熱い戦いが繰り広げられている日本シリーズ。セ・パのペナントレースを制した王者同士にふさわしい、手に汗握る試合の連続に胸が熱くなる毎日。ああ、野球って本当に素晴らしいものですね。
みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。今回のテーマは「控え捕手」。日本シリーズ第2戦、9回裏の内山壮真選手の同点3ランの感動と興奮の勢いで決まったテーマでお届けします。
控え捕手、われながらいいテーマですよね。捕手は唯一無二のスキルを求められるポジションで、他より選手の交代が少ないことはご存じの通り。それゆえ、なかなか出場機会に恵まれない控え捕手がどのチームにも必ずいます。
ベンチ入りできる選手には上限がありますが、ベンチには数名の捕手が控えています。彼らは万が一の負傷や戦術的な交代、あるいは代打に備えながら出場機会を虎視眈々と狙っています。控え捕手のライバルは、レギュラー捕手です。
捕手登録されていない選手が捕手として試合に出ることもまれにありますが、まさに緊急事態でニュースになるくらいの事件。ということで、ベンチには2、3人の捕手が入っているのが一般的です。
控え捕手は戦術的な役割を求められることも。たとえば、投手と捕手をワンセットで起用することも最近ではよく見ますよね。投手の特徴を知りぬいた捕手によるリードは、相手への脅威となるでしょう。
今年のヤクルトのレギュラーシーズンでは、石川雅規投手が先発のときは捕手に内山選手が起用されることが多かったようです。ただ、このケースは若手捕手である内山選手が、石川投手というベテランピッチャーをリードすることで育ててもらっている、という面もあるのかもしれません。
試合途中の捕手起用はもちろん、時に代打の切り札になったり、捕手以外で守備固めに入ったりと、ユーティリティさも求められるのが控え捕手。ベンチにいるだけで何人ぶんもの仕事を求められる大変な仕事なんです。
また、試合の流れをつぶさに観察することも求められます。交代で出場したときに試合の流れを壊すわけにはいかないからです。捕手のリードひとつで試合の流れが変わるのが野球。ゲームの流れを壊してしまえば、批判を浴びることは必至です。
ということで、控え捕手には集中を切らさない精神力と観察力が求められます。控え捕手は将来的に偉大な指導者になるのではないかと思っていたら、まさにその代表格と言える方がいました。
オリックスの中嶋聡監督です。
今回のテーマが決まった後、NHKの番組終わりに小早川毅彦さんとお話していたときに、小早川さんが真っ先にお名前を挙げたのも中嶋監督でした。
中嶋監督は現役時代、阪急ブレーブス(のちにオリックス・ブレーブス、さらにオリックス・ブルーウェーブ)では正捕手として日本一を経験しましたが、FAで西武に移籍してからは不動の正捕手・伊藤勤選手の壁を越えることはできませんでした。
ベテランにさしかかる頃にベンチで試合を見守った日々が、指導者としての礎になっていることは想像に難くありません。
オリックスは大幅な戦力増強をしていないのに、監督が中嶋さんに替わった2年前から大躍進。2年連続の日本シリーズ出場を決めました。
采配はもちろん、大胆なコンバート、2軍監督時代に「中嶋塾」と言われたその指導力は、ベンチで培ったものなのかもしれません。
とにかくユニークなキャラの小田幸平さん(元中日・現中日2軍バッテリーコーチ)、笑顔が爽やかな井野卓さん(元巨人・ヤクルト)、ヤクルトのブルペン捕手として現在も活躍されている大塚淳さんなど、控え捕手にはキャラクターの濃い選手が多いですよね。試合を見るときは、スタメンではない控え捕手に注目するのも面白いかもしれません。
それではまた!
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン