森保監督の目指すサッカーはある程度見えてきたと語るセルジオ越後氏森保監督の目指すサッカーはある程度見えてきたと語るセルジオ越後氏

食材はそろった。あとはそれをどう調理するのか。シェフである森保監督の腕の見せどころだね。

カタールW杯に臨む日本代表のメンバー26人が発表された。サプライズとまではいえないけど、これまで森保監督が重用してきた大迫と原口の選外はやや意外。

大迫は今年2月を最後に代表に入っていなかったものの、故障から復帰して以降、直近のJリーグでは点を取っていた。また、原口も最終予選では2列目、ボランチと万能性を発揮して貢献したからね。

でも、前線からこのふたりを外したことも含めて、森保監督の目指すサッカーはある程度見えてきた。

森保監督は会見で「いろんなシミュレーションをした」末に、「戦える選手」を選んだと言っていたけど、目標に掲げるベスト8以上を達成するためにはグループリーグで対戦するドイツ、スペインなど格上を相手に勝ち上がらなければならない。そのためには守ってカウンターを狙うサッカーしかないと腹を決めたんじゃないかな。

だからGKを含めた守備陣にはW杯出場経験があるベテランを多くそろえた。その経験を生かし、組織的な守備でなんとか持ちこたえてくれということ。

一方、攻撃陣には若くて運動量とスピードがあって、守りもしっかりできる選手を優先して選んだ。高い位置からプレスをかけてショートカウンターを狙うのはもちろん、中盤から後ろでボールを奪ったときも基本はロングカウンターを狙う。

タイトな試合日程でそういうサッカーを目指すにあたって、故障の多い大迫と今季は所属クラブで出場機会の少ない原口、共に30歳を超え、コンディションに不安を抱えるふたりには負担が大きいと考えたのであれば納得の選考だ。

そして、僕は森保監督のその狙いは悪くないと思う。力関係を考えれば、ドイツ、スペイン相手に真っ向勝負はやっぱり無理がある。守ってカウンター狙いは当然。交代枠は5人あるし、前線の選手には「最初から飛ばせ。疲れたら代えてやるから」と言って送り出せばいい。

例えば、前田や浅野みたいにスピードがある選手が後先考えずに前線でプレスをかけ続けたら、相手は嫌がるよ。ハマれば面白い。

W杯出場経験のある選手がひとりもいない攻撃陣にあって、僕が期待しているのは右ウイングの伊東と左ウイングの三笘。彼らのスピードは強豪相手にも通用すると思うし、決定力もある。

そしてもうひとり、今回最年少(21歳)メンバーの久保。所属クラブでの好調さを代表でも見せられるか。これまで代表ではファンの期待に応えるプレーができない時間が長く、僕も厳しい意見を言うことが多かった。

でも、もっとできる選手だと思うし、彼は4年後、8年後も日本代表の中心にいなければいけない選手。今回のW杯での飛躍を期待したいね。

過去の大会と比べて、世間の関心はいまひとつ。海外組は増えたけど、誰もが顔と名前を知るような選手はむしろ少なくなった。でも、メンバーが決まり、これからメディアも盛り上げてくれるはず。

暗い話題が多い中、ドイツやスペインに勝てば日本ではもちろん、世界中でビッグニュースになる。ゴールを決めたらヒーローだ。今回選ばれた選手たちにはそのチャンスがあるわけで、ぜひその自覚を持って頑張ってほしい。

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