バルセロナについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第265回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、バルセロナについて。いよいよ開幕したラ・リーガの新シーズン。その中でも宮澤ミシェルが注目しているのはやはりバルセロナだという。

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ラ・リーガがついに開幕したよ。前シーズンの終了から3ヶ月ほどしか経ってないけど、ようやくって感じがするくらい、ずいぶん待った気がするんだよな。

そのラ・リーガで今シーズン1部リーグでプレーを見られる日本選手は、レアル・ソシエダに移籍した久保建英だけ。寂しいよなあ。それだけに久保にはソシエダで確固たる地位を築いてもらいたいよ。開幕戦のカディス戦では見事なゴールを決めて1-0での勝利に貢献。幸先のいいスタートも切れたことで、ラ・リーガ挑戦4年目で大きな飛躍を遂げてくれるんじゃないかって期待しているよ。

その久保の行く末と同じくらい気になっているのが、やっぱりバルセロナだよ。昨シーズン途中からクラブ・レジェンドのシャビ・エルナンデスを監督に招聘して再建を託している。成功への片鱗を昨季残り試合で見せてくれたけど、それが本物かどうかが見えるのが、今シーズンだよな。

今季の補強での大きなトピックは、バイエルンから獲得したロベルト・レバンドフスキ。マンチェスター・シティに移籍したアーリン・ハーランドの成長曲線次第では、今季終了時点での評価は変わっているかもしれないけれど、現時点で言えば、間違いなく世界最高のストライカーはレバンドフスキ。その選手を獲れたことは大きいよ。

ゴール前中央にレバンドフスキがいれば、いやでも相手のマークはそこに集中するからね。ポーランド代表のようにレバンドフスキ頼みになっちゃうとキツイけれど、バルサはまわりにいい選手がたくさんいるからね。レバンドフスキが徹底マークされても、逆にそれをプラスに転換できると思うし、ゴール数もチーム全体では増えるんじゃないか?

CBにもデンマーク代表のアンドレアス・クリステンセン(前チェルシー)を獲得できた。これもいい補強だよな。ジェラール・ピケは全盛期から比べたら衰えてきているからね。ロナルド・アラウホを含めた3選手でシーズンをまわせれば、守備は安定するんじゃないかと思う。

ただ、バルサの場合、ずさんな経営を長くしてきたツケを払わなきゃいけないから、そこの問題をどうクリアしていけるか。新戦力を登録できないので放出しましたじゃ、誰が監督をやろうとも復権は絵に描いた餅になっちゃうからね。

メッシ時代から脱却はそう簡単なことではないけど、若い選手も次々と台頭しているから、ここでしっかりと形をつくれれば、ラ・リーガのタイトルだけではなく、チャンピオンズリーグで復権する可能性はあると思う。

昨季のCLではグループステージで敗退したけど、やっぱりバルサのいない決勝トーナメントは物足りなかったのは否めないよ。腐っても鯛と同じで、バルサはどんなに悪いチーム状態でも世界トップの戦いには不可欠だよな。

そのバルサで今シーズンの命運を握っているひとりが、ウスマン・デンベレだと思うよ。昨季はケガがあったり、契約延長で揉めたりしてフルシーズン働けなかったけれど、リーグ戦の終盤に見せたパフォーマンスは圧巻だったよ。持ち味の爆発的なスピードを、試合の中でどう生かしたらいいかの引き出しが増えたように感じたね。

まだ25歳だぜ。選手としてはここから脂が乗ってくるおいしい時期だからね。昨季終盤のような存在感をシーズン通じてフルに発揮できたら、バルサの顔になってもおかしくないよ。フランス代表としてもワールドカップでエムバペを超える活躍をしても不思議はない。そう言いたくなるくらい持っているポテンシャルはすごいんだよ。

このデンベレが左サイドで切り崩して、中盤にはペドリやガビがいて、最前線のゴール前ではレバンドフスキが待ち構えている。そんな光景を想像するだけで、昨季よりもやってくれるという期待感は高まるよ。

ただ、0-0で引き分けたラージョとの開幕戦は、まだ付け焼刃という感じで、チーム全体としてのまとまりはなかったよな。そもそも選手を起用できるのか?って状態だったわけだし仕方ないとは思うけどね。これから連携が深まっていったらどうなるのか楽しみだよ。

あとはバックアップ陣をどれだけ厚く維持できるかだよな。シーズンは長いし、リーグ戦の他に、チャンピオンズリーグや国内カップ戦などたくさんのタイトルのかかる試合がある。調子の波があるのは当然だから、メンバーを入れ替えながらチーム力を常に高い位置に維持する。これがバルサ復活への課題になってくると思うよ。

今シーズンは11月中旬からワールドカップ・カタール大会がある。バルサに限ったことではないけれど、代表選手を抱えているクラブはここからの序盤戦が大事だよな。バルサはシーズン当初のエンジンのかかりは悪い傾向にあるけれど、今季ばかりは序盤からスタートダッシュを決めてもらいたいね。それができれば、ラ・リーガへの注目度も再び高まっていくと思うよ。

その点も含めて、8月22日に組まれているレアル・ソシエダvsバルセロナの一戦は大注目だよ。久保が古巣との対戦でどんなアピールをするのか。そして、今季のバルサは本当に期待できるチームなのか。ほかにも見どころはあるけれど、まずはそこをしっかりチェックしたいですね。

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