Jリーグで一定期間プレーし、プロとしてのベースを築いてからの挑戦でも遅くはないと語るセルジオ越後氏Jリーグで一定期間プレーし、プロとしてのベースを築いてからの挑戦でも遅くはないと語るセルジオ越後氏

今の選手にとってJリーグのステータスはそこまで低いのかと複雑な気持ちだ。

先頃行なわれた高校サッカー選手権で活躍した神村学園のFW福田師王(ふくだ・しおう)君が、高校卒業と同時にドイツに渡り、古豪ボルシアMGに加入する。即戦力というよりは将来性を見込まれての獲得で、当面は4部相当のセカンドチームでプレーするそうだ。

福田君の選手権でのプレーぶりを見ると、身長178㎝と特別に大きいわけではないものの、当たり負けしない体の強さがあり、高い技術も兼ね備えていた。注目を集める中でしっかり3得点を挙げるなど、可能性を感じさせるプレーを披露した。

ただ、今大会ではほかにもいいFWの選手はいた。福田君は現時点でそこまでずばぬけている選手ではない。それなのにテレビ中継では、ドイツという"看板"だけで過剰に持ち上げていたのは気になったね。

福田君に限らず、若い選手の「なるべく早く海外に行きたいor行くべき」という意識は年々強くなっている。昨年も、年代別代表に選ばれていたDFチェイス・アンリが尚志高校を卒業後、Jリーグを経ずにドイツのシュツットガルトに加入し、セカンドチーム(4部)でプレーしている。

でも、過去の例を見ると、Jリーグでプレーせずに海を渡って大きな成功を収めた選手はいないよね。一見、遠回りに思えるかもしれないけど、Jリーグで一定期間プレーし、プロとしてのベースを築いてからの挑戦でも遅くはない。むしろそのほうが成功する確率は高い。

ただでさえ高校とプロでは環境が全然違う。それが海外となれば、言葉や文化の壁も加わる。性格面の向き不向きもある。それらをまとめて乗り越えるのは簡単じゃないよ。

一方で"青田買い"する欧州のクラブ側からすれば、高額の移籍金は不要。年俸も安い。プレーさせるのはセカンドチーム。リスクは何もない。将来的なアジアのマーケット開拓も含めて、当たれば大儲け、宝くじ程度の温度感だろう。

だから、個人的にはドイツとはいえ、レベルの低い4部でプレーするよりも、まずはJリーグでもまれたほうがよいと思う。

もっとも、福田君はそうした背景も理解した上でドイツに渡ると決めたのだろう。ドイツには日本人コミュニティもあるし、ボルシアMGのトップチームには日本代表の板倉がいる。周囲からのサポートもある程度は見込めるはず。

何より、どんな形でもチャンスを得て、それに挑戦すること自体は悪いことではない。決まった以上は応援したいし、ドイツで大化けしてくれればという期待もある。

ただ、しつこいようだけど、もし1、2年たってもトップチームでプレーできるめどが立たないなら、だらだらと海外にしがみつくのではなく、さっさと見切りをつけて日本に戻ってほしい。でないと、すぐにさびついてしまうからね。そして、Jリーグで結果を出してから再び海外挑戦すればいい。

いつも言っていることだけど、選手は試合に出てなんぼ。練習だけで成長するのは限界がある。海外に渡っても出場機会を得られないのであれば、それは移籍ではなく単なる留学だ。

福田君にはなるべく早く活躍してもらって、日本に明るいニュースを届けてほしいね。

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