みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
ポストシーズンもまさに佳境を迎え、日本シリーズが近づいてきました。選手をはじめ、監督にとっての総決算の時期といえます。野球においては、シーズンを勝ち抜くための勝利の方程式を持つ監督の存在は欠かせません。
今回は「名将」についてお話しさせてください。
「名将」の条件はいくつもありますが、大前提として数多くの勝利を手にしていること。監督の仕事は、試合で勝利することです。誤解を承知で言わせていただけるなら、プロスポーツにおいては勝利がすべて。それが監督の評価につながります。同時に育成や人気獲得なども求められるのですが、それは勝利を手にした上でのものだと思います。
球団を一般的な会社に置き換えたら、監督はいわば現場のトップですね。
部下に結果を求め、実際に結果を残せば会社(球団)からの評価は高くなるし、プレーヤーも同じように高い評価を受けることができます。
逆に結果を残せていないとしたら、いくら部下からの受けがよくてもその上司はクビになってしまうでしょうし、プレーヤーの年俸も上がらない。
どちらがいいリーダーかは難しいところです。ただ、どれだけ人望があっても、勝ちという結果を残せない監督は名将とは呼ばれません。
名将にはいろいろなタイプがいますが、スピーチで選手の士気を高める「モチベーター」が多いようです。
ヤクルトを率いる高津監督は間違いなく名将ですが、まさに言葉で鼓舞するタイプ。昨年のペナントレース終盤、苦しむ選手たちに送った言葉は印象的でした。
「チーム一丸となれば絶対大丈夫。どんなことがあっても僕らは絶対に崩れない」
「絶対大丈夫」というフレーズは、ファンの合言葉にもなりました。
今シーズン最終戦、坂口智隆選手・内川聖一選手・嶋基宏選手の引退セレモニーで3人にかけた言葉もとても心に残りましたよね。試合では坂口選手と内川選手を一度守備位置につかせてから交代を告げることで、スタンドは敵味方関係なく大きな拍手に包まれました。そういう粋な演出も、ファンと選手からの信頼につながっているのかもしれません。
高津監督は結果も出しながら育成の姿勢も見せています。長い目でチームをみていることがわかります。
実は、今年のペナントレースで結果を出したチームは「2軍監督を経験している監督」が多いというデータがあります。プロ野球の1軍と2軍の緊密さはとても大事で、選手を育成する2軍の事情がわかっているというのはとても大きいことなのだろうと思いました。
私の考える名将の条件をもう一つ。それは愛されるキャラクターであること。
どんと構えていても、人間らしさが見えるほうがいいですね。故・野村監督みたいに小言が多くてもユーモアがあって、時に感情をむき出しにしたり、人間臭さを感じさせる。そしてなにより勝利の近くにいる。
最後に、未来の名将について。
私が注目するのは、今季限りで引退した嶋選手。セレモニーには田中将大選手をはじめ多くのスター選手がかけつけ、SNSに嶋さんとの2ショットを載せていました。みんなに愛された嶋選手は最後のセレモニーでマイクの前に立つと、楽天時代の東日本大震災のあとに残した名スピーチを踏まえた、この言葉で締めくくりました。
「見せましょう、ヤクルトスワローズの底力を!」
来季の去就はまだわかりませんが、嶋選手がいつか名将と呼ばれるその日まで。いつまでも野球観戦の楽しみは尽きませんね。それではまた。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン