絶対エースとして駒大を牽引してきた4年の田澤。今季はケガの影響もあって調子を落としているが、夏合宿を経て力を取り戻せたか 絶対エースとして駒大を牽引してきた4年の田澤。今季はケガの影響もあって調子を落としているが、夏合宿を経て力を取り戻せたか

秋の気配が漂い〝勝負の時〟が近づいてくると、学生ランナーたちの緊張感は高まっていく。

今季の出雲駅伝(10月10日)、全日本大学駅伝(11月6日)、そして来年正月の箱根駅伝は、昨季の上位校の出走メンバーが多く残っていることもあって、ハイレベルな大混戦が予想されている。その中で、勝負のカギを握るのが学生駅伝界のエースたちだ。

まずは〝学生長距離界のエース〟とも呼ばれる駒澤大学・田澤 廉(4年)。昨季は全日本7区で4位から一気にトップを奪う快走。チームの連覇を引き寄せると、12月上旬の1万mで日本人学生最高&日本歴代2位となる27分23秒44をマークした。

箱根ではチームは3位に終わったものの、2区で区間歴代4位のタイムで区間賞を獲得している。

ただ、今季は苦戦を強いられている。4月9日の金栗記念選抜陸上中長距離5000mを13分22秒60(日本人学生歴代6位)と好走するも、徐々に疲労が蓄積。5月7日の日本選手権1万mはレース中に腰を痛めたこともあって10位に沈んだ。

それでも日本人選手で唯一、1万mの参加標準記録(27分28秒00)を突破していたため、7月のオレゴン世界選手権の日本代表に選ばれたが、世界デビュー戦は左膝の違和感とレース中の腹痛に苦しんで20位。「自分の力を出せず、悔しかった」と振り返っている。

そんな中でも田澤は、今年8月中旬の夏合宿で「チームが目標にしている駅伝3冠に向かっていきたい。出雲と全日本は走るべきメンバーがしっかり走れば負けないと思っています。ただ、箱根になると青山学院大学が強いので、勝てるようチーム力を高めたいです」と力強く語った。

過去の各駅伝での成績は輝かしい。出雲は1年時に3区で区間2位(区間新)、全日本は1年時と3年時に7区で、2年時は8区で区間賞を獲得。箱根は1年時に3区(区間3位)を走った後、2年連続で〝花の2区〟を託された。最後の学生駅伝に向けては、「区間賞はもちろん、区間新記録も狙っていきたい」と意気込む。

田澤には、来夏に開催されるブダペスト世界選手権1万mの「参加標準記録突破」というターゲットも。同記録は、日本記録(27分18秒75)を上回る27分10秒00まで引き上げられた。田澤が記録を狙うなら11月下旬のレースになりそうだが、「チャレンジしたいと思っています」と、日本記録更新での突破を目指す。

その厳しいレースの後に、箱根2区の区間記録(1時間5分49秒)を更新することは簡単ではないだろう。しかし駒大の絶対エースは、恩師・大八木弘明監督の悲願である「学生駅伝3冠」を成し遂げるためにも力を振り絞る。

東京五輪の3000m障害で7位入賞を果たした順大3年の三浦。スピードは圧倒的だが、今年は距離が長い箱根でも快走を見せたい 東京五輪の3000m障害で7位入賞を果たした順大3年の三浦。スピードは圧倒的だが、今年は距離が長い箱根でも快走を見せたい

そんな田澤よりも早く世界に飛び出し、結果を残したのが順天堂大学・三浦龍司(3年)だ。昨夏の東京五輪には、日本の学生長距離選手として唯一出場。3000m障害の準決勝で、日本記録を更新して決勝進出を決めると、日本人初の入賞(7位)という快挙を達成した。

勢いそのままに、今季のトラックシーズンでも圧巻のスピードを見せつけている。4月の金栗記念選抜中長距離1500mは日本歴代2位のタイムで優勝。5月の関東インカレの1部5000mは驚異的なキック力で完勝した。

7月のオレゴンでの世界選手権3000m障害は終盤のペースアップに対応できず、決勝進出に0.74秒届かなかったが、世界最高峰のリーグ戦であるダイヤモンドリーグ(以下DL)で躍動した。

8月下旬のDLローザンヌ大会の3000m障害で4位に食い込み、獲得ポイント上位者のみが出場できるDLファイナル(スイス・チューリヒ)への切符をつかんだ。

参戦するだけでも中長距離種目で日本人初の快挙なのだが、三浦は残り1周時点で6位だったところから、4位に順位を上げてフィニッシュ。世界トップクラスの猛者たちと競り合い、今季ベストの8分12秒65をマークしたのだ。

ブダペスト世界選手権の参加標準記録(8分15秒00)も突破したため、今後は学生駅伝に注力することになるだろう。

出雲は昨年欠場したこともあり、今回が初参戦。1区(8.0km)、もしくは3区(8.5km)での起用が濃厚だが、地元・島根でどんな走りを見せるのか。全日本は1年時に1区で、2年時は2区で共に区間賞。11km前後の前半区間で持ち味のスピードが爆発するだろう。

一方、ひと区間の距離が長い箱根は1年時に1区10位、2年時は2区11位と苦戦している。前回、チームは2位に入ったが、16年ぶりの総合優勝を達成するには三浦の走りがポイントになる。

もうひとり、箱根王者・青学大のエース近藤幸太郎(4年)にも注目したい。昨季は4月に1万mで青学大記録の28分10秒50をマークすると、駅伝で大活躍した。

出雲1区で区間賞を獲得し、全日本7区は田澤と18秒差の区間2位。箱根2区は田澤との差を56秒で食い止め、チームの総合優勝に大きく貢献した。

しかし、箱根駅伝の後に左足のかかとを疲労骨折し、今年5月には左アキレス腱を負傷。今季のトラックシーズンは大きく出遅れていたが、7月に練習に復帰すると夏合宿で徐々に調子を上げる。

そして「スピードがまだ戻っていなかった」という感覚がありながら、9月中旬の日本インカレ5000mで覚醒した。

留学生ランナーの背後でレースを進めると、「余裕があったので、2000m過ぎには『勝ったな』と思いました」と、堂々の連覇を果たしたのだ。自信を取り戻した青学大のエースは、学生駅伝に向けて「すべて勝つつもりでいます。特に箱根は新記録で優勝したい」と力強かった。

駒大、順大、青学大は「駅伝3冠」を狙えるチーム。学生3大駅伝で、ドラマをつくるのはどのエースか。