日本の夏の風物詩といえば、高校野球。各校のライバルとはもちろん、コロナという新たな敵とも戦う球児たちの甲子園が始まりました。
試合開始のサイレン、エースの力投、劇的な幕切れ。高校野球は青春そのものですよね。どんなプレーにも手を抜かず、常に笑顔で全力で取り組む姿には涙が出そうになります。とにかく熱い、そして暑そう!
阪神甲子園球場は高校球児の「聖地」と呼ばれます。ご挨拶が遅れました、強烈な日差しの中、日焼けと日々戦っている野球大好き山本萩子が、「私の聖地」についてお話しさせていただきます。
甲子園球場はなぜ聖地と言われるのでしょう。それは野球をやっているみんなが、その地を目指して戦っているから。同じように、私の育った神奈川県では、ある程度勝ち進むと試合ができる特別な球場があります。それが通称「保土ヶ谷球場」です。
近年、甲子園の神奈川県予選の決勝は横浜スタジアムで行われることがほとんどですが、2021年には保土ヶ谷球場で決勝が行われました。かつて甲子園を沸かせた神奈川出身のスターたちは、この球場を舞台に活躍していました。保土ヶ谷球場での試合は地元のテレビ局TVKで中継もされるので、神奈川の球児たちはこの球場でプレーすることを目標にしていると聞きます。
今でも時々訪れるのですが本当にきれいな球場で、プロ野球でも使ってほしいくらい。日本でも有数の地方球場と言っていいでしょう。
地方スタジアムといえば、愛媛県松山市の「坊ちゃんスタジアム」もいいですね。オールスターが開催されることでも知られるこの球場は、街の美しさも施設の美しさも指折り。丸みを帯びた球場の形は、多くの座席からピッチャーマウンドが見えるように考えられているからとか。
キャンプ取材で訪れたときに、球場の美しさに思わず息を呑みました。ドジャー・スタジアムを彷彿とさせるこのスタジアムを目当てに観光に行きたいくらいです。
宮崎県西都市の「石貫階段」も私の聖地。ちょっとマニアックになってしまいますが、ヤクルトがキャンプを行う公園の近くにある169段のその階段は、体力づくりと下半身の強化を目的として、ヤクルトの選手なら誰もが悲鳴を上げたことのある場所なんです。
この地で走り込んだことが今の快進撃につながっているかと思うと感慨深いですね。実際に自分で階段をダッシュするわけではないけど、この場所に来たらジーンとしてしまうことでしょう。
そして、ヤクルトの2軍が練習をする「戸田球場」は、選手たちの汗が染み込んだ特別な場所。灼熱の暑さで真っ黒になった選手との距離も近く、この場所で結果を残した選手が一軍に帯同するのを見ると胸がいっぱいになります。戸田のチケットの半券は、今でも大事に手元に残しています。
そして、やはり一番の聖地は「神宮球場」。私にとってはヤクルトの聖地ですが、学生野球が行われることもあり、それぞれの思いが詰まった特別な場所なのだと思います。
神宮球場の立地は本当に素晴らしいですよね。都会とは思えない鬱蒼とした木々の中にあって、カクテルライトが空を明るく照らし、まるで森の中に浮かんでいるような異世界感があります。
コンコースから階段を上がって、球場全体が目の前に開けた瞬間のあの美しさ。芝と森の緑、スタンドの青。遠くにある高いビルとのコントラスト。外苑という名からもわかるように、明治神宮にも近いこの一帯の存在感は都内でも屈指だと思います。空気さえしんとしている気がします。
その一方でバッティングセンターがあったり、あるいはヤクルトの練習場が近くにあって、徒歩移動する選手とすれ違ったりと、その緩さが親しみやすくて、この球場こそがヤクルトという球団の価値を高めているのだと思っています。何度訪れても、神宮に行くと胸がときめきます。
みなさんの聖地はどこですか?
今年の甲子園はどんな結末を迎えるのでしょう。出場している選手はもちろん、見ているみなさんにとっても、この聖地での戦いが素晴らしい記憶になりますように。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン