが、ヨーゼフ・ビカン。1930年代から1950年代にかけてスラビア・プラハなどで活躍したFWらしいんだけど、C・ロナウドの記録更新で脚光を浴びなかったら、知らないままの選手だったよ。てっきりペレが最多ゴールの記録を持っているんだと思っていたからね。

それにしてもC・ロナウドがこんなに得点を決める選手になるなんて、あのアレックス・ファーガソンでも予見してなかったんじゃないか。ファーガソンがマンチェスター・ユナイテッドの監督時代にC・ロナウドをスポルティング(ポルトガル)から獲得したときは、リーグ戦とカップ戦を合わせて、わずか5ゴールだよ。

左サイドから代名詞だったシザースを織り交ぜるドリブル突破でチャンスメイクする選手だった。それがマンチェスター・Uでプレーするようになってから少しずつゴール数を増やしていって、転換点は23ゴールを決めた4年目だったんじゃないか? あのシーズンでゴールを決める達成感を覚えた気がするね。それが翌2007/2008シーズンに31得点でプレミアリーグ得点王につながったと思うよ。

そこからはドリブルでの仕掛けもするけど、どんどんシュートを決めることに特化していったよな。2009/2010シーズンからレアル・マドリードに移籍したことも後押ししたよな。レアル・マドリードにはC・ロナウドがゴールを奪うことに専念できるだけのメンバーが揃っていたからね。

マンチェスター・ユナイテッドでは6シーズンで通算118ゴールだったのが、レアル・マドリードでは9シーズンで450ゴール。平均して1シーズン50ゴールだぜ! 試合数よりも得点数が上回っているんだから、本当にバケモノだよな。

なにが驚くって、その後のユヴェントスでも3シーズンで101ゴールを奪っていること。セリエAでプレーしていたときは、あまり目立たなかった感じだったけど、決めるべきときに決めていたんだよな。

単なる左サイドのドリブラーから、年を重ねるごとにゴール中央でのフィニッシャーへと変貌したC・ロナウドだけど、それを可能にしたのは実は身長の高さもあるよな。もう十数年前になるけど、初めてピッチレベルでC・ロナウドを見た時に、その背の高さに驚かされたのを覚えているよ。

189cmもあるのに、マンチェスター・U時代はドリブラーだったから、それほど身長に目は行かなかったんだよな。それだけの身長があれば、フィジカルをガンガンに鍛えれば、空中戦で競り負けないのも納得だったね。

もちろん、ヘディングでのワンタッチゴーラーとしてだけじゃなく、足元のシュートのうまさも抜群だし、一時期は無回転シュートでゴールも量産したからこそ、世界最多ゴールを塗り替えられたんだよな。

ただ、センターフォワードとしてチームに貢献できるという観点に立てば、カリム・ベンゼマ(レアル・マドリード/フランス代表)の方を、私は高く評価しているんだよね。ベンゼマはポストプレーもできるし、味方のためにCBを引き連れてスペースを空けることもできるし、シュートもうまい。勝負強さもここ数シーズンでようやく身につけ出したからね。

それに引き換えると、C・ロナウドは、センターフォワードとしてはチームへの貢献度は高くはない。やればできるんだろうけど、彼のポジションはセンターフォワードではなく、C・ロナウド。これはメッシも同じだよな。世界にふたりだけが許されている特別なポジションだよな(笑)。

ポルトガル代表では184試合で115得点も決めているけれど、もしベンゼマのような選手がチームメイトにいたら、もっと決められていたんじゃないか? そしたらいまごろはW杯カタール大会への出場権を手にしたはずだろうね。

日本代表は3月24日にW杯カタール大会へのストレート・インをかけてオーストラリア代表との決戦に臨むけど、同じタイミングでポルトガル代表もW杯出場権をかけた大一番に挑むんだよ。

3月25日(日本時間)のトルコ戦に勝てば、3月30日(日本時間)にはイタリア代表vs北マケドニア代表の勝者と、プレーオフでの出場権をかけた大一番が控えている。

普通に考えればポルトガル代表とイタリア代表の決戦だと思うけど、クリスティアーノ・ロナウドか、昨年のEURO王者のどちらかはW杯カタール大会で見られないってことだからね。日本代表の行方ももちろん気になるけど、サッカーファンとしてはこの一戦からも目が離せないよな。

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