W杯後、目覚ましい活躍を見せているブライトンの三笘。キレのあるドリブル、豪快なゴールの連発に複数のビッグクラブが熱視線 W杯後、目覚ましい活躍を見せているブライトンの三笘。キレのあるドリブル、豪快なゴールの連発に複数のビッグクラブが熱視線

昨年のカタールW杯で日本に感動を届けた森保ジャパン。その大半を占める欧州組は各クラブに戻ってリーグ後半戦を戦うが、連日のように活躍が報じられる選手もいればまったく名前を聞かなくなった選手も......。それぞれのチーム内での立ち位置や評価、移籍の可能性などを一挙にチェック!

■三笘、久保は悔しさをバネに大活躍

日本列島が熱狂の渦と化したカタールW杯から1ヵ月以上が過ぎ、国内のサッカー熱は少し落ち着きつつあるが、ヨーロッパではその余韻も冷めやらぬ昨年12月下旬からシーズンが再開。日本代表の欧州組も活躍の場を各クラブに戻し、それぞれの目標に向かって再び切磋琢磨(せっさたくま)の日々が始まった。

そこで、カタールの地で躍動した日本代表戦士たちが、その経験を糧に現在どのような活躍を見せているのか、その近況を紹介したい。

まず、最も目覚ましい活躍を見せているのが、今シーズンからブライトン(イングランド・プレミアリーグ)でプレーする三笘(みとま)だ。

カタールでは全4試合に出場し、スペイン戦では"三笘の1㎜"と呼ばれて脚光を浴びた決勝点につながるアシストを決めたが、いずれの試合も途中出場。しかも、敗れたクロアチア戦でPKを失敗したこともあり、試合後に涙を流して悔しさをあらわにしたことは記憶に新しい。

そんな三笘だが、W杯後の公式戦では、早速悔しさをバネに発奮。4-2-3-1の左ウイングとして、リーグ戦5試合を含む公式戦7試合で連続スタメン出場(日本時間1月30日現在。以下同)を続け、完全にレギュラーの座を確保した。

得意のドリブルもさえわたり、相手DFの背後でパスを受けるプレーを見せるなど、プレーのバリエーションも増加中。特に際立っているのが得点力の向上だ。

W杯前は負傷もあってリーグ戦1ゴールにとどまっていたが、W杯後はすでに公式戦4ゴールを記録。2試合に1点というハイペースでゴールを量産し、アーセナルやリヴァプールといった強豪との試合でゴールを決めたことに、成長の跡がうかがえる。

その中でも第21節のレスター戦とFA杯のリヴァプール戦で決めたゴールは、ヨーロッパ中に三笘の名を知らしめたスーパーな一撃だった。

その躍動ぶりが影響し、三笘の市場価値は急上昇。今冬の移籍市場で動きはなかったが、この調子が続けば、今夏はビッグクラブから引き抜きオファーがあっても不思議ではない。現在の日本代表選手の中で、今後の出世が一番期待できる選手だ。

同じく、W杯後の活躍ぶりが目立っているのが、ラ・リーガ(スペイン)のレアル・ソシエダでプレーする久保建英(たけふさ)。カタールW杯での久保は、体調不良で大事なクロアチア戦を欠場したほか、グループリーグでも思いどおりの活躍ができず、三笘と同じように悔しい思いをした選手のひとりだ。

しかし、所属クラブではそのうっぷんを晴らすかのように、シーズン再開後の公式戦でハイレベルなパフォーマンスを披露している。

レアル・ソシエダで好調を維持する久保。スペイン現地の一部報道では、古巣のレアル・マドリード復帰に関して考察する記事も レアル・ソシエダで好調を維持する久保。スペイン現地の一部報道では、古巣のレアル・マドリード復帰に関して考察する記事も

圧巻だったのは、ソシエダのサポーターが1シーズンの中で最も重要視しているアスレティック・ビルバオとの"バスク・ダービー"で決めた決勝ゴールだ。

1点リードで迎えた37分、ダビド・シルバからのパスを受けた久保は、寄せてきた相手DFを股抜きでかわすと、そのまま左足でシュート。本人がユニフォームのシャツを脱いで歓喜したそのスーパーゴールは、高度なテクニックを持つ久保ならではの一発だった。

W杯後はチームも好調を維持して目下リーグ3位。久保にとって古巣対決となった第19節のレアル・マドリード戦でも、負傷を抱えてプレーしながら何度もゴールチャンスを演出するなど、ソシエダが目指すサッカーとの相性も抜群だ。

このまま4位以内を確保し、目標の欧州チャンピオンズリーグ出場権を獲得できれば、来シーズンは世界最高峰の舞台に立つことができる。シーズン後半戦の久保のプレーは、要注目だ。

■堂安や鎌田らブンデス勢も好調

今シーズンからフランスのリーグ・アンに活躍の場を移したスタッド・ランスの伊東純也も、W杯前と変わらずに好調をキープしている。

しかもチームは、シーズン序盤こそ下位に低迷していたものの、オスカル・ガルシア監督の解任を受けて就任したウィリアム・スティル新監督の下で成績が急浮上。12戦無敗を記録するなど、現在はリーグ・アンの"台風の目"として脚光を浴びており、その中で伊東はチームの中核として活躍を続けている。

