プロ野球のオールスターゲームが近づいてきました。夏本番と同時にペナントレースも折り返しということで、首位を走るヤクルトのようにこのまま仕事もプライベートも好調を維持したい山本萩子です。

オールスターといえば年に一度の祭典ですが、その中でも、大きな試合で記憶に残る活躍をする「お祭り男」と呼ばれる人がいます。

元祖お祭り男と言われるのは、オールスターでホームラン記録を作った清原和博さんでしょうか。オールスター史上初の単独ホームスチールを決めた新庄剛志さん(現・日本ハムファイターズ監督)、ランニングホームランを達成したイチロー選手などを思い浮かべる方が多いようですが、私の考えるお祭り男は少し違います。

私の中のお祭り男は、大きな大会で普段残している数字以上の活躍をする選手。まっさきに思い出すのは、2017年WBCの小林誠司捕手です。

安定した守備と肩の強さが魅力の小林選手でしたが、打撃の方はそこまで期待値が高くなかったと記憶しています。それなのに、大会が始まったらまさかの大爆発。チームトップの打率を残すなど、明らかにファンたちの期待以上の活躍をされました。安定感が魅力の選手が、こういう場面で活躍するのは興奮します。

ということで、私が考えるお祭り男の条件を挙げてみます。

・絶対的エースや主軸ではない
・事前の予想を裏切る活躍を見せがち
・ポカもあるけどミスを帳消しにする一振り
・リーグ戦では打てなかった相手も打てる

あとは、多少のことでは動じない肝っ玉の太さも大事かもしれません。格上の相手と対戦するときも気持ちで負けない。後手に回らない、恐れず初球から振っていく、球場の雰囲気に飲まれない......などなど。

MLBだと、ボストン・レッドソックスの澤村拓一投手。巨人時代の歴史的な暴投の記憶も鮮烈ですが、それ以上に素晴らしい完璧なピッチングを見せる日もあります。あるいは、ヤクルトにいた村中恭兵投手もひどく波がありましたが、ありえないくらいのパーフェクトな登板もあったりと、そういうところが大好きでした。

このような選手の登板日は、あまり言い方はよくありませんが、ガチャを引くような気分。ハズレの日もあれば、回を重ねるごとに無双状態、あるいはスターを取ったマリオ状態(古いでしょうか)になることも。

そして、ゲームと同じでいつかその効果は切れます。そういう波のある感じも愛しい。ノッているときは見ている方も気持ちが乗りますし、記憶に強く残ります。そういう選手こそ、お祭り男になれる可能性があるのかなと思います。

夏本番。水分補給と感染対策をしっかりと。皆さまどうかご自愛ください

前回の連載でも書きましたが、プロとしては好不調の波が少ないほうがいい選手なのは間違いないでしょう。でも波が大きい選手ほど、時に超一流選手をしのぐほどの活躍をすることも。記録だけでは計れない魅力があるんですよね。いい波がくると、チームもどんどんノッてきますから、ペナントレースの鍵を握っているとも言えます。

最後に、私が注目する次世代のお祭り男を紹介して終わりたいと思います。

それはヤクルトの西浦直亨(にしうら・なおみち)内野手です。レギュラー争いで遅れをとっている上に、先週の試合では勝敗を決する大きなミスをしてしまったのですが、意外性と爆発力はチーム屈指。西浦選手は強運の星の下に生まれているような気がするから、シーズン終盤の大事な場面でも活躍してほしいと思います。

ということで、来週はオールスター。超一流選手はもちろん、一夜の輝きを見せる選手にも注目してはいかがでしょう。それではまた。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!