新年、明けましておめでとうございます。寒い日がまだまだ続きますが、暖房の効いた部屋で飲むビールは格別ですね。さて、この時期スポーツ紙を賑わせるのが、選手のポジション変更(コンバート)の話題です。

コンバートにはどんな狙いがあるのでしょう。晩酌の途中でビールからウイスキーへコンバートして調子をぐんぐん上げる山本が、2023年の一発目はこの話題についてお話させていただきたいと思います。

野球におけるコンバートとは、守備ポジションを変更することを指します。プロ野球選手は運動神経抜群で、だいたいどこのポジションもできるアスリートたちですが、自分の個性をもっとも発揮できるように、年齢とともにポジションが決まっていきます。

さらに、高校時代はエースで4番という選手でも、プロでは打者に専念して外野を守ったり、あるいは村上宗隆選手のように捕手から内野へというポジション変更も珍しくありません。

プロ入りと同時にポジションは固定されるのですが、プロ入り後にポジションを変更する選手もいます。昨年のシーズン中に中日の根尾昂選手が内野から投手へコンバートされ大きな話題になりました。これまでほとんど例をみない采配だったので、ファンや解説者たちは不安を隠すことはありませんでしたが、実際に蓋を開けてみたらなかなかの活躍で、今季はどうなるのか今から注目を集めています。

しかし、これはかなりのレアケースといえます。コンバートの多くは、内野から外野へ、あるいは内野・外野の中で行われることがほとんどだからです。

シーズンインを前に、巨人の原監督は丸佳浩選手のセンターからライトへコンバートの可能性を口にしています。ライトへのポジション変更は、守備の負担を減らし打撃にさらに注力してほしいという意向があるようですね。

このことからもわかるように、コンバートは本人の意思はもちろんですが、チームの意向が多分に反映されています。

たとえば、打撃を生かすために手薄なポジションで勝負させたり、あるいは弱点とされるポジションへ守備の名手を配置したり。

私の中で最大の衝撃だったのは、元ヤクルトの宮本慎也さんがショートからサードへコンバートされたことでした。

ショートはもちろん内野の守備の要です。瞬発力や肩の強さも求められますから、ベテランと呼ばれる年齢の宮本選手より、若手を使いたいという思惑があったのでしょう。

「サードの準備をしてくれと言われたときは、正直プライドを傷つけられた思いだった」と自著の中でも書かれているように、宮本さんがショートというポジションに強い誇りを持っていたことがわかります。ただ、簡単に後釜が見つかるポジションではありませんから、球団としては宮本選手が現役のうちに次世代を育成したいという思いもあったのでしょう。

そうやってチームの新陳代謝を図る必要があるんですね。サラリーマンに例えるならば、異動みたいなものですよね。自分が一番活躍できるポジションもそうですが、チームが必要とする場所で全力を尽くす。それもプロの生き方なのだと思います。

今年も643を待ちわびたいと思います 今年も643を待ちわびたいと思います

私の知っている中でコンバート後の活躍が印象に残る選手といえば、この連載の常連、元ヤクルトの高井雄平さんでしょうか。東北高校時代から速球が自慢の投手でしたが、思ったような数字は残せず、強打を生かすために打者へ転向します。パンチ力のあるバッティングで主軸を担い、さらに肩の強さでは外野からの好返球でチームを何度となく助けました。

選手のいいところをとことん使い切るためのコンバートとは、もしかするとSDGsに通じるものがあるのかもしれません。限られた予算の中で選手をやりくりするのが上層部の腕の見せ所なわけですから、新しい選手を獲得しなくても、コンバートによる選手の魅力の再発見はチーム力向上につながります。いいことづくめですね。

コンバートは見込みのある選手に対する期待の現れともいえます。もちろん順応するまでは時間がかかるでしょうが、その経験によって、野球選手としてはもちろん人間としての成長も期待されます。宮本選手はコンバートされた翌年から4年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞しました。

どんな状況でも成長できることを示した宮本選手は、やはり偉大なプレーヤーでした。大選手というのは逆境をバネに変える力を持っているということ。

この連載を読んでいるみなさんも、時に納得のいかない「コンバート」を提示されることもあるかもしれません。そんなときは宮本さんの活躍を思い出して、一花咲かせてほしいと思います。

新しい1年が始まりますね。プロ野球の開幕はまだまだ先ですが、野球好きのみなさんに多くの幸がありますように。それではまた来週。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!