いよいよ日本時間の12月6日0時より、ベスト8をかけてクロアチアと対戦する日本。カタールW杯開催直後の11月21日に配信した、元日本代表の松井大輔(まつい・だいすけ)選手とグループリーグの予選でも日本代表の中心的存在を担った遠藤 航(えんどう・わたる)選手のスペシャル対談を再録配信!!
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■ナメるな、キケン! 南米勢の手ごわさとは
松井 今回、W杯を間近に控えて、僕と『週刊プレイボーイ』のYouTube特別コラボ企画で、遠藤 航選手をお招きしました!
遠藤 よろしくお願いします!
松井 僕は、遠藤選手が湘南ベルマーレに所属していた頃、対戦していて。すごく〝イヤな〟選手だなと(笑)。これ、サッカー選手特有のホメ言葉なんですが。パスもうまいし、体を当てるのも巧みで痛くて。遠藤選手は僕が誰だかわかります?(笑)
遠藤 わかりますよ(笑)。松井さんといえば、やっぱり2010年の南アフリカW杯での印象が非常に強くて。テクニシャンであると同時に、なんでこんなに走れるんだろうって。
当時のうまい選手って、どちらかというとゲームメーカー寄りだったじゃないですか。だから、無限に走って戦える、かつ試合をつくれるのはすごいなって。
松井 高校時代(鹿児島実業高校)での鍛錬が役に立ちましたね。今も鹿実は、クーパー走(12分間を全力疾走)から練習、そしてまたクーパー走をやってるみたいで、すさまじいなと。でも、高校時代って一番走れるし、そのときに走り込んでおくと、基礎体力がしっかりつくと思うんですよ。
遠藤 まさしく、そのとおりです。その年代でのベースづくりはやっぱり大事ですね。僕もユースの頃は相当走らされましたけど、今ブンデスリーガでやっていて、それが生きていると実感します。
松井 南アW杯、ブンデスリーガの話も出たので、さっそく本題に移りましょうか。W杯のグループリーグの展望です。初戦はドイツです。どういう戦い方をイメージしてますか?
遠藤 ブンデスリーガでプレーしている分、対戦したことのある選手が多いドイツは断然イメージしやすいです。出場が予想される個々の選手の特徴や、こちらとしてはどう守備で対峙(たいじ)するべきか、個人的に研究するとともに、9月の(日本代表のドイツ)遠征ではミーティングで共有もしました。
ブロックが効いている中で、前に行けるときは行って、自分たちがボールを持つ時間をできるだけ長くしたいです。理想はアメリカ戦(9月23日)ですね。
松井 アメリカ戦ですが、前の選手がボールを取って速攻を仕掛けるという感じ?
遠藤 ええ。理想はそのプレッシャーで相手をうまくハメて引っかけて、ショートカウンターで点を取れれば。実際、アメリカ戦ではいくつもそういうチャンスをつくれたんです。ひとつの形として持っておきたいですね。カウンター一辺倒じゃ厳しいでしょうから。
松井 遠藤選手から見て、具体的に警戒している選手は?
遠藤 最近だと、バイエルン・ミュンヘンの(レロイ・)サネ選手(FW)と(ジャマル・)ムシアラ選手(MF)ですかね。ふたりとも好調なんで。
松井 2戦目、コスタリカについてはどうですか?
遠藤 ドイツやスペインばかりが注目されがちですけど、僕としてはコスタリカ戦こそが、グループリーグ突破に向けてものすごくカギになると思います。初戦の結果がどうであれ。コスタリカは非常にまとまりのある、いいチームです。勝ち点3を獲とるのは難しい試合になると思います。
松井 南米勢との戦いの難しさは、9月27日のエクアドル戦でも感じましたか?
遠藤 はい。個々の能力、1対1でボールを奪う強さ、前に出ていくスピード。南米選手権やW杯予選でブラジルやアルゼンチン、ウルグアイとしのぎを削っているだけあって、チームの戦い方も明確で。手ごわかったですね。
松井 南米はね......僕も南アW杯の決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦は、PKまでもつれ込んだけど、本当に難しさを感じましたね。南米勢はサッカーⅠQが高いだけに、非常にずる賢く戦ってくる。遠藤選手が警戒するのはよくわかります。スペインについては、どうですか?
遠藤 去年の東京五輪で対戦したときも感じましたが、スペインは戦い方が一貫しています。スタイルを変えることもないでしょう。ボールを動かす、持つ能力は、やはり秀でていますね。でも、逆に僕らのカウンターが局面によってはうまくハマるかも、と思っています。
■激アツすぎるベテラン、GK川島&DF長友
松井 今現在の代表の雰囲気は、遠藤選手から見て、どんな感じですか?
