三笘のようにひとりで突破でき、チャンスもつくれ、ゴールを決められる選手が3人くらいは必要だと語るセルジオ越後氏三笘のようにひとりで突破でき、チャンスもつくれ、ゴールを決められる選手が3人くらいは必要だと語るセルジオ越後氏

夢は見た。でも、乗り越えなければいけない壁はまだまだ高くて厚かったね。

カタールW杯、日本代表は決勝トーナメント1回戦でクロアチアに1-1の延長戦の末、PK戦で敗れた。目標のベスト8以上を実現できなかった。

クロアチア相手に勝つチャンスはあったと思う。選手たちは粘り強くプレーしたよ。ただ、この試合に関しては森保監督の采配がハマらなかった。

グループリーグ(GL)のドイツ戦、スペイン戦では相手との力の差がある中、試合の流れを見て、選手交代で先手、先手を打った。特に、勝たなければいけないスペイン戦での積極的な采配は見事だった。

でも、一発勝負で延長戦もある決勝トーナメントに入り、迷いが生じたように見えた。GLの3試合ではハーフタイムに選手交代をしていたのに、クロアチア戦では動かなかった。

1-0でリードしているのだから当然という見方もあるかもしれないけど、僕はあそこで手を打つべきだと思ったし、少なくとも後半10分に同点にされた時点ですぐに三笘を入れてほしかった。

負けたら終わりで、延長戦、PK戦も想定しなければいけない。采配はもちろん簡単じゃない。森保監督が横内コーチと話す場面が何度もテレビ画面に映っていたけど、相当悩んだのだろう。そして、決断が遅れた。

日本が決勝トーナメント1回戦で負けるのはこれで4度目。厳しいけど、まだまだ経験不足ということ。一方、強豪と呼ばれる国は決勝トーナメントに入るとギアを上げる。GLではいくつも番狂わせが起きたけど、決勝トーナメントに入ってからは強豪がほぼ順当に勝ち進んでいる。

惜しかった、あと一歩だったと言いたい気持ちはわかるけど、結局、日本は過去3回と同じような負け方をした。その事実は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。そうでなければ、いつまでたってもベスト8には届かない。

今回は守ってカウンターのサッカーでドイツ、スペインに勝った。でも、それだけで上位に勝ち進むのは難しい。強豪と五分五分とまでは言わないまでも、4対6くらいに力の差を縮めないといけない。

組織的に守れるようになった今、あらためて求めたいのは個の力。日本には三笘という世界に通用する武器がある。でも、彼ひとりだけでは苦しい。相手に研究される。三笘のようにひとりで突破でき、チャンスもつくれ、ゴールを決められる選手が3人くらいは必要だ。

今回はメディアの報道にも問題があった。ドイツに勝ってからの3日間と、コスタリカに負けた後の3日間の温度差はなんだったのか。スペインに勝って決勝トーナメント進出を決めた後も、ドイツに続きスペインにも勝ったと騒いでいたけど、コスタリカに負けたことをしっかりと受け止めないと進歩はない。

また、決勝トーナメント進出を決めた後「森保監督続投か」という報道があった。ドイツ、スペインに勝ったとはいえ、監督の評価は結果がすべて。彼は目標をクリアできなかった。

決勝トーナメントに進出した監督は、過去にもトルシエ、岡田さん、西野さんと3人いる。森保監督は彼らに肩を並べただけ。過剰に持ち上げるのはよくないし、日本サッカー協会はしっかり大会を総括した上で、次の監督を選ぶべきだ。4年後こそ夢を現実にしてほしい。心からそう願うよ。

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