サミュエル・ウンティティについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第270回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、サミュエル・ウンティティについて。ここ数シーズンは所属していたバルセロナで長らくベンチを温めていたウンティティだが、新天地のレッチェでの復活に宮澤ミシェルは期待しているという。

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南野拓実が9月18日に行われた伊東純也のいるランス戦で、モナコ移籍後初ゴールとアシストを決めてくれた。この活躍にちょっと安堵したよな。

ワールドカップを見据えたときに、南野にとっては試合に出ながらコンディションを高めていくことが大事だからね。本人もそれを理解しているから、出番のなかなか来ないリヴァプールから出たんだと思うけど、モナコで結果がなかなか残せなくてスタメンの座から外されちゃってさ。

ここが土俵際だったかもしれないね。ベンチから途中出場して結果を残せたことで、「やっぱり南野はやるな!」と思わせることができた。監督だってまたチャンスを与えたくなったはずだよ。次のチャンスで活躍できれば、安定して試合に出られるようになっていくと思うよ。

やっぱりサッカー選手は試合に出るチャンスのある環境にいることが大事だよ。

南野を見ているとそう思うし、バルセロナから8月末にセリエAのレッチェに移籍した、サミュエル・ウンティティを見てもそう思っちゃうね。

ここ数シーズンは、バルセロナの不良債権みたいな言われ方をしてきたウンティティだけど、元からそういう選手だったわけじゃないからね。リヨンから2016-17シーズンに加わると、ジェラール・ピケとCBコンビを組んでバリバリやっていてさ。バルサのCBはこの先何年かは安泰だなって感じた人は、少なくなかったはずだよ。

2018年にはロシア・ワールドカップではフランス代表として戦って、その直後のシーズンで右ヒザを痛めてからだよな、評価がガタ落ちになったのは。高い年俸や残っている長い契約期間がネックになって、新たな移籍先は見つからなくてさ。いつ訪れるかわからない出番のために、ベンチを温めてきたわけだよ。

ただ、高い年俸も長い契約期間も、ウンティティにしたらプレーで存在感を高めて、正当に手にしたものだからね。ケガが起きたら価値が暴落する、というリスクを軽く考えていたのはクラブ側だった気がするけれど、それでもそのツケを選手側にも払わせてさ。やっぱり違和感はあるよな。

ウンティティにしたら、大減俸を受け入れてでもバルサでプレーを続けたい気持ちがあったんだろうな。「出場できるのは1シーズンで10試合程度でもいい」って考えだったのかなと思う。でも、それさえもシャビ監督の構想外になって難しくなったね。

それでレッチェへの移籍を承諾した。レッチェにしたら、ウンティティの年俸はバルサが全額払ってくれるというし、受け入れにデメリットはないよな。ここ数年のウンティティは1シーズン通して戦うことには懐疑的だけど、任せた試合は経験値があるから計算できるからね。

ウンティティにしたら、ここが瀬戸際だよな。サッカーを辞めても食べるのに困らないくらいの蓄えをバルサ時代に築いただろうけど、もしウンティティがまだサッカー選手であり続けたいと思っているなら、出番が訪れたときにしっかり働けるアピールをしなくちゃいけないよな。まあ、復活できると己を信じているから、ウンティティだって移籍を受け入れたんだろうけど。

ウンティティはレッチェに移籍してからはまだベンチに座っているだけで、出番はめぐってきていないけれど、バルサの一時代を担ったCBがセリエAから復活の狼煙をあげられるかを見守っていきたいね。バルサに残るよりは、試合出場のチャンスはあるから、その日が来るのを楽しみにしているんだ。

そのウンティティと南野は、生まれた年は1年違うんだけど、日本的に言えば同級生なんだよ。そうは見えないんだけどさ(笑)。

南野はウンティティに比べたらチャンスだらけだよな。日本代表活動のためにクラブを一時的に離れるけれど、戻った時には高いパフォーマンスを発揮してもらいたいね。そこで本領を発揮して、絶好調な状態でワールドカップに突入してくれると期待しているよ。

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