日本のプロレスに衝撃を受け、イギリスから日本へ移住。現在は、主戦場である「DDT」以外にも幅広い活躍を見せるクリス・ブルックス。
先日週プレNEWSで配信したシリーズ企画『私の心が震えたプロレス名勝負3選』では、自身に衝撃を与えてくれた3つの名勝負を教えてくれたが、そのほかにも記事に収まりきらないほどのプロレス知識や自身の哲学を披露していただき、泣く泣くカットしてしまったところも。
ということで今回は、本企画の番外編として、取材時にクリスが語ってくれた日本プロレスへの愛と、自身のプロレス哲学についてをお届けします。
――日本のプロレスにかなり詳しいんですね! プロレス観に共感する日本の選手はいますか?
クリス グレート・サスケさんはオープンマインドで、考え方には共感する。他にも、さくらえみさん、マサ高梨、飯伏幸太さん、大仁田(厚)さん、高木三四郎さんも。高木さんは今もクレイジーだけど若い時はもっとでしょ(笑)。ルールや慣習に縛られないパンクロッカーみたいなレスラーが好きなんだ。
――プロレスで大事にしていることは?
クリス これはマスターベーションじゃないぞってこと。若いと「こうなりたい」が先に立つけど、見てくれる人がいちばん大事だから。創造的で誰の真似でもない試合をするだけじゃなくて、それがお客さんに届いて楽しんでもらえるのが理想だね。
――刺激的な試合スタイルで批判されることもありますね。
クリス タッグで対決した秋山準さんも、俺たちのスタイルを嫌いだと言ってたね。でも誰かのお気に召さないからって悲しむ必要はないよね。
たとえば俺はCRAMPSってバンドが大好きだけど、他の誰かはつまんない音楽だと言う。でもいいバンドだよ。Tyler,the Creatorってラッパーも、批判する人は多いけど俺は最高にエモくて天才だと思う。人って人生において必ず何かを嫌うものだし、誰かが否定してもその本質が損なわれるワケじゃない。
だから「路上プロレスなんてバカじゃないの」って言われても俺は構わない。花火だって使うし女性とも戦うし怪獣とも試合する。誰かに怒られるぐらい面白い試合がしたいね。
――「イギリス人レスラー」という既存のイメージとの戦いもあるのでは?
クリス イギリスのレスラーと言えばザック・セイバーJr.だよね。「クリス・ブルックス? ああザック系のイギリス人ね、でもザックの方が上だよね」ってみんな思うんじゃない?
確かにザックは伝統的な英国スタイルの凄いレスラーだ。でも俺はB級版ザックなんてゴメンだ。ネクスト・ケニー・オメガにもなりたくない。俺は俺のやり方でベスト・クリス・ブルックスになりたい。
――活動の場に日本を選んだのは?
クリス 自由にプロレスしたいから。自由ってプロレスでいちばん大事なことだよ。実は18年にWWE・NXT UKから声が掛かったんだけど断ったんだ。周りは気でも狂ったかって言ったけど、でも自由は大事だしエモいプロレスがしたいから。DDTはそれができる数少ない団体。だから2年半いる。
――2年半のベストバウトを選ぶなら?
クリス 1つに選べないから2つで! 1つは竹下幸之介とのタイトルマッチ。竹下は俺以上に俺を信じて、彼のレベルまで俺を引き上げてくれた。何の小細工もなく30分もぶつかり合って、プロとして凄い試合を届けられたと思う。もう1つはチョコプロでのルルペンシルとの試合。彼女はキャリア2年で身体的にはホントに弱い。でも彼女との試合の配信には、世界中から「マジ感動」「泣いた」って共感のチャットが届いた。
プロレスって凄いヤツに引き上げてもらうこともあれば、誰かを引っ張ることもできる。そして化学反応が起こって観客の気持ちも動かす。この2試合はそれを実感できたんだ。
今、DDTでプロレスできてる俺は世界一幸せなヤツだと思う。実況やって試合して、ああ今日もいっぱいプロレスして楽しかったって1日が終わる。仕事だとすら感じないし、むしろもっとやりたい。プロレスはハードで怪我もするけど、リングの上の10分、15分が凄まじく楽しいんだ。
煙草を吸う人なら何本吸っても「あー、もう一服」ってなるように、何試合しても「あー、もう1試合」って欲しくなる。どんなに激しい試合をしても翌日がオフだとヒマで死にそうだ。完全にプロレスホリック(プロレス中毒)だね(笑)。
●クリス・ブルックス
1991年8月24日生まれ イギリス・ティプトン出身。196cm、87kg。2007年にデビューし、イギリスのファイトクラブ・プロを主戦場に活動。里村明衣子との対戦などで日本でも知名度を上げる中、満を持して19年に初来日。20年1月にはなんと日本に移住し、DDTを中心に日本で活動を続けている。初代DDT UNIVERSAL王者。現KO-Dタッグ王者。
公式Twitter【@OBEYBrookes】
公式Instagram【@christofarr】