「心が震えるような衝撃を受けた試合は?」という質問を、レジェンドから今をときめく現役レスラーまで4名のに投げかけたシリーズ企画『私の心が震えたプロレス名勝負3選』をお届け。
3人目は、日本のプロレスに衝撃を受け、イギリスから日本へ移住したクリス・ブルックス。ロックスターな風貌で凶器も使いつつ、高い関節技スキルも見せる彼は、「DDT」を主戦場に配信特化型プロレス「チョコプロ」まで縦横無尽に参戦。女子プロレスラーから着ぐるみまでを相手に名勝負を量産中だ。
強烈で怖くてちょっと笑える試合スタイルはいかに築かれたのか? 「路上プロレス世界一決定戦」で優勝し勢いに乗るクリス・ブルックスに、10代で衝撃を受けた日本のプロレス名勝負3選を聞いた(詳しすぎた)!
①KENTAvs金丸義信(GHCジュニアヘビー級選手権) 2005年7月18日
14歳か15歳の時に初めて見た日本の試合がコレ。イギリスに「レスリングチャンネル」って番組があって、いつもアメリカのインディを放映してるんだけど、70年代の日本の試合やノアも流れるんだ。それで初めて見て「オリジナルはここだったのか!」って衝撃を受けた。05年頃のアメリカのインディは、明らかに日本のジュニアヘビーからの影響を受けていて、KENTAと金丸はそのスタイルの創始者なんだと感じた。
まずKENTAは革新的。フットスタンプすら誰とも違う新しさがあった。先輩にも無礼だし(笑)、レスラーとしての姿勢も独特。この2人の対戦はお互いに一歩も引かない激しさで、だからこそROHでもブライアン・ダニエルソンやロウ・キーとも競い合えたんだと思う。
俺は 6、7歳の頃からWWFを見始めて、その頃には正直ちょっと飽きていた。そこでこの試合を見てすっかり日本のプロレスに夢中になって、みちのくプロレス、ドラゴンゲート、DDTも見るようになった。この試合は、日本のプロレスのヤバさにヤラレる序章みたいなものかな。
②ディック東郷、MEN'Sテイオー、獅龍、TAKAみちのく、船木勝一vsグラン浜田、スペル・デルフィン、タイガーマスク、愚乱浪花、薬師寺正人 1996年10月10日
海外でもけっこう有名な試合だよ。見た時は「ナニコレ!」って未知への扉が開いた(笑)。90年代半ばのみちのくプロレスは、大人数のタッグマッチのひとつの完成形で、どれを見ても面白いんだ。TAKAと船木はWWF、ディック東郷はECWに出てるし、もちろんグレート・サスケも有名だし、実は世界レベルの選手が何人も出てるんだ。
誰かが言っていたけど、プロレスは絵を描くようなもの。2人だと絵の具は2色だけ。でも大人数だと華やかな絵が描ける。タッグってすごくクリエイティブだよね。自分の試合でも、俺以外にあと3人誰がいたら刺激的かなって考える。俺のプロレス観の根っこになってるのかも。
この頃のみちのくは、シリアスなレスラーもいればハイフライヤーもいて、驚異的なバランスでプロレスの自由さを教えてくれる。特に愚乱浪花は、スペル・デルフィンと一緒にお笑い要素をプロレスに昇華させた人だと思う。この2人のタイミングは漫才みたいに完璧! 今も影響を受けてるよ。
ちなみにこの会場・両国国技館での俺の初試合は、19年の伊藤麻希とのタッグ。入場での下手なダンスのGIFが今も出回ってる(苦笑)。でもすごいのが、その試合のレフェリー・松井さんは、なんとこの10人タッグのレフェリーでもあるんだ! それを聞いた時は「マツイサン、スゴーイ!」ってなったけど、彼はそう感傷的なタイプでもないみたいで反応は薄かったな(笑)。
③真霜拳號、円華vsMEN'Sテイオー、忍(BJW認定タッグ選手権試合) 2008年5月3日
イギリスではネットで見るしかないけど、08年はまだネットも遅くて1試合のダウンロードに1時間かかってた(笑)。この挑戦者タッグの「MEN'S CLUB」は知ってる? 大日本プロレスのユニットで......(詳しすぎて略)、みちのくの進化版みたいな試合をしていた。そのユニットの忍は細いけどめっちゃ強いんだ。俺の体型と似ていて、むしろ俺の方が身長がある。このスタイルなら強さを追求できると確信した。
この試合は観客の熱気もすごいんだ。他団体に流出したベルトを取り戻そうと会場が一体になってるし、選手の人間関係の熱さも見える。忍は円華と戦うだけでなく、先輩のテイオーを越えようと戦ってるんだ。しかも肩と脚を怪我してるのに......(泣)。
これでプロレス観が広がって、「K-DOJO」「暗黒プロレス組織666」というクリエイティブで革新的な素晴らしいインディプロレスの世界も知った。まあオタク道にズブズブと足を踏み入れて行ったわけ(笑)。
●クリス・ブルックス
1991年8月24日生まれ イギリス・ティプトン出身。196cm、87kg。2007年にデビューし、イギリスのファイトクラブ・プロを主戦場に活動。里村明衣子との対戦などで日本でも知名度を上げる中、満を持して19年に初来日。20年1月にはなんと日本に移住し、DDTを中心に日本で活動を続けている。初代DDT UNIVERSAL王者。現KO-Dタッグ王者。
公式Twitter【@OBEYBrookes】
公式Instagram【@christofarr】