森保監督には前回準優勝に終わったアジア杯に優勝することを求めたいと語るセルジオ越後氏 森保監督には前回準優勝に終わったアジア杯に優勝することを求めたいと語るセルジオ越後氏

少し前の話だけど、昨年12月末に僕の来日50周年を祝うパーティを開いてもらった。コロナの感染対策には万全を期すとはいえ、このご時世でどれだけの人が来てくれるのかと思っていたけど、大勢の友人、知人が集まってくれた。

日本サッカー協会の田嶋会長やJリーグの村井前チェアマンも駆けつけてくれた。そして、発起人のひとりである漫画家の高橋陽一先生の「ブラボー!」という乾杯の音頭で始まった会は大いに盛り上がったよ。

コロナのせいもあり、「セルジオのおかげで久しぶりに皆に会えた」という感想も多く、僕としてはそれが一番うれしかったね。まるで同窓会みたいな雰囲気。多くの仲間に支えてもらってきたんだなとあらためて実感した。皆に感謝したい。

この50年間を振り返ると、あっという間。来日当初は数年でブラジルに帰るつもりだったけど、選手、普及活動、評論と形を変えつつ、好きなサッカーに日本で携わり続けてきた。こんな人生、想像もしなかった。

その間、日本のサッカーの景色もずいぶん変わった。昔はサッカーに興味のある人なんてほとんどいなくて、試合のテレビ中継もなく、土のグラウンドばかりで、スパイクを売っているスポーツショップも少なかった。

ターニングポイントは、やっぱり1993年のJリーグ開幕。当時の世間に与えたインパクトは本当に大きく、選手の意識もプレーする環境もすべてがそこから変わった。

そして、「ドーハの悲劇」(93年)、「ジョホールバルの歓喜」(97年)を経て、今ではW杯に出ることが当たり前に。7大会連続出場中だ。昔より本大会の出場国数が増えたにしても、隔世の感がある。その過程は今でもすべて鮮明に覚えているし、それを見届けられたのはラッキーだった。

話をパーティに戻すと、"時の人"である日本代表の森保監督も忙しい合間を縫って来てくれた。以前からたまに食事を共にしたりする仲とはいえ、僕は時にメディアを通して厳しい意見をすることもある。

それでも「セルジオさんの言葉は励みになる」とし、アドバイスをメモすることもあった。本当に律義で真面目だし、あれだけ気を使える人はなかなかいない。

ただ、人柄の良さとサッカー監督としての評価はあくまで別。続投が決まった以上は応援したいし、期待もしているけど、今後も忖度(そんたく)なしで批評させてもらうつもりだ。

森保監督の続投については、賛成というよりは妥当だと思う。確かに、W杯ベスト8以上という目標はクリアできなかった。でも、責任を問う声はあまり聞かれず、監督解任という世論は生まれなかった。むしろ年末年始はメディアに引っ張りだこで、大晦日の『NHK紅白歌合戦』にも出演していたよね。

ドイツ、スペインに勝った事実はそれだけインパクトが大きかった。言葉の壁がないから選手とのコミュニケーションがしっかり取れる。協会に対してむちゃな要求をすることもなく、与えられた条件でベストを尽くしてくれる。そして、有名な外国人監督よりも割安な年俸。田嶋会長からすれば、彼を解任する理由は何もないよ。

ただ、今後は大変。次こそは明確な結果を求められる。北米W杯でのベスト8進出はもちろん、個人的には、前回準優勝に終わったアジア杯に優勝すること、まずはそこを求めたいね。

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