5月28日(現地時間、以下同)の決勝戦に向けて佳境を迎える今シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)では、準々決勝を勝ち抜いた4チームが決定した。
今回ベスト4に進出したのは、マンチェスター・シティとリバプールのイングランド勢と、レアル・マドリードとビジャレアルのスペイン勢。
下馬評では、マンチェスター・シティ、リバプール、レアル・マドリードの3チームが優勢と見られるが、準々決勝で強豪バイエルン・ミュンヘン相手に〝ジャイアントキリング〟を起こしたビジャレアルも決して侮れない存在だけに、優勝予想は簡単ではない。
注目の準決勝では、悲願の初優勝を狙うマンチェスター・シティと、史上最多となる13回の優勝を誇る名門レアル・マドリードが激突。もう一方のカードでは、現段階で優勝候補筆頭と目されるリバプールに、〝伏兵〟ビジャレアルが挑むことになった。
まず、マンチェスター・シティ対レアル・マドリードの構図を極論すれば、「組織力」対「個人能力」の対決になる。
スペイン人のペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティ最大の強みは、ゴールキーパーを含めた11人全員が攻撃的にプレーする最先端のチーム戦術だ。徹底してボール保持にこだわり、どんな相手に対しても攻撃的姿勢を崩さない。
しかも、ベルギー代表MFケビン・デ・ブライネ、ドイツ代表MFイルカイ・ギュンドアン、ポルトガル代表MFベルナルド・シウバ、あるいはイングランド代表MFフィル・フォーデンら、各国代表の一流選手たちがオートマチックに高度な戦術を遂行するため、ほぼ確実に敵陣で試合を進めることができる。
それに対し、イタリア人カルロ・アンチェロッティ監督のレアル・マドリードは、自陣での強固な守備が自慢。その上で、ボールを奪取した後にはブラジル代表FWヴィニシウスのスピードを生かしたカウンター攻撃を繰り出すことを得意とする。
フィニッシュの局面においては、フランス代表FWカリム・ベンゼマ、クロアチア代表MFルカ・モドリッチというレジェンド級のタレントが違いを生み出すため、一瞬の隙があればゴールネットを揺らすことが可能だ。
チームの完成度ではマンチェスター・シティが上回るものの、常に攻撃的に戦う分、相手のカウンターに脆(もろ)さを見せる一面もある。つまり、両者の特徴を重ね合わせると、試合はマンチェスター・シティの猛攻をレアル・マドリードがしのぎ、カウンターに活路を見いだす、という展開が予想される。
レアル・マドリードにとっての好材料は、マンチェスター・シティには優勝経験がない点だろう。CLで最後に初優勝を遂げたチームは、10年前のチェルシー(イングランド)。その前となると、1997年のドルトムント(ドイツ)までさかのぼらなければならないほど、経験がモノをいうのがCLの戦いだ。
昨シーズンに初めて決勝戦の舞台に立ち、優位といわれながらチェルシーの前に涙をのんだマンチェスター・シティ。彼らが再び悲願達成のチャンスを手にするためには、まずは準決勝で優勝経験豊富なレアル・マドリードを打ち破る必要がある。
リバプール対ビジャレアルは、リバプールが圧倒的優位とみられる。CL5度目の挑戦のビジャレアルに優勝経験はなく、準決勝進出も、初挑戦でベスト4入りした2006年以来2度目。両者の経験値を比較しても、優勝6回のリバプールに軍配が上がる。
とりわけ就任7年目を迎えたリバプールのドイツ人監督ユルゲン・クロップは、3シーズン前にもリバプールをCL優勝に導いた実績がある。その上、チーム力はその当時よりも確実にアップしている。
残念ながら日本代表FW南野拓実は準々決勝2試合で出場機会がなかったが、逆に言えば、選手層がそれだけ厚いということ。よほどのことがなければ、リバプールが準決勝で敗退することはないだろう。
ボール保持にはこだわらないが、高いラインを維持しながら前線から激しく守備を行なうスタイルは、マンチェスター・シティに肩を並べるほど攻撃的だ。
そして高い位置でボールを奪った後は、エジプト代表FWモハメド・サラー、セネガル代表FWサディオ・マネ、ポルトガル代表FWディオゴ・ジョッタらハイレベルなフィニッシャーが次々とゴールを襲う。その決定力は爆発的だ。
そのリバプールに挑むビジャレアルのスペイン人、ウナイ・エメリ監督としては、準々決勝のバイエルン戦で見せたような堅守速攻に活路を見いだしたいところ。セットプレーを含め、数少ないチャンスをいかにものにできるかが勝負の分かれ目になる。
戦術家のエメリ監督は、相手のストロングポイントを消すことに長(た)け、チームにはそれを遂行するだけの選手もそろっている。キーマンは、スペイン代表FWジェラール・モレノ。自陣で奪ったボールを彼が収め、効果的なカウンターを発動できれば、そこに勝機が生まれるはずだ。
人口約5万人の小さな町のチームにとって、CLは夢の舞台。ベスト4まで来れば、もう失うものは何もない。そのチャレンジャー精神こそが、再び大番狂わせを起こすために必要不可欠な要素になる。
果たして、今シーズンのCLの行方はいかに。4月26、27日の準決勝第1戦は要注目だ。