大会全体を見ればレベルの低下が気になったと語るセルジオ越後氏

有利な条件が重なったとはいえ、きちんと結果を出したのは素晴らしい。まずはそこを評価すべきだ。

アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で浦和が決勝進出を決めた。今回の東地区ノックアウトステージは埼玉での集中開催。日本勢は浦和、神戸、横浜Fマの3チームが出場し、地の利がある浦和が勝ち残った。

準決勝の全北現代(韓国)戦はスリル満点だった。内容(2-2、PK:1-3)を見れば負けてもおかしくなかったけど、延長戦の最後によく追いついた。なかでも2得点に絡んだ酒井はさすが日本代表というプレーを披露。勝負どころでのパワフルな守備、攻め上がりは本当に素晴らしかったね。

GK西川もベテランらしく落ち着いていた。もっとも、PK戦に関していえば、ゴール裏から相手にプレッシャーをかけたサポーターに勝たせてもらったようなもの。あれだけたくさん大旗を振られたら、どんな選手も集中を乱される。僕なら蹴りたくない。今季は声出し応援による罰金問題もあったけど、浦和はサポーターに感謝しなければいけないよ。

ただ、浦和が勝ち残ったのはよかったけど、大会全体を見ればレベルの低下が気になった。結局、グループステージを通じて日本勢が勝てなかったのは韓国のチームだけ。

近年、タイをはじめ東南アジア勢のレベルが上がっているとよく言われるけど、浦和はラウンド16でジョホール(マレーシア)に5-0、準々決勝でパトゥム・ユナイテッド(タイ)に4-0と大勝。中国勢も財政的な問題で一気に弱体化した。

数年前まで現役バリバリのブラジル代表が何人もプレーしていたのにね。また、オーストラリア勢もコロナの影響でか、不参加。東地区は実質、日本と韓国の2ヵ国だけで争ったようなもの。正直、以前に比べてワクワクドキドキする試合が少なかった。

しかも、今回のノックアウトステージはセントラル方式。僕はいつも言っているけど、ホームアンドアウェー方式はサッカーの基本。中立地ではない埼玉を開催地にするなんて意味がわからない。浦和にはなんの罪もないけど、フェアな条件ではなかった。

AFC(アジアサッカー連盟)からすれば、人気クラブの浦和の観客動員力に期待したのかな。いずれにしても、今のACLは問題だらけ。参加チーム数を絞るなど何かしらの工夫をしないと、いつまでたってもアジアは世界との距離を縮められない。大会の存在意義が問われる状況だ。

話を浦和に戻すと、決勝は来年2月とかなり間隔が空く。シーズンをまたいでオフ明けすぐ、選手の顔ぶれもガラッと変わっているかもしれない。また、西地区もまだラウンド16だから相手も決まっておらず、予想は難しい。

もちろん、Jリーグの代表として優勝してほしいけど、近年の西地区はレベルの高いチームが多いし、今のままでは不安要素が多い。今回は地の利に加えて、ラウンド16、準々決勝ともに涼しい時間帯に試合を行なえるラッキーもあった。開催方式が違っていたらどうなっていたかな。

気になるのは得点力。今はモーベルグや松尾が頑張っているけど、強い相手との試合では、本職の点取り屋が必要だと思う。ユンカーが完全復調してスタメンに戻れるか、今夏に加入したリンセンがフィットするか、今後のJリーグでの戦いぶりに注目したい。

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