南野にはシーズン開幕からエンジン全開で、リバプールを後悔させるくらいの活躍を見せてほしいと語るセルジオ越後氏

なんといっても今年はW杯イヤーだし、前向きな決断だと思う。

リバプールに所属していた南野のモナコへの移籍が決まった。欧州でも指折りのビッグクラブであるリバプールに加入したのは2020年1月。それからもう2年半がたつ。スター選手だらけのチームにあって、なかなか出場機会を得られず、21年にはサウサンプトンへの期限付き移籍も経験した。

昨季は国内カップ戦でゴールを決めるなど、チャンスが少ないなりに頑張っていたけど、結局、リーグ戦での出番は増えなかった。助っ人としては物足りなかったということだ。

あらためて感じるのは、ビッグクラブの壁の高さだね。常に勝たなければいけないから、毎年いい選手が入ってくる。特に攻撃的なポジションは競争が厳しい。

過去にビッグクラブに所属した日本人選手を見ても、中田英(ローマ)、香川(マンチェスター・ユナイテッド)、本田(ACミラン)など、いずれも思うような結果を残せなかった。南野もその壁を乗り越えられなかったね。

ただ、そのことをネガティブに考える必要はない。彼の場合はチームに残ろうと思えば残れたはず。それでも移籍を選んだのは、もっと試合に出たいからだろうし、それはプロの選手として当然のこと。

いつも言っているけど、プロ選手はプレーしてなんぼ。いくらネームバリューの高いチームに所属していても、試合に出られない状態が続けば、そのうちさびついてしまう。南野もカタールW杯を前にコンスタントに試合に出て、調子を上げたい気持ちがあったのだろう。その意味で、よいチャレンジだと思う。

これはほかの欧州組、特に日本代表の選手にも言えること。例えば、スペインでなかなか結果を出せていない久保は、どんなにひいき目に見ても、昨季の成績で保有権を持つレアル・マドリードに戻るのは難しい。今季もパッとしない状況が続くようなら、一度Jリーグに戻って仕切り直すことも考えたほうがいい。

話を戻すけど、南野が新天地に選んだモナコはプレーしがいのあるチームだね。フランスリーグはメッシやネイマールのいるパリ・サンジェルマンの一強状態が続いているけど、モナコはそれに次ぐ第2グループのチーム。昨季リーグ3位だから欧州チャンピオンズリーグ(予選)にも出場できる。

リバプールに比べれば格は落ちるけど、個々の選手のレベルは高く、ここで継続的に試合に出られれば、まだまだレベルアップを望める。

そのためにも重要なのが、開幕後すぐに結果を出せるかどうか。サポーター、マスコミ、チームメイトに自分をどう印象づけるかだね。

かつて1998年に中田英(ペルージャ)はイタリアデビュー戦でユベントス相手に2得点を決め、すぐに周囲の信頼をつかんだ。その後の活躍はあらためて言うまでもない。

その1年後、同じくイタリアに渡った名波(ベネチア)はデビュー戦で蹴ったFKがクロスバーに阻まれた。あれが入っていれば、彼もイタリアで長くプレーできていたかもしれない。"たられば"になるけど、それくらいスタートダッシュは大事。

南野にはシーズン開幕からエンジン全開で、リバプールを後悔させるくらいの活躍を見せてほしいね。

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