W杯に出場しているアジア勢をフカボリ! W杯に出場しているアジア勢をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第45回目のテーマは、W杯に出場しているアジア勢。盛り上がりを見せているカタールワールドカップだが、以降の大会を見据えてアジア勢の活躍は必須だと福西崇史は語る。

 * * *

日本代表がグループリーグ初戦でドイツ代表に勝利しましたね。これは日本代表の今後のグループリーグの戦いを大きく左右するだけではなく、アジア勢として捉えたときにも大きな結果でした。

この前日に、サウジアラビア代表がアルゼンチン代表に逆転勝ちしてジャイアントキリングを成し遂げていただけに、2日連続でのアジア勢の起こした衝撃的な結果に全世界が驚いていましたよね。

アジア勢にとってこのカタールワールドカップは、4年前よりもレベルアップしていることを証明しなければいけない舞台なんですね。そのなかで、グループリーグ初戦から日本とサウジアラビアの2カ国が結果を残したことは、ほかのアジア4カ国にも勇気を与えると思います。

カタール大会でアジア勢が頑張る必要があるのは、2026年ワールドカップから出場国数が現行32カ国から48カ国に増えるなかで、アジア枠は4.5枠から8.5枠へと拡大されるからです。

前回ロシア大会でのアジア勢の成績は、日本代表はグループリーグを突破して決勝トーナメントに進出しましたが、ほか4カ国はグループリーグ敗退。サウジアラビアは1勝2敗、イランは1勝1分け1敗、オーストラリアは0勝1分け2敗。韓国代表は最終戦でドイツ代表に一矢報いたものの1勝2敗。ちなみに日本代表のグループリーグの成績は、1勝1分け1敗でした。

カタール大会でもアジア勢が前回大会と同じような成績に終わったら、次回大会の出場枠についての議論が再燃する可能性はあります。それに加えて、やっぱり日本代表がもっと強くなっていくためには、アジア地域全体のレベルが高まっていくことは不可欠ですから。日本代表を含めたアジア勢すべてに、頑張ってもらいたいんですよね。

カタール大会に出場しているアジア勢は、日本代表のほかは、アジア最終予選を同組で戦ったサウジアラビア代表、同最終予選の別組を勝ち上がったイラン代表と韓国代表、そして開催国のカタール代表と、大陸間プレーオフを制して出場しているオーストラリア代表の6カ国が出場しています。

開催国カタール代表は、ワールドカップ史上初めて、グループリーグ初戦で開催国が敗れるという結果になってしまいました。ただ、相手のエクアドル代表は、9月の親善試合で日本代表も苦しめられた相手ですからね。続くセネガル戦も敗れてしまい、グループリーグ敗退が決まってしまいましたが、ここはしっかりと切り替えて最終戦では開催国の意地を見せてもらいたいですね。

やっぱりワールドカップは、開催国が結果を出さないと盛り上がりに欠けてしまうものです。ぼくが初めて出場した2002年の日韓ワールドカップもそうでしたし、解説者となってから足を運んできたワールドカップでも同じでした。

スタジアムを埋める各国代表のサポーターが盛り上がるだけでは、ワールドカップの熱気としては不十分です。開催国の代表チームを後押しする空気感に包まれる、それによって大会が大きく盛り上がってきました。カタール代表を応援する人たちには点差にかかわらず、最後まで自国代表を精一杯応援してもらいたいなと思いますね。

イラン代表はグループリーグ初戦で、イングランド代表に6-2の大敗をしましたが、次のウェールズ戦は2-0で見事な勝利。オーストラリア代表も初戦となるフランス代表には先制点を奪いながらも、終わってみればフランス代表に4失点。サッカー大国に完膚なきまでに叩きのめされた結果でしたが、次の試合ではチュニジア相手に1-0で勝利し実力を示しました。

初戦に関しても強豪国が対戦相手ということもあり、結果だけを見れば完敗といえますが、両国とも爪痕は残せていたといえるでしょう。強豪国からゴールを奪っているのは、なによりの収穫でしょうね。グループリーグ最後の対戦相手は、決して甘い相手ではありませんが、フランス代表やイングランド代表ほどではないので、グループリーグ突破を目指して最後まで粘り強く戦ってもらいたいです。

日本代表のライバルである韓国代表も、グループリーグ突破に向かって突き進んでもらいたいと思っています。前回大会は日本代表だけが進出できた決勝トーナメントに、1チームでも多くのアジア勢に進出してもらいたいですからね。

もちろん、その一番手は日本代表でなくては困ります。ドイツ代表に勝利してグループリーグ突破への光が差し込んでいますが、まだ突破が決まったわけではありません。次のコスタリカ戦はとても大事な試合です。単にグループステージ突破に向けてというだけではなく、決勝トーナメントでの戦いを想定したときにも重要だからです。

前回ロシア大会で、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦で日本代表が躍動できたのは、グループリーグ3戦目はメンバーを替えながら選手の体力を回復させることができたからでした。

今大会も3戦目のスペイン戦はメンバーを入れ替えて、主軸選手たちを休ませて疲労回復をさせたり、調子の上がらない選手には調子を取り戻させたりするための試合にしたい。それができれば、選手たちのコンディションがいい状態で決勝トーナメントを戦うことができますからね。

そのためにもコスタリカ戦に勝って、勝ち点を6へと伸ばして最終戦のスペイン戦に臨みたい。これが日本代表にとっての最善のシナリオです。目先の試合に集中しながら、先を見据えて戦いへの備えもする。

それができて初めて、日本代表はまだ見ぬワールドカップの新たな景色にたどり着けるわけです。その道のりは厳しいだけに、みなさんの応援が彼らの力になります。最後までしっかり応援してくださいね。

★『福西崇史 フカボリ・シンドローム』は毎週水曜日更新!★