日本代表の1トップをフカボリ! 日本代表の1トップをフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第42回目のテーマは、日本代表の1トップについて。カタールワールドカップに向けていまだに日本代表に残る大きな課題「1トップ」。果たして誰が務めるのがベストなのか? 福西崇史が考える。

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日本代表は9月にアメリカ戦とエクアドル戦の国際親善試合をしました。カタールワールドカップ出場国を相手に結果は1勝1分。悪くはないですが、内容を振り返れば大きな課題は残ったままになりました。

それは1トップを誰にするか。

アメリカ戦は前田大然(セルティック)がスタメン出場し、町野修斗(湘南)が後半から途中出場。エクアドル戦は古橋亨梧(セルティック)が先発し、後半から上田綺世(セルクル・ブルージュ)に交代しました。

前田は足の速さを生かして守備時では最前線から相手にプレッシャーをかけ、チームを助けましたね。ただ、そこは想定内。プラス攻撃のところでもう少し精度が高まると、押しも押されぬ1トップになるのかなと思います。

ただ、前田はスタメン起用もいいですが、途中出場で流れを変える仕事や、逃げ切りを図りたいときに使いたい選手でもあります。そこをどう判断するのか。出来がよかっただけに、悩ましい問題も生まれましたね。

町野はJリーグでは頑張っているので、どれくらいやってくれるか注目していましたが、海外組が主体のレベルの中に入ると、まだ足りない部分があるなと感じました。判断、スピード、プレーイメージ。そういったところで味方の選手たちに追いついていませんでした。

いきなり海外組主体のチームに入って、そこを望むのは酷なようですが、それでもやらなければ現在の日本代表には入れないわけですからね。これは町野個人の問題であると同時に、Jリーグ全体が、ここからもっと高めていくべき課題だなとも感じました。

古橋は純粋なパサーと一緒に使ってほしかったですね。エクアドル戦のトップ下は南野拓実(モナコ)でしたが、彼はゲームメイカーではなくフィニッシャー。1トップを追い越してゴール前に迫るプレーが持ち味の選手です。その選手と、スペースへ逃げていくプレースタイルの古橋の組み合わせがハマらないのは当然のこと。それで評価を下すのは、かわいそうな気がしています。

上田は存在感を示せたのかなと感じました。彼がピッチに送り込まれたことで、ハイボールで相手を後ろに押し下げることができた。上田のところで収まればチャンスが作れますし、収まらなくても相手を警戒させることができました。それによって、エクアドル代表が攻撃一辺倒というわけにはいかなくなりましたからね。

前田にしろ古橋にしろ、もしくは故障からの回復次第ですが浅野拓磨(ボーフム)にしろ、スピードはあるけれど、高さがない。相手からすれば、スピードでDFラインの裏を取られることは怖いけれど、それだけなら対策の取りようはあるわけです。

でも、上田は高さがあって、DFラインの裏のスペースを狙うこともできる。エクアドル戦では彼の持っている能力を、すべて発揮できたわけではありませんでしたが、それでも日本代表で戦力になれるアピールはしたと感じました。

ボクは上田には大きく期待しているんですね。外国人選手に負けないパワーがあって、足下のテクニックもしっかりしていて、スペースに走り込めて、それでいて身長も182㎝ある。

世界基準で見たら182㎝は特別大きいわけではないですが、上田は空中戦の前段階のポジショニングのよさもあって、しっかりと競り合える。これほどバランスの取れた日本選手を探すとなると、そうそういないわけです。それだけに上田のブレイクスルーを心待ちにしてしまうわけです。

今年7月、Jリーグのシーズン中にセルクル・ブルージュに移籍したときは、1トップとしての世界基準の強さを身につけるチャンスだと期待を膨らませたのですが、現状は所属チームではそのチャンスは手にできていないんですよね。クラブでの起用法は2シャドーの一角だったり、中盤のサイドだったりしています。

大迫勇也(神戸)もブンデスリーガでプレーした頃はそうでした。体のサイズなどの違いもあって、日本で1トップを張るような選手でも、海外では2列目やサイドで使われてしまうんですね。それに対応できる器用さも持っているので、チームの監督にしたら便利に使ってしまう面もあるのだと思います。

それだけに、上田がチームでも1トップでもっと出場できていたら、日本代表でももっと違う面も出せたのかもしれないと、歯がゆく思ってしまうんですよね。

エクアドル戦の後半25分に、左サイドからのクロスにニアサイドで合わせたヘディングシュートは、上田だからこそ打てたシュートでもあるわけです。枠を捉えることはできませんでしたが、マイナス気味のクロスに合わせられる体の強さは、上田ならではのものですからね。

ただ、これまで日本代表に招集されても、本来の力を発揮することがなかった上田が、エクアドル戦ではその片鱗を見せてくれたことで、日本代表の1トップ問題に小さな光明は射した気はします。

あとは、森保一監督がどういう決断をするのか。ボクは1トップをいろいろ試したことで、結果的にやっぱり大迫だという結論に達するのであれば、それはそれで「あり」だと思っています。9月の国際親善試合2連戦で4人のFWを使いましたが、それでも大迫のほうが優ると考えるのも、監督としての判断なわけですから。

大迫は日本代表でどんなプレーができるのかは、これまでの戦いで十二分に把握できている。あとはコンディションの問題ですが、10月になってからのJ1リーグ2試合は先発出場して、1試合はフル出場。もう1試合も後半24分に交代しましたが、ゲーム展開が4-0で一方的になったからでしょうね。少しずつコンディションも戻っているなという印象です。

カタールワールドカップのメンバーが発表されるのは11月1日。すでに森保監督のなかでは、メンバーは固まっているのだと思います。でも、ボーダーライン上にいる選手たちは最後の最後までメンバー入りに向けて、ピッチで必死にアピールをしてもらいたいですね。

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