横浜Fマには名門チームらしく、ぜひ2冠、3冠を目指してほしいと語るセルジオ越後氏 横浜Fマには名門チームらしく、ぜひ2冠、3冠を目指してほしいと語るセルジオ越後氏

両チームともいいサッカーを見せて最後まで盛り上げた。力の差はほとんどなかったけど、シーズンを通して見ると、外国人選手の活躍度に違いがあった。それが明暗を分けた一番の理由だね。

昨季2位の横浜Fマと3連覇を狙う川崎、最終節までもつれたJリーグの優勝争いは猛追する川崎を突き放し、横浜Fマが制した。

横浜Fマは開幕前に主力が何人も抜けた。得点王の前田、中盤の要の扇原、左SBのティーラトン......これだけ主力が抜けたら、普通はその穴を埋めるのは簡単じゃない。

でも、FWに西村とアンデルソン・ロペス、中盤に藤田、左SBには永戸、さらに最終ラインにエドゥアルドなど、実に的確な補強を行なった。率直にフロントのスカウティングが素晴らしかった。

また、5人交代枠、ターンオーバーと、持ち駒を最大限に生かすマスカット監督の采配も見事だった。選手は誰でも、いつも先発で試合に出て最後までピッチに立っていたいもの。当たり前だよね。その意味で、たとえ選手層が厚くても、出場時間を分け合わせ続けるのは簡単なことじゃない。

もちろん、チームとして結果が出ているからこそうまくいった部分はあると思うけど、横浜Fマの選手は外国人も含めて交代時に不満そうなそぶりを見せることもない。

例えば、3年前の優勝の立役者である仲川とマルコス・ジュニオールも途中出場が多かったにもかかわらず、しっかりと役割を果たし、それなりの数字を残した。強いわけだよ。

今季の最優秀選手賞(MVP)には、その横浜Fマの岩田が選ばれた。川崎の家長も圧巻のプレーを見せたけど、やっぱりMVPは優勝チームから選びたい。納得の人選だ。

ただ、個人的なひいきも加味して選ぶなら、小学校時代からプレーを見ている水沼でもよかったかな。彼のクロスは横浜Fマの得点パターンになっていたし、豊富な運動量でチームに活気をもたらした。32歳にしてE-1東アジア選手権で日本代表に初招集された話題性も評価したい。

横浜Fマはこのオフに大きくメンバーが入れ替わることはなさそうだし、来季は名門チームらしく、ぜひ2冠、3冠を目指してほしい。

一方の川崎は、過密日程の不利に加えて、エースのレアンドロ・ダミアンの不調と故障に加え、守備の要のジェジエウが故障でシーズン前半を棒に振ったのが痛かった。

でも、それでも、最後はよく巻き返したよ。ジェジエウが戻って以降、最終ラインは以前の安定感を取り戻した。谷口、山根はさすが日本代表というプレーを見せた。

ただ、チーム全体で見れば、やっぱりもう世代交代が必要だね。特に以前のような破壊力がなくなった攻撃陣は、家長の負担が年々大きくなっている。

レアンドロ・ダミアンが来季残るにしても、どこまで計算できるかわからない。若手が育つのをただ待つだけではなく、即戦力の補強も考えるべきだ。例えば、湘南の町野にオファーを出したら面白いと思う。

最後にひとつ厳しいことを言わせてもらうと、今季は横浜Fマと川崎が頑張った一方で、鹿島、神戸、浦和、G大阪といった本来なら上位争いをすべきチームが不甲斐(ふがい)なかった。

4位の鹿島も横浜Fマとは勝ち点差が16もある。リーグ全体の盛り上がりという意味で、来季はこれらのクラブが意地を見せてくれないと困るよ。

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