サッカー日本代表はクロアチアに敗れ、初のベスト8入りはならず。それでもグループリーグでの快進撃と、各国の威信をかけた熱戦に、日本国内もカタールW杯の話題で持ち切りというニュースは現地にも入ってきている。大会開催前は盛り上がりに欠けて不安だっただけに、連日撮影をする身としてもうれしい限りだ。
いよいよ大会は佳境を迎えているが、現地取材で見たカタール・ドーハでの様子をお伝えしたいと思う。
まずは今大会、ヨーロッパ各国のサポーターは思っていたよりも少ない。これまでだと、イングランドやドイツ、フランスなどのサポーターが大挙してやって来ては試合前から大騒ぎしていることが多かったが、今回はそのような場面はあまり見受けられない。
スタジアム内も、キックオフ直前までこちらが心配になるほど空席が目立つので、カメラマンにとって恒例となっている各国のサポーター撮影も、なかなかはかどらずに困っている。
油断していると、着ているユニフォームと本人の国籍が明らかに違うことも多々あるので、こちらの察知力も試されている。勝手な推測だが、宗教上の理由もあって、公共の場で飲酒ができないという理由が大きく関わっているのかもしれない。
特にサッカーとビールがセットになっているヨーロッパの国々のサポーターたちにとっては、お酒が飲めないのは苦行だろう。試合会場付近でもお酒の提供がないからか、終始穏やかな空気が流れている。
一方で、断トツで人数が多いのはアルゼンチンのサポーターだ。アルゼンチン戦が行なわれるスタジアムは毎回超満員。対メキシコ戦は、大会の最多入場者数(12月5日時点)となる8万8966人を記録した。
さらに、アルゼンチンが出ていない試合でもお決まりの水色と白のストライプのユニフォームを着ているサポーターが多く、他国の試合中に大声でアルゼンチンのチャント(応援歌)を歌い出して周りを困惑させる〝やらかし〟も発生している。
しかし、どうしてここまでアルゼンチンサポーターが多いのか......〝神の子〟メッシの最後になるだろう大会を、なんとしてでも見届けたい気持ちが強いのかもしれない。
今大会はカタール近隣の中東系の観戦者が多いのも特徴だ。聞けば、隣国のアラブ首長国連邦では、大会期間中にドバイ-ドーハ間のシャトルフライトがじゃんじゃん出ているという。主に格安航空会社(LCC)だが、複数の航空会社から一日に30便ほど出ており、24時間ひっきりなしに飛行機が飛んでいるそうだ。
シャトルフライトは往復で約3万円。W杯で高騰しまくっているドーハの宿代を考えると、ドバイから日帰りで行ったほうが断然お得とあって、かなり活用されている。
カタール入国に必要なビザも、試合のチケットを持っている人には「24時間のみ有効のビザ」が存在していて、陸路や空路でも気軽に観戦に来られるよう配慮されている。
ちなみに、サウジアラビアからは陸路が圧倒的に多いとのこと。砂漠の中を長時間ドライブする忍耐力と執念が代表チームにも力を与え、アルゼンチン撃破という快挙につながったのかもしれない。
ここカタールでも、円安の影響は大きい。筆者が最後にカタールを訪れた6年前は、1カタール・リヤルが30円ほどだったが、現在は40円に上がっている。「比較的物価は安い国」と思っていたが、思っていたより出費はかさんでいる。
その上、今回のW杯期間中はFIFAが絡む飲食や物販の価格設定が高く、頭を悩まされている。
大会は決勝トーナメントのラウンド16までオフがない。連日撮影を行なっていると街に出る余裕はなく、食事をメディアセンターで取ることが多くなっているが、そこもFIFA絡みで値段が高い。そのため、ホテルの部屋でお米を炊き、おにぎりを持参することも......。
〝金満国〟のカタールは、ほかの大会で取材に来ると、取材陣への飲食などはすべて無料で立派なものが提供されていた。実は今回もそれを期待していたのだが、W杯では売り上げの何割かがFIFAに入ることになっているため、無料どころか価格が高い設定になっているようだ。
それに円安が追い打ちをかけている形だ。それでもビリヤニだけはメディアセンターのものでもおいしいため、高くてもついつい食べてしまう。値段は65カタール・リヤルで約2600円とお財布には優しくないものの、それで少しでもカタールの雰囲気を感じ、また撮影のためにスタジアムに足を運ぶ。