遠藤 6月14日のチュニジア戦の敗北(0-3)がすごく効きましたね。僕らの4-3-3システムを徹底研究されて、チームとしては機能しなかった。このままじゃダメだって話し合って、9月のドイツ遠征にしっかりと入っていけたのが大きかったです。
松井 チュニジアに惨敗したことが、その後の学びになってよかったですね。
遠藤 ええ。森保監督もやり方を少し変えて、アメリカ戦に臨んだこと、それにエクアドル戦ではメンバーを代えることで、チームに厚みを持たせるとともに、システムのオプションを増やすことができましたしね。
相手からすれば、ワンボランチでくるのか、ツーボランチでくるのか、構える必要性が生じます。僕らとしてはいい準備ができましたね。
松井 森保監督とはけっこうミーティングとかしますか? ここはもっと改善しましょうよ、とか。意見交換みたいな。
遠藤 そうですね、森保監督はコミュニケーション重視派なので、僕も何回か監督とふたりで話す機会をいただいて。そこで、選手たちがどう思っているのか、逆に監督からの言葉を若手に伝えたりしました。
松井 僕らのときは、10年4月7日のセルビア戦から南アW杯直前の6月4日のコートジボワール戦まで、親善試合は4連敗で。メディアに叩かれまくって、大変でした(苦笑)。当時の岡田武史監督はそれでも矢面に立って、選手のことをかばってくれた。本当にありがたかったです。
でも、このままではいけないって、最終合宿地のザースフェー(スイス)でメンバー皆で集まってミーティングをやったんですよ。そこで、泥くさくいこうと決めました。そこからは一丸となって、本大会では走りまくりでしたね。
遠藤 そういう経緯があったんですね。
松井 当時のことを知っているのは、現代表だと川島永嗣選手(GK)と長友佑都選手(DF)になりますが、ふたりはどんな存在ですか?
遠藤 今の代表にとっては非常に大きな存在ですね。
松井 たまに長友君はウザくないですか?(一同爆笑)
遠藤 いやいや(笑)、そんなことはないですよ。長友さんはピュアですし、サッカーに対しては情熱的なんで。冗談っぽく言ってることでも、実は本気だったり。それが面白くて。僕は好きですよ。
松井 永嗣も、長友も、ふたりとも熱すぎるから、熱っ!ってなるときあるでしょ。
遠藤 確かに熱いですよね。
松井 彼らはベテランとして、どんな取り組みをしてます?
遠藤 長友さんは練習の段階からチームを鼓舞するように心がけてくれてます。川島さんは、ひとたびピッチの上に立つと緊張感をみなぎらせて、シュート練習でも100パーセント全力で止めにきますしね。引き締め役というか、声に出さずともプレーで示してくれます。
松井 長友がピュアっていうのはよくわかんないけど(笑)、永嗣は、僕も付き合いが長いんでね。
あるとき、彼に「もう(日本に)帰ってくればいいじゃん」って。でも、永嗣は海外でずっとやりたいと。それを今でも貫き通しているから、本当にすごいと思います。ふたりはW杯を最も経験しているわけだから、今大会でもいろんな意味で支柱になるはずです。
■1㎝、1秒の差がW杯では勝敗を決める
松井 遠藤選手は、前回18年のロシアW杯のメンバーではあったけど、ベンチを温めるだけだったので、そういう意味では、今回が本当の〝W杯デビュー〟となるわけですが。
遠藤 確かに、ロシア大会はベンチから見つめるだけで、すごく悔しさはありました。でも、ポジティブにとらえれば、本大会の雰囲気を体感できただけでも、貴重だなと。
松井 けど、やっぱりそこは出場しないと意味ないよね。
遠藤 ええ。当時は、代表練習で右サイドバックをやったり、所属の浦和レッズではCBと、自分のポジションってどこ?という感じでした。
代表で定位置を確保するには、どこかひとつのポジションにフォーカスして結果を出さないといけないですし、あれから4年、いろんな悔しい思いも散々してきて、海外にも移籍して自分を高めてきたわけですから、どうしても出場したいです。
松井 4年間、積み上げてきたものがあるでしょうしね。
遠藤 はい。今まで自分が代表やクラブで見せてきたプレーをW杯の本番でも存分にぶつけたいって思ってます。
松井 その場にいたから、よく覚えていると思うけど、ベスト8をかけたベルギー戦は、(本田)圭佑のコーナーキックからGK(ティボー・)クルトワ、そこから前線へ一本ロングフィードと、わずか14秒で逆転負け。
1㎝、1秒、ワンプレーの差で勝敗が決まるのが、W杯の怖さ。一戦一戦が決勝トーナメントだと思って、いつもどおりの自分らしさを発揮して勝ち進んでほしいです。
遠藤 確かにそうですね。永嗣さんも〝1㎝の話〟はされてました。
松井 気の早い話だけど、W杯後のステップアップは考えてますか? 移籍とか。
遠藤 もちろん、いいお話があれば考えたいです。プレミアリーグ、そしてチャンピオンズリーグ(CL)でプレーするのは長年の夢でしたので。
ただ、シュトゥットガルトにもすごく愛着があるので、このクラブをCL出場まで導きたいという野望もあります。とにかく、この街も、クラブも環境がいいですから。
松井 プレミアリーグは、みんなの憧れでしょう。僕もプレーしてみたかった。実は、10年ほど前にシュトゥットガルトから高額オファーをもらって。クラブも訪問したけど、結局行かなかった。
遠藤 えー、どうして?
松井 なんでだろう(笑)。言葉もそうだし、フランスが良かったんだね......。とにかく、W杯での活躍を期待してます。絶対勝ってね!
遠藤 はい、頑張ります!
★Youtube『週プレChannel』では、遠藤 航×松井大輔スペシャル対談のダイジェスト版が配信中!
★遠藤 航×松井大輔スペシャル対談の完全版は、Youtube『松井大輔チャンネル』にて配信中!
●松井大輔(まつい・だいすけ)
2004年、京都から仏2部のル・マンに移籍、"ル・マンの太陽"として旋風を巻き起こす。10年南アW杯では全試合に出場。日本屈指のトリックプレーヤー
●遠藤 航(えんどう・わたる)
独・ブンデスリーガで2季連続の"デュエル王"を獲得。日本代表でもチームの心臓として攻守両面において活躍している