日本男子バスケットボール界の未来を担う選手たちがアメリカの舞台で躍動している。中でも、NBAに所属するふたりは2022-23シーズンも健在だ。
ブルックリン・ネッツ所属の渡邊雄太(28歳)は高い守備力やシュート力などが認められ、優勝候補の一角と目されるチームで見事にローテーション入りを果たした。
年越し時点での3ポイントシュート成功率51.4%は、なんとNBA1位。無保証契約でシーズンをスタートしたものの、1月10日(現地時間。以下同)には、今シーズンの約197万ドル(約2.6億円)の年俸が保証されることになった。
渡邊が「今季はすごくチャンスがある」と述べるとおり、ケビン・デュラントらスター選手たちに率いられたネッツはプレーオフを勝ち進む可能性も高い。NBAに入ったときから目標に掲げてきた「優勝」も夢ではないだろう。
NBA4年目の八村 塁(24歳)も、ワシントン・ウィザーズの〝シックスマン(ベンチスタートの中で得点源となる選手)〟として活躍している。昨年12月28日のフェニックス・サンズ戦で自己最多タイの30得点を挙げたのをはじめ、多くの試合で2桁得点をマークするなど安定感は抜群。契約最終年である今季のプレーからは、八村本人も「常にアグレッシブにいこうとしています」と語るように、強い決意が感じられる。
渡邊と八村はNBAだけでなく、今年8月25日から9月10日にかけてフィリピン・マニラ、インドネシア・ジャカルタ、日本の沖縄で開催されるバスケットボールW杯でも〝日本代表の要〟としての活躍が期待される。32ヵ国が集う大会での日本の浮沈は、この両雄に委ねられていると言っても大げさではない。
ただ、主役たちを生かす優れたサポーティングキャストも必須。その候補となる若武者のひとりが、NCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1のネブラスカ大学で活躍する富永啓生(21歳)だ。
過去2年の日本代表での鮮烈なプレーから、すでに富永の名を知っているスポーツファンも多いだろう。東京五輪では3人制バスケの代表メンバーに選ばれ、8試合中5戦でチーム最多の得点を叩き出した。
昨夏には、トム・ホーバスHC指揮下のA代表メンバーにも初選出され、FIBAアジア杯2022では平均17.5分の出場で同15.2得点、3ポイント成功率41.3%をマークした。
これだけの数字を残せる理由は、稀有(けう)なシュート力にある。昨夏のアジア杯で富永とプレーした渡邊も、次のように絶賛していた。
「シュート力に関しては、日本ではずばぬけているんじゃないかと思います。シュートを打つことを恐れない心の強さも持っています。それはシューターにとって大事な部分。日本では見たことのない選手ですね」
それほど度胸満点の富永はネブラスカ大で2年目のシーズンを送っており、1月8日時点で16試合に出場し、平均9.7得点。昨季の成績が10勝22敗だったチームも、すでに9勝(7敗)を挙げているが、その中で確実に力をつけている。
同時に、今の富永は自身の課題をしっかり認識していることも心強い。
「(課題は)まずはディフェンスですね。ディフェンス時のリバウンドのボックスアウトや、フィジカルの強さ。シュートに関しては、(ネブラスカ大のフレッド・ホイバーグHCからは)シュートセレクションのことをよく言われます。無理に打つことを減らし、前があいているときは絶対に打て、と言われています」
現役時代、NBAでシューターとしてならしたホイバーグHCから得られるものは多いはずだ。 実際に、昨季のFG成功率は37.3%だったが、今季はここまで45.5%。3ポイントの成功率も同33.0%から36.9%と上がっているのが目を引く。
より精度を増した富永のロングジャンパーは、日本代表にとって大きな武器になる。渡邊、八村が切り開いたスペースを生かし、富永が外から射抜くことができれば攻撃パターンの幅は大きく広がるだろう。
プレースタイル的に、ほかの日本代表の主力選手ともフィットする21歳のサウスポーは、今後の日本のカギを握る存在だと言えよう。
渡邊、八村、富永に続き、アメリカで腕を磨くもうひとりのキープレーヤーは、Gリーグ(NBAのマイナーリーグ)で活躍する馬場雄大(27歳)。
ダラス・マーベリックス傘下のテキサス・レジェンズに所属する馬場は、今季最初の5試合で平均18.8得点、5.8リバウンドを記録。チーム事情で人員不足となったレジェンズのスターターとして起用され、いわゆる〝3&Dプレーヤー(3ポイントとディフェンスに特化した選手)〟として不可欠な存在になっている印象だ。
昨年12月30日のバーミンガム・スクアドロン戦では自己最多の26得点を挙げ、以降も20得点を超える試合が続いた。特にロングジャンパーが好調で、1月7、8日のメンフィス・ハッスル戦では、2戦連続で3本ずつ3ポイントを決めている。
「馬場とはテキサスに行く前に、4、5回くらい一緒に個人練習しました。彼はすごく真面目です」
昨年12月にアメリカを訪れた日本代表のホーバスHCはそう述べ、馬場のバスケットボールに打ち込む姿勢を盛んに称賛した。勤勉さと賢明なプレー、オールラウンドな能力は日本の財産。さまざまな形でチームに足りないものを補完できる馬場は、〝飛び道具〟の富永とはまた違った意味で貴重な戦力だ。
ホーバスHCに求められたという3ポイントの精度を今後も上げていけたら、今季中に悲願のNBA昇格を果たす可能性も出てくる。何より、アメリカの厳しい環境でレベルアップしていることが、日本代表での成功にも直結するはずだ。