6月に対戦が発表されたメイウェザー(左)と朝倉(右)。8月末の記者会見では、にらみ合いで一触即発の場面も 6月に対戦が発表されたメイウェザー(左)と朝倉(右)。8月末の記者会見では、にらみ合いで一触即発の場面も

9月25日、さいたまスーパーアリーナで行なわれる「超RIZIN」で、ボクシング元世界5階級王者のフロイド・メイウェザーと、総合格闘家の朝倉未来(あさくら・みくる)が拳を交える。

形式はボクシングルールの3分×3ラウンド。エキシビションマッチのため判定による勝敗はつかないが、どちらかが相手を倒して試合がストップする可能性もある。

朝倉は相手の土俵で、45歳とはいえ50戦無敗の〝怪物〟とどう戦えばいいのか。今回の一戦が決まった後、YouTubeのコラボ企画で朝倉とミット打ちなどを行なった元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏に、とるべき戦い方や試合の展望などを聞いた。

■ボクシングをせず、初回から飛び込むべし

――朝倉選手のボクシングテクニックについての印象はいかがですか?

内山高志(以下、内山 総合の選手なのでリズムは独特で、パンチの出し方やフットワークもボクサーとは違います。目や距離感は抜群にいいですね。相手が入ってきた瞬間にバックステップでさばいたり、反応もいい。

ハンドスピードやパンチの威力もありますが、ボクシングルールでメイウェザーが相手となると、やはり当てるのは難しいです。今回の試合、朝倉選手は「ボクシングをしない」ことがポイントになると思います。

――普段の総合格闘技の試合でやっているような打撃で闘ったほうがいい?

内山 そうですね。ジャブをついて攻撃を組み立てて......と素直にいってしまうと、リズムも読まれやすくなってしまう。とにかく、ボクシングのセオリーにはない闘い方をすることが大事だと思います。

例えば、いきなり左を思い切り振ってみるとか。朝倉選手はサウスポーで、パンチの軌道がボクサーとは違うので、やりづらいと思いますよ。

同じ総合格闘家でサウスポーのコナー・マクレガーとの試合(2017年8月)は参考になるでしょう。彼は1ラウンドから前に出て、変則的なパンチもけっこう当てていましたから。

2018年の大みそかに那須川天心(奥)とボクシングルールで対決したメイウェザー(手前)は、3度のダウンを奪って1ラウンドTKO勝利を飾った 2018年の大みそかに那須川天心(奥)とボクシングルールで対決したメイウェザー(手前)は、3度のダウンを奪って1ラウンドTKO勝利を飾った

――1ラウンドの立ち上がりは重要になりそうですね。

内山 メイウェザーは、試合開始直後はそこまで集中していないはず。那須川天心選手との試合(2018年12月31日)でも、序盤は遊んでいましたよね。そういう瞬間に飛び込んでフックやストレートを狙ったら、「もしかしたら」があるかもしれません。

これまで、ボクサーがメイウェザーと闘うときは慎重になる選手が多かった。でも今回は、ボクシングルールで戦う総合格闘家の朝倉選手は負けても当たり前な立場なので、「あっという間に倒されてもいい」という気持ちで挑んでほしいです。

――YouTubeチャンネルでコラボした際も、朝倉選手は「玉砕覚悟でいく」と話していました。

内山 「ダメージなく」とか、「うまく闘おう」と考えすぎちゃうとダメですね。中間距離で打ち合ったり見合ったりすると厳しくなる。本能で闘ったほうがいいので、コラボした際もパンチの打ち方や力の伝え方などは教えましたが、ボクシング技術は伝授しませんでした。

試合まで時間がないなかで〝ボクサー仕様〟にすると、いい部分が消えてしまうと思ったので。

■鉄壁の守備を崩すにはとにかく怒らせろ!

――メイウェザー選手の卓越した守備、特有のL字ガード「ショルダーロール」についてはいかがですか?

内山 下ろした左腕でボディを、前に出した左肩でアゴを守りながら、重心は後ろに残してカウンターを狙ってきます。総合で使うオープンフィンガーグローブだと隙間を狙えるんですが、大きいボクシンググローブだと難しい。メイウェザーは上半身の使い方もうまいので、顔がすごく遠くに感じると思います。

――ディフェンス重視の作戦できた場合は、よりパンチが当たらなそうですね。

内山 確かに厳しくなりますが、攻撃があっての守備なので、打ってこないようであればガンガンいっていい。サンドバッグだと思って打つくらいの感覚が大事。カウンターが気になるかもしれませんが、変にフェイントを入れたりせず、勢いで前に出たほうが活路は開けるはずです。

――逆にメイウェザー選手から倒しにくる可能性は?

内山 まともに急所などにもらってしまうと、打撃でのダウン経験がほぼないという朝倉選手でも相当効くでしょう。ただ、メイウェザーは今回、なるべくリスクを負わない闘い方をすると思うんですよね。

YouTuberではありますが、体重差が15kg以上あったローガン・ポール(2021年6月7日)との8ラウンドのエキシビションマッチでも、パンチをもらわずに試合を支配する感じでしたから。まして今回は3ラウンドですから、足を使ってかわしながら、ということも十分に考えられます。

冷静にスパーリングみたいな感じで闘われるとキツいので、いかにメイウェザーに火をつけられるのかがポイントですね。倒されるリスクは上がりますが、メイウェザーがパンチをもらって「このやろう!」と怒って熱くなり、前に出てきたらチャンスです。

――今回の試合で内山さんが楽しみにしていることは?

内山 朝倉選手がメイウェザーにパンチをクリーンヒットさせられるか、ダメージを与えることができるか、という点に尽きますね。ボクシングの実力だけなら大きな差がある。でも、ボクサーじゃない朝倉選手だからこそ、試合を面白くできる可能性があるとも思っています。