日本代表の各選手はおおむねまずまずのスタートを切ったと語るセルジオ越後氏

欧州のシーズン開幕から約1ヵ月。日本代表の各選手はおおむねまずまずのスタートを切った。

特に守備的なポジションの選手たちは、吉田(シャルケ)や板倉(ボルシアMG)、守田(スポルティング)らが新天地で頑張っているし、長期の故障から復帰した冨安(アーセナル)を除けば、いずれも所属クラブで定位置を確保。頼もしい限りだ。

いつも言っていることだけど、今の日本代表の守備は安定している。もちろん、対戦相手との力関係やチームとしての戦い方次第で崩れるときもあるけど、基本的には誰が出てもある程度の計算が立つ。11月開幕のカタールW杯に向けても僕はそれほど心配していない。

問題は攻撃陣だ。W杯アジア最終予選や今年6月の強化試合4連戦ではチームとしての攻撃の形が見えず、個人技頼みの場面が目立った。カタールW杯では強豪のドイツ、スペインと対戦する。彼らから勝ち点を奪って決勝トーナメントに進むためにも、個々のレベルアップは必須だ。

また、おそらく引いて守ってカウンターを狙う展開になること、5人の交代枠があることを考えると、切り札になりえる選手がひとりでも多くいたほうがいい。

その意味で、まず気になるのは南野(モナコ)と伊東(ランス)のフランス組。共に新天地に移籍したカタールW杯のスタメン候補だ。

南野はまだチームにフィットしていないね。試合を見ると、ボールに触る機会が少なく、攻撃にあまり絡めていない。どちらかといえば、守りでボールを追いかけるシーンが目立つ。2試合続けて退場者を出すなどチーム自体の調子もよくない。

勝てない責任を新戦力の選手が押しつけられることはよくあるだけに、今は早く結果が欲しいところ。ちょっと心配だ。

伊東はケガの影響で開幕節を欠場したものの、その後、徐々に出場時間を延ばしている。フランスは昨季までプレーしていたベルギーよりレベルは高いけど、コンディションさえよければ、彼のスピードはある程度通用するんじゃないかな。このまま徐々に調子を上げてくれるといい。

攻撃の切り札といえば、同じく新天地に移籍した三笘(ブライトン)はまだポジションを奪えていない。試合に出れば悪くないプレーを見せ、なぜもっと三笘を使わないのかと僕も思うけど、ブライトンに限らず、チームの結果が出ているとき、監督はメンバーをいじりづらいもの。しばらくは我慢が続きそうだ。

そのほかではレアル・ソシエダに移籍した久保が開幕節でゴールを決め、絶好のスタートを切った。よく走っているし、何より昨季よりもゴールに近いエリアでプレーできている。

ソシエダはベテランのダビド・シルバ(元スペイン代表)を中心にパスをよくつなぎ、いいサッカーをしている。シルバはお手本になるし、久保にとってはプレーしやすい環境なんじゃないかな。

ただ、まだ安心はできないね。久保が高い技術を持っているのは、プレーを見れば誰でもわかる。課題はフィニッシュの精度だ。

2節のバルセロナ戦では決定機を外したけど、ああいう場面で決められるかどうか。ベンチには18歳のフランス人FWモハメド・アリ・チョーという強力なライバルもいる。先発で使われている今のうちに目に見える結果を出しておきたいね。

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