場当たり的な人事で中・長期的なビジョンはないと語るセルジオ越後氏

よくも悪くも話題を提供してくれるクラブだ。

Jリーグで低迷している神戸が6月29日、ロティーナ監督との契約を解除し、強化部スタッフだった吉田孝行新監督の就任を発表した。神戸の監督交代はシーズン開幕から4ヵ月半にして早くも今季3度目だ。 

プロの世界だから、監督は結果を出せなければクビ。当たり前のこと。でも、神戸の場合はあまりにも多すぎる。しかも、吉田新監督は神戸で通算3度目の監督就任。J2降格の恐怖から何かを変えなければいけないと考え、とりあえず手近なところで新監督を見つけたのだろう。場当たり的な人事で中・長期的なビジョンはない。

今季の神戸は監督以外にも、3月に新たな強化責任者を迎え、6月には社長を代えている。これだけ手を打っても、また、あれだけ人件費を使っても成績が上向かないのは、ガバナンスに問題があるとしか思えない。

バルセロナ化を掲げて、ここ数年、イニエスタ、ビジャ、サンペール、ボージャンら名前のある選手を補強してきたけど、いま神戸の試合を見ても、どういうサッカーを目指しているのかよくわからない。彼らに限らず補強はネームバリュー優先で、本当に現場が欲しがった選手なのかと疑問に思う選手もいる。

確かに、今季はフェルマーレンが抜けたのが大きかった。でも、その穴を埋めるのに獲得したのはベテランの槙野。彼は若手からポジションさえ奪えていない。また、横浜Fマから移籍した扇原には僕も期待していたけどベンチスタートが多い。なぜ獲得したのだろう。補強でチーム力が上がっていないんだ。

頼みのイニエスタももう38歳。フリーでボールを持てばさすがの技術を見せるけど、そんな場面は試合中に数えるほどしかない。運動量が少なく、相手のマークを受け、持ち味を発揮できていない。ボージャンやリンコンも助っ人らしい活躍はできていない。これでは厳しいよ。

今季のJリーグは例年以上の混戦だし、神戸にいる選手の顔ぶれを見れば、ほかの下位チームよりもレベルが高い。さらに、ここにきてモンテネグロ代表のストライカー、ムゴシャを緊急補強した。普通に考えればJ2降格はないと思うけど、これまでのちぐはぐな戦いぶりを見ているサポーターは心配だろうね。

その神戸以外にも各チームが補強に動いている。浦和がフェイエノールトからリンセンを、名古屋は重慶からレオナルドを、G大阪がベールスホットから鈴木武蔵を獲得。いずれも開幕前に上位進出を期待されながら、決定力不足で勝ち点を稼げていないチームで、ストライカー獲得は当然の動きだ。

特に神戸が大迫、武藤とムゴシャをどう組み合わせて起用するかは注目したい。ムゴシャの活躍が神戸のJ1残留のポイントになるんじゃないかな。

その一方でチームのトップスコアラーが抜けてしまったのが鹿島。上田がサークル・ブルージュに移籍した。鈴木優磨とのツートップは本当に素晴らしかっただけに痛い。高さも強さも決定力もある上田の穴をどう埋めるのか。エヴェラウドの復調を期待するだけでは心もとない。

本気で優勝を狙うなら、やっぱり補強が必要だ。シーズンが終わった後、「(優勝できなかったのは)上田の穴が大きかった」という言い訳は聞きたくないね。

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