W杯本番までにやるべきことを、福西崇史が深堀り! W杯本番までにやるべきことを、福西崇史が深堀り!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第17回目のテーマは、W杯本番までに日本代表がやるべきこと。グループリーグではドイツ代表、スペイン代表という強豪国たちと同じグループEを戦うことが決まった日本代表。グループEを勝ち上がるために日本代表がやるべきこととは? 福西崇史が語る。

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W杯カタール大会で日本代表はドイツ代表、スペイン代表、そしてニュージーランドとコスタリカのプレーオフ勝者とグループEを戦うことが決まりました。

サッカー関係者のひとりとしては、この組み合わせは日本サッカーの目標にする"W杯でベスト8以上に進出"に向けて「厳しい」と言わざるを得ません。

でも、ひとりの日本サッカーファンとしては、これほど楽しみな組み合わせはないと感じています。

それはドイツ代表やスペイン代表とガチンコ勝負ができるからです。日本代表がW杯本大会でドイツ代表、スペイン代表と対戦したことは、これまで1度もありません。親善試合でもドイツ代表とは2004年(0-3)と2006年(2-2)にそれぞれ1試合ずつ合わせて2試合しかなく、スペイン代表とは2001年の1試合(1-0)だけです。

世界のトップ・トップの強豪国とは親善試合でさえマッチメイクが難しいもの。それなのに2010年W杯優勝国のスペイン代表、2014年W杯優勝国のドイツ代表と、これ以上はない真剣勝負の舞台で対戦できる。いまの日本代表、ひいては日本サッカーの実力をしっかり見定めることができるという点で楽しみにしています。

そうしたときに議論になるのが、強豪国に対しての戦い方ですよね。"日本らしさを追い求める"のか、それとも"現実に即した戦い方"を取るのか。

ボクはどちらの方策でも先々の日本代表の糧になると思っていますが、敢えて言うなら勝負に徹した戦い方をすべきだと思っています。

それはサッカーが試合内容ではなく、勝敗によって評価されるスポーツということ。加えて、サッカーのスタイルというものは大前提が試合に勝つために練られてきたものだからです。これを見失っては本末転倒になってしまうと思うのです。

日本サッカーは世界のトップに追いつき・追い越すために、基本は4年ごとに日本代表監督を代えてきました。サッカーのトレンドを分析し、それを日本代表に落とし込める監督を招聘。ただ、そのたびに志向するサッカーが逆ブレすることも多々ありましたし、そこも日本サッカーらしさとも言えるのですが(笑)。

日本代表のレベルだけを比べれば、初めてW杯に出場した1998年フランス大会よりも2002年日韓大会、日韓大会よりも2006年ドイツ大会といったように、前回大会の日本代表よりも力をつけてきました。

でも、W杯での日本代表の結果はグループリーグ敗退と決勝トーナメント進出が交互になっています。世界トップとの力の差が依然として横たわっているのは、日本サッカーだけではなく、世界のサッカーそのものが進化しているからです。

それを踏まえて、ここから11月のW杯本番までの間で、森保監督がどんな日本代表をつくり上げていくのか。ポイントとしては、森保監督が競争から熟成へとどのタイミングで切り替えるかだと思います。

よく言われることに「ポジションは競争だ」というのがありますよね。確かにそうなんですが、実際にはすべてのポジションで選手を競争させていたら、チームを熟成させるにはあまりにも時間がかかりすぎてしまう。

現にW杯アジア最終予選の最終戦となったベトナム戦では、前戦から先発9人を入れ替えて臨みましたが、まったく別のチームのような戦い方になってしまいました。

チームとしての根幹を残しながら、2~3人、多くても4人を入れ替える程度に留める。その中でチームにフィットし、バリエーションやチーム力を上げる存在を見い出していくのが、限られた時間の中でチームを熟成させるカギになるとボクは思います。

その点で言えば、ベトナム戦で9人も入れ替えたのは、競争とは別の狙いが森保監督にはあったということでしょうね。

W杯本番までは半年ほどの時間はありますが、強化に使える時間は限られています。現状で決まっている代表活動は6月に親善試合4試合を行うということ。

対戦国はまだ発表になっていませんが、一部報道ではブラジル代表と交渉中らしいです。ブラジル代表は観たいなと思うものの、W杯に向けた日本代表強化としては、もっと本番を想定した戦いのできる相手ともマッチメイクを実現させてもらいたいなと思いね。

欧州のチームは、UEFAネーションズリーグが控えているので、マッチメイクはなかなか難しいかもしれませんが、グループリーグで対戦するのがドイツ代表やスペイン代表である以上、ヨーロッパの組織だったサッカーのできる国と戦えるのが本当は望ましい。

さらに理想を言えば、W杯予選で敗退したイタリア代表との試合を観たいですね。守備を固めてカウンター一発で守り勝つ「カテナチオ」から脱却し、攻撃的なスタイルに変貌して昨年のEUROを制覇。W杯予選はケガ人が出て苦しみましたが、あのサッカーは日本代表がW杯を想定して戦うには打ってつけですよね。

ボールポゼッションで圧倒され、押し込まれた展開で、日本代表がどう引き分けに持ち込むのか。どうやって点を狙うのか。実践さながらの状況下でチームの成熟をはかったり、新戦力のテストを行う。これに優る強化試合はそうはないので、マッチメイク交渉には頑張ってもらいたいなと思います。

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