東京ドームに5万6399人を動員し、PPV契約数50万超を記録した昨年6月19日の那須川天心vs武尊。1ラウンドに左フックでダウンを奪った天心が判定勝利したが、武尊も最後まで果敢に攻め続けた。©THE MATCH 2022 Susumu NAGAO 東京ドームに5万6399人を動員し、PPV契約数50万超を記録した昨年6月19日の那須川天心vs武尊。1ラウンドに左フックでダウンを奪った天心が判定勝利したが、武尊も最後まで果敢に攻め続けた。©THE MATCH 2022 Susumu NAGAO

格闘技史に刻まれた"世紀の一戦"から半年。那須川天心(なすかわ・てんしん)はボクシングデビューへ向け、K-1を卒業した武尊(たける)は海外進出を目指して、それぞれ新たな道を歩み始めている。リングに立つふたりの雄姿を再び見られる日は近い!?

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■ボクサー天心の階級はスーパーバンタム級?

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格闘技界の2022年ベストバウトといえば、6月19日の那須川天心vs武尊で間違いないだろう。キックボクシングの「パウンド・フォー・パウンドナンバーワン決定戦」と待望されながら、天心はRISE(ライズ)、武尊はK-1を主戦場としており、団体間の垣根に阻まれ、実現までに7年を要した一戦だった。

それだけにファンの期待値は高く、試合を組んだ「THE MATCH2022」はチケット争奪戦となり、ABEMAのPPV契約数は50万件を超え、開局以来最多を記録したという。

試合は1ラウンドに天心が左フックで先制のダウンを奪って判定勝利。武尊に勝ったことでキック界に対戦相手がいなくなった天心は、以前から公言していたボクシング転向へ突き進むことになった。

スポーツ紙のボクシング担当記者は言う。

「当初は22年4月2日の国立代々木競技場第一体育館での試合を最後にキックから引退。その後はボクシング活動に専念して、12月にはデビューする青写真が描かれていました。しかし、武尊戦の実現により、ボクシングデビュー戦は23年に繰り越されました」

天心は昨年10月30日、ホームだったRISEのリングに久々に上がり、〝キック5冠王〟寺戸伸近の引退エキシビションの相手を務めている。

その後、単身渡米してボクシング修行をする写真を自身のSNSで公開。詳細な説明文はないが、米ボクシング興行大手トップランク社のCEO、ボブ・アラム氏との2ショットもアップしており、ボクシング転向は着々と進んでいるようだ。

強い対戦相手を求めるため、キックボクサー時代の天心は55㎏から58㎏の契約体重でフレキシブルに闘っていた。では、階級がキッチリ細分化されたボクシングでは何㎏で闘うのか?

天心を少年時代から取材しているスポーツライター・布施鋼治氏は言う。

「数年前、天心は『調整すればスーパーフライ級(52.16㎏以下)まで落ちる』と言っていましたが、スピード、キレともベストは55㎏級だったと思う。ボクシングでもそれに近いスーパーバンタム級(55.34㎏以下)で闘うことになると予想します」

では、気になるボクシングデビュー戦はいつになる?

「4~5月あたりに都内の大会場が有力といわれています」(前出・ボクシング記者)

天心よりひと足先にボクシングへ転向し、結果を出している元K-1王者がいる。昨年8月、5戦目で東洋太平洋スーパーバンタム級王座を奪取し、今年は世界王座を狙う武居由樹(大橋)だ。

天心がスーパーバンタム級に身を置くならば、王者・武居vs挑戦者・天心の世界タイトルマッチが行なわれる可能性もあるだろう。両者は12年2月にアマチュアキックで初めて拳(こぶし)を交わし、引き分けている。

「ルールをボクシングに変えての再戦は格闘技ファンにとっても垂涎(すいぜん)のカード。たとえノンタイトル戦であっても、今年の大晦日に新たな夢の一戦として実現したら、ボクシング人気はさらに爆発するでしょう」(布施氏)

■武尊の復帰戦はアジア最大の団体で?

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一方、天心に敗れた武尊は長期休養を発表したものの、体はうずいていたようで、海外での練習動画を自身のSNSでたびたび公開。アメリカでは以前から興味を抱いていた総合格闘技の練習にもトライしている。

そして昨年11月1日にはK-1との期限満了に伴う契約解除を発表。武尊の「フリー宣言」に即座に反応したのは、かつて天心と激闘を繰り広げたロッタン・ジットムアンノン(タイ)だった。

アジア最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップのフライ級ムエタイ世界王者が、再起を誓う武尊に「ONEで闘おう」と呼びかけたのだ。

ロッタンのラブコールに対し武尊は昨年12月13日、企業の新商品発表記者会見に出席した際、「いろんな条件があるのでまだ決まってないけど、僕はやりたい」と前向きに検討していることを明かした。

「いろんな条件」とは、通常ONEが選手に求める「複数試合契約」に関するものだと思われる。現在31歳の武尊にとっては、この縛りがネックになるのでは?

布施氏はこう言う。

「今年からONEは活動拠点のシンガポールでの大会に加え、ムエタイの殿堂として有名なタイ・バンコクのルンピニースタジアムで、ムエタイだけではなく、総合格闘技や女子の試合も加えた週1回の定期戦を行なうことを発表しています。

5月6日には初のアメリカ進出も決定済み。そうした動きに合わせ、単発契約の選手も起用するという話もある。縛りのない契約で残りの現役生活を全うしようとしている武尊にとって、この契約改正は好都合でしょう」

天心との激闘で海外でも知名度を上げた武尊に、ONEが大きな魅力を感じていても不思議ではない。格闘技界では、「武尊の復帰戦は海外のONE」という噂が既成事実のように流布しているという。

2023年も格闘技界の主役は天心と武尊が張る!?