第20節では、リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・エムバペの豪華トリオが先発したパリ・サンジェルマンとの試合に先発出場。敵地での難しい試合ながら、右ウイングで先発した伊東は臆することなくいつもどおりのプレーを披露し、価値あるドローに貢献した。

ゴールやアシストといった目に見える結果は減少気味だが、新しい戦術にも即フィットし、攻守両面で高い評価を集めている。

1月20日(現地時間)に再開したドイツのブンデスリーガでは、堂安律鎌田大地が少しずつ調子を上げている。

フライブルクでプレーする堂安は右ウイング、もしくは右シャドーのポジションで再開後の3試合に先発。大敗した初戦の出来はいまひとつだったが、調子を取り戻した第18節のアウクスブルク戦では決勝ゴールをアシスト。チームの勝利に貢献した。

18試合を終了した時点でチームは5位。堂安個人も18試合すべてに出場し、ここまでリーグ戦では2ゴール3アシストをマークするなど、主軸としてプレーしている。カタールW杯のドイツ戦とスペイン戦で貴重なゴールを決めた勝負強さを、所属クラブでも期待できそうだ。

フランクフルトの鎌田大地は、再開後の2試合に先発し、3戦目の首位バイエルンとの大一番では途中出場。先発した2試合は低調だったが、大事なバイエルン戦では後半64分にピッチに登場すると、5分後に見事なパスで同点弾をアシストした。

昨シーズンからチームに不可欠な戦力として活躍する鎌田は、今シーズンから中盤でのプレー機会が増えて選手としてプレーの幅を広げており、相変わらず移籍市場では"人気銘柄"だ。今夏にフランクフルトとの契約が満了し、ドルトムントなど強豪クラブへの移籍が濃厚とみられているだけに、ますます後半戦のプレーは必見だ。

そのほか、ブンデスリーガ勢では、シュトゥットガルトの遠藤航(わたる)と伊藤洋輝、ボルシアMGの板倉滉がレギュラーとして活躍。カタールW杯のドイツ戦で逆転弾を決めたボーフムの浅野拓磨は、レギュラー奪取と今シーズン初得点を目指している。

■南野は出番減、吉田はチーム不振で苦境に

対照的に、苦境に陥っているのがモナコ(リーグ・アン)の南野拓実だ。W杯再開後の初戦、オセール戦で左MFとしてスタメン出場。前半にPKを獲得して同点弾につなげたものの、ハーフタイムに途中交代した。すると、後半から登場した17歳の逸材、エリーゼ・ベン・セギルが決勝点を含む2得点とド派手なデビューを飾ったこともあり、以降は出場機会を失った。

さらに、先発したフランス杯の試合も後半途中でベン・セギルと交代したが、チームは格下相手にPK戦の末、まさかの敗退。まだヨーロッパリーグの戦いは残されているが、今後の試合数が減ってしまったことは、南野にとって痛恨といえる。

上位争いを演じる強豪モナコはもともと選手層が厚い。南野本人が望むFWには、ここまで2桁得点を記録するウィサム・ベン・イェデルとブレール・エンボロが君臨。当面はロシア代表の左MFアレクサンドル・ゴロヴィンのバックアップとして、イスマイル・ヤコブスとのポジション争いを強いられそうだ。

日本代表のキャプテンを務めたシャルケ(ブンデスリーガ)の吉田麻也も、状況は厳しい。吉田個人は、再開後の3試合を含めてすべてのリーグ戦で先発出場するなど守備の要を担っているが、チームの不振が続いて最下位から脱出できず。

失点に関与するケースもある吉田がやり玉に挙げられることもしばしばで、今冬には新戦力のCBも加入した。シャルケとの契約は今夏に満了するだけに、残留を果たせるかどうかが、自身の去就に直結するだろう。

また、アーセナルに所属する出世頭の冨安健洋は、負傷が続いたこともあり、リーグ再開後は途中出場1試合のみ。ただし、敗戦を喫したFA杯のマンチェスター・シティ戦では、右SBとしてフル出場。及第点のパフォーマンスを披露するなど、明るい兆しを見せている。

一方、カタールW杯メンバーから落選した選手では、セルティック(スコットランド)の古橋亨梧が絶好調だ。元横浜F・マリノス監督のアンジェ・ポステコグルー率いるチームのエースとして君臨する古橋は、ここまでリーグ戦17ゴールを量産し、得点ランキングの首位を快走。W杯後の9試合でも計7ゴールを叩き出しており、シーズン20ゴール達成は時間の問題だ。

もはや今夏にお隣イングランドのクラブからオファーが舞い込むことは必至で、日本代表としても3月の強化試合で再招集されることは間違いないだろう。日本人FWとして屈指の得点力を誇る古橋を、森保監督がどのように起用するかにも、注目が集まる。

また、セルティックにはレギュラーとして好調をキープするMF旗手(はたて)怜央、カタールでも活躍した前田大然(だいぜん)、今冬にF・マリノスから新加入した岩田智輝など計6人が所属。前田に加え、古橋と旗手の代表復帰も有力視されるだけに、日本のファンにとっては見逃せないチームだ。

紹介した選手以外にもヨーロッパで活躍する日本人は多い。誰が3月の日本代表戦に招集されるのかも含め、後半戦も楽しみは尽きない。