みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
すっきりと目が覚めて気持ちよく始まった休日の朝も、なにか嫌なことがあったら気分は台無しになってしまいます。1日を最後まで気持ちよく過ごすというのは意外と難しいもの。
それは野球の試合でも同じで、先発投手の出だしが良くても継投次第で試合が壊れてしまうことがあります。今日は、試合を整える「中継ぎ」についてお話ししたいと思います。
プロ野球の投手は、大きく3つの役割に分けられます。先発、抑え、そして中継ぎです。中継ぎの仕事は多岐にわたりますが、一番大切な役割は先発投手が作った流れを壊さないこと。
そして、先発のコンディションを維持するためにも「負け試合」で登板すること。3連戦を2勝1敗で戦い続ければ優勝できるわけですから、長いシーズンを戦うチームを中継ぎが陰で支えていることは間違いありません。敗色濃厚の試合で2イニング投げ切る中継ぎは、とても大事な存在です。
番組でもご一緒している元ロッテの黒木知宏さんから、中継ぎの難しさを聞いたことがあります。黒木さんによると、先発の次に投げる中継ぎは本当に大変だそうです。先発投手より球が速いか、あるいはまったくタイプが違わないと通用しないことが多いとか。
先発投手の球に目が慣れたタイミングで中継ぎが登場するわけですから、同じタイプの投手だと攻略されやすくなります。それゆえ、中継ぎには変則タイプが多いのだと気づきました。
試合時間が長くなってしまうことが理由でMLBでは禁止されてしまいましたが、ワンポイントリリーフという継投策も見どころですよね。2アウト満塁のピンチで登板して、バシッと抑えて静かにガッツポーズしながら引き上げていくシーンには目頭が熱くなります。きっと、その1球のためにブルペンで仕上げてきたのでしょう。
中継ぎは"先発ローテーションに入れない選手"という偏見があることは否定できません。それでも、先発でも抑えでもなく、中継ぎで活躍する投手がいることも事実。
阪神の藤浪晋太郎選手が先発から中継ぎに転向したときは不調を騒がれましたが、相手にとってこれほど嫌な中継ぎはいませんでした。中継ぎの才能というのはきっとあるんです。
記憶に残る中継ぎといえば、元ヤクルトの五十嵐亮太さん。抑えの高津さん(現ヤクルト監督)が控える中、五十嵐さんが出てくるとその試合は安全圏に入ったという感じがしました。石井-五十嵐-高津の継投は、勝利の方程式とも呼ばれました。
あとは、元中日の浅尾拓也さん。史上初、中継ぎでMVPを獲得した偉大な選手でしたね。現役で言うと、日ハムの宮西尚生選手は先日、史上8人目の800試合登板を達成しました。いかにシーズンを通して活躍しているかがわかりますよね。推定年俸は1億円を超えると言われています。
中日の祖父江大輔選手も1億円プレイヤー。数年前の契約更改のときに、ダルビッシュ選手が中継ぎが評価をされない日本の野球界を嘆きました。海外では分業制が当たり前で、中継ぎの重要性は広く共有されていますから、祖父江選手の評価の低さが残念に思えたのでしょう。ダルビッシュ選手のおかげか、現在は中継ぎの重要性はきちんと理解されています。
ヤクルトの清水昇選手は昨年の契約更改で大幅アップを勝ち取った際に、リーグ優勝後のテレビ番組に自分が呼ばれなかったことを挙げて、「もっと活躍して中継ぎという地位を築きたい」という言葉を残しました。
中継ぎには「これ」といった武器を持った職人肌の選手が多いですよね。監督としてはいろんなカードを持っていたほうがいいわけで、中継ぎが豊かなチームほど強いことは間違いありません。個性豊かな中継ぎという仕事は、まさに選手の多様性を具現化しているともいえます。
みんなちがって、みんないい。中継ぎが野球の素晴らしさを教えてくれたところで、今回はおしまい。また来週お会いしましょう!
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン