みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。今回のテーマは「捕手」。ずいぶん地味なテーマだと思ったあなたは、今すぐ反省してください(笑)。

捕手はご存じのとおりチームの要。若い頃は強打者やエースなど華やかな選手に目がいったものですが、人生経験を重ねると、捕手というのはなんと偉大なポジションなのだろうと思うようになります。というわけで、今回は捕手についてお話させてください。

捕手といえばどんなイメージがありますか? 装具が重たそう、縁の下の力持ち、女房役、などなど。これらだけを総合すると、なんだか地味なポジションなのかもと感じるかもしれません。しかし、私は声を大にして言いたい。捕手がダメだと勝てない! 日米問わず、捕手がしっかりしているチームは強いんです!

昨年までヤンキースにいたゲイリー・サンチェスという捕手は、球団の歴史に名を残すほどの強打者でしたが、リード面とキャッチング技術に課題があるとされていました。そのサンチェスがツインズにトレードで放出され、代わりにマスクをかぶるようになったホセ・トレビーノ捕手は打撃よりも守備面が特徴の選手。

今シーズンのヤンキースは大きな補強はしていないけど、ア・リーグ東地区の首位を走ってきました。捕手が変わるとこんなにチームが変わるのかと驚きます。やはり捕手はチームを勝利に導く大事な存在なのです。

ヤクルトの中村悠平捕手、ムーチョさんもリード面が課題と言われた時期もありましたが、ヤクルトのレジェンド・古田敦也さんによる指導を受けて、大きな成長を遂げます。選手としても飛躍し、現在では古田さんが背負った背番号27をつけるまでに。

捕手は、守備についている9人の中で一人だけ違う方を向いています。みんなと違う景色を見ているからこそ、気づくこともあります。投手の動揺を誰よりも早く察知して、落ち着けと声をかけます。絶妙なタイミングでマウンドに行き、ひと言ふた言かわす。それだけでどれだけ投手の気持ちは救われることでしょう。捕手はグランド上では監督であり、お母さんのように頼れる存在なのです。

また、投手の女房役としてなにより大事なのは、リードとしっかりしたキャッチング。アスレティックスのショーン・マーフィー選手など、大柄なキャッチャーだと的も大きく、どしっと構えてくれるから投げやすそうです。

ミットの構え方にも個性があります。ピシッと狙ってほしいところに構える捕手と、アバウトに構える捕手がいます。番組でご一緒している五十嵐亮太さんは、アバウトに構えてほしいタイプなんだとか。球威を重視して投げ込みたいタイプの投手はそうなのでしょうか。

ちなみに古田敦也さんはアバウトに構えるタイプだったとか。捕手は選手のことを穴が開くほど観察するといいますから、味方である五十嵐さんの良さを引き出すために工夫をしていたのかもしれません。

相手の分析であったり、味方のクセであったり、捕手は他のチームメイトより段違いに多くの情報を処理しています。中腰の態勢もつらいでしょうし、今の3倍くらいお給料を上げてもいいのではないでしょうか。捕手はチームの大黒柱です。

モリーナとは程遠い、頼りなさ

私が尊敬してやまない捕手といえば、MLBではヤディア―・モリーナ選手。今季限りの引退を明言していますが、入団以来カージナルス一筋で、長年にわたり強いチームを支えてきました。移籍が激しいメジャーでは珍しい選手です。

モリーナ選手がすごいと思うところはいくつもありますが、個人的にはマウンドに行くタイミングが素晴らしいなと。試合中、なんでもないようなタイミングでサッとマウンドへ。試合後に振り返ると、あのタイミングで投手と相談した結果、次の球がこうなったから、こういう展開につながったのだと理解できます。

モリーナはリーグの顔ともいうべきスター選手ですが、そっと脇役に徹するところも好き。元チームメイトだった選手が凱旋でブッシュ・スタジアムに帰ってきたときには、わざと打席から離れてスタンディングオベーションをじっと待つ、そんな様子を何度か目にしました。偉大な選手はどんな場面でも状況に応じた心配りができます。

守備の扇の要にいるキャッチャーは、試合を作ることができます。縁の下の力持ちかもしれないけれど、時には強気のリードで打者を手球に取ることだって。最近では佐々木朗希投手とバッテリーを組むロッテの松川虎生捕手、雰囲気があっていいですね。大物になる捕手というのは若い頃から、いい意味でふてぶてしく空気にのまれない、そんな気配を漂わせている気がします。

捕手にも色々なタイプがいますし、なにが一番というわけではありません。みなさんの好きな捕手はどんなタイプですか?

それではまた!

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!