ポルトガルの名門スポルティングで定位置をつかむ守田。本人も手応えを感じている様子 ポルトガルの名門スポルティングで定位置をつかむ守田。本人も手応えを感じている様子

サッカーの本場、欧州でプレーする日本人選手は増加の一途をたどっている。だが、欧州ナンバーワンクラブを決める欧州チャンピオンズリーグ(以下、CL)では、この数年、目立った活躍を見せた選手はいない。

昨季はリバプールに所属していた南野拓実(現モナコ)がグループリーグの4試合に出場したものの、チームが準優勝した中、決勝トーナメント以降の大事な試合では出場機会がなかった。

ところが、今季はこれまでと少し様相が違う。9月にスタートしたグループリーグでスポルティング(ポルトガル)の守田英正、フランクフルト(ドイツ)の鎌田大地と長谷部 誠、セルティック(スコットランド)の古橋亨梧、旗手怜央、前田大然と6人もの日本人選手が参戦し、それぞれが所属クラブで確かな役割を担い、ピッチで奮闘しているのだ(残念ながら、セルティック所属の井手口陽介はプレシーズンのケガの影響でCLは登録メンバー外になっている)。

11月20日のカタールW杯開幕が迫る今、彼らを現地で直撃した。

まず、9月下旬の代表ウイークに行なわれた日本代表のアメリカ戦(○2-0)で、遠藤 航とのダブルボランチであらためて存在感を示した守田。今夏にポルトガルの地方クラブであるサンタ・クララから強豪スポルティングに移籍し、CLでもプレーしたことで「自信を持って代表に合流できた」と話す。

「以前は所属クラブがどこであろうと関係ないと思っていました。ただ、移籍したことで環境は大きく変わりましたし、CLでプレーすることで僕自身の経験値はすごく上がった気がします。

ピッチで生のCLアンセムを聴いたときは感動しましたし、欧州の他国の力のあるクラブとの対戦はやっぱり刺激になります。自分自身が高いレベルの中に身を置くことで、代表でも以前より堂々とプレーできるようになったのかなとは思います」

その守田は、日本人対決となった1節のフランクフルト戦で先制アシストを含む2点に絡む活躍で3-0の勝利に貢献するなど、3節を終えてグループDの首位を行くチームの中盤の要となっている。

一方、昨季のヨーロッパリーグ(以下、EL)王者としてCLに参戦しているフランクフルトでは、1-0で勝利した2節のマルセイユ(フランス)戦でマン・オブ・ザ・マッチに選出されるなど鎌田が左MF、またはボランチとして好調を維持。

さらに、38歳となった元日本代表主将の長谷部がチームに欠かせない存在になっている。今季、自身13年ぶりにCLのピッチに立っている長谷部は、3節の強豪トッテナム(イングランド)戦でリベロとして2試合連続のフル出場を果たした。

試合はホームでスコアレスドローに終わったものの、マッチアップしたイングランド代表のエースFW、ケインに自由に仕事をさせないなど、いぶし銀のプレーが光った。試合後、取材エリアに姿を見せた長谷部はこう振り返った。

「トッテナムはクオリティが高く、国内リーグ(ブンデスリーガ)でいえば、バイエルン・ミュンヘンのほかに1、2チームあるかないかの圧力を感じました。ケインはどれだけ背中を押してもビクともしないし(笑)。

加えて、その周りからブラジル代表のリシャルリソンや韓国代表のソン・フンミンが出てくるわけですからね」

押され気味の展開に、ホームでの勝ち点1もやむなしとした長谷部。だが、自身は「ビビらず、いつもどおりにプレーできていた」とも語った。

「久しぶりのCLですが、昨季もELでいろいろなチームと試合をしましたし、自分的には相手がどこであろうと引け目を感じることはない。思っていたよりも普通にやっています」

混戦のグループDを戦うチームにあって、長谷部の存在感は試合ごとに増していて、地元メディアからも「カイザー(皇帝)」と高評価を受けている。

4年前のロシアW杯出場を最後に日本代表からは引退している大ベテランだが、これだけのプレーを見せられると、11月1日発表予定のカタールW杯登録メンバーにサプライズ招集があってもいいのではと期待してしまう。

日本代表では苦戦している古橋(セルティック)だが、地元メディアからの評価は変わらず高い 日本代表では苦戦している古橋(セルティック)だが、地元メディアからの評価は変わらず高い

セルティックでは3節のアウェーのライプツィヒ(ドイツ)戦で、古橋、旗手、前田の3人がそろって先発。旗手の中盤でのインターセプトから古橋のアシストで一時、チームは同点に追いついたものの、最後は決定力の差が響き、1-3と敗れた。古橋は悔しさを滲(にじ)ませながら、苦しい胸の内をこう明かした。

「やっぱり決めるところで決めないと......。お互いにチャンスがありながら、相手は3点、ウチは1点しか取れなかった。紙一重ですが、その差が大きい」

前田のクロスや旗手のパスから古橋がゴールに迫った場面もあったが、相手の好守に阻まれ、CL初ゴールとはならなかった。

「運もあると思いますが、『惜しい』じゃダメ。ただ、まだ試合は残っているし、下を向かずにやりたい。ピッチでアンセムを聴いた気持ち? それは言いませんが、このプレッシャーを楽しみながらやっています(笑)」

グループFでは開幕3連勝のレアル・マドリード(スペイン)が頭ひとつ抜けている。惜しくもセルティックは続く4節でもライプツィヒに敗れてしまい、上位2位以内での決勝トーナメント進出の望みは絶たれてしまったが、グループ3位でELに回る可能性は残されている。

カタールW杯を控え、CLは11月1週目までにグループリーグの全日程を終える超過密日程で進んでいる。今後の日本人選手の活躍ぶりは、それぞれの日本代表での序列、さらにはW杯登録メンバー選考にも影響を与えかねないだけに目が離せない。