ついにこの日がやってきました。まさか若き燕が世界の王さんの記録を抜くとは......。最終打席で決めたのも劇的でしたね。
みなさんこんにちは、知り合いが「おめでとう」と声をかけてくれるのが嬉しくて、毎日ビールが止まらない山本萩子です。
劇的といえば、パ・リーグのペナントの行方も本当にドラマチックでした。ということで、本日は「接戦」についてお話させてください。
接戦といえば、試合におけるギリギリの攻防もありますが、ペナントレースで順位を巡って激しく競り合う様子もまた、プロ野球の醍醐味。今年のオリックスとソフトバンクは、歴史に残る接戦を見せてくれました。
首位を走るソフトバンクを僅差で追うオリックスは、厳しい状況でした。というのも、ソフトバンクは10月1日の西武との試合を引き分け以上で優勝という有利な条件。試合のないオリックス戦士が見守る中、ソフトバンク藤井皓哉投手が西武・山川穂高選手にサヨナラHRを許し惜敗。
ソフトバンクが優勝マジック「1」で迎えた翌日のロッテ戦は、泉圭輔投手が逆転3ランを打たれ、3?5のまま試合終了。虎視眈々と逆転を狙っていたオリックスは楽天に勝利。76勝65敗2分けで両球団が勝率で並んだものの、直接対決で勝ち越しているオリックスが2連覇を決めました。
その瞬間、ソフトバンクの選手はがっくりと肩を落とし、オリックスの選手は喜びを爆発させていました。
海の向こう、MLBでは優勝を争うメッツとブレーブスの直接対決がシーズン最終盤にありました。ゲーム差1で迎えた天王山は、追う立場にあったブレーブスが3連勝で逆転。6月にはメッツから最大10.5ゲーム離されていたブレーブスが、昨季王者の貫禄を見せつける大逆転優勝を決めました。
やはり、基本的には失うものがない「追う方」が、勢いがあるのかもしれません。上位にいるチームは怖いでしょうね。
オリックスは虎視眈々と狙っていたわけで、マジックが一度もつくことなく最後の最後に劇的な逆転優勝。さぞかし気持ちよかったことでしょう。
首位を走り続けていても、下から追い上げられるのは想像以上のプレッシャーなのだと思いました。緊張の糸が張り詰めた状態ですから、監督も選手も胃が痛くなりそう。
接戦を落とした試合後に、敗戦の大きなきっかけとなったソフトバンクの投手が、人目を憚らず涙を流しているのが印象に残りました。
もちろんその投手だけが悪いわけではないけど、責任を一身に背負って大粒の涙を流している。一瞬で試合が決する野球というのは、時に残酷です。でも、これも野球なのだと思います。
この先何度もフラッシュバックしてしまうほど悔やまれるマウンドというのは、誰しもあるのかもしれません。それでも、その瞬間をいい経験だったと言える、そんな日が来てほしい。
決して負けられない大切な一戦で、ファンたちの思いやチームを一身に背負ってマウンドに立つ、そんな想像を絶する重圧の中で戦った選手たちの悔し涙を見るたびに、人生を賭けて野球をやっている選手たちに寄り添える存在でありたいと思います。選手のみなさんにはリスペクトしかありません。
接戦は人を強くします。緊張感の中で揉まれることで集中力は高まるでしょうし、精神的にも強くなる。その経験が、いつかものをいうはず。悔し涙を流した選手は、間違いなく強くなるはずです。
ソフトバンクが福岡に戻ったときは拍手で迎えてあげてほしいですね。クライマックスのソフトバンクは、もっと強くなって帰ってくるはずです。強いチームが好きなのではなく、好きなチームが強いのが一番嬉しいはずだから。
それではまた来週!
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン