みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。先日びっくりしたことがありました。阪神の最年長選手はなんと西勇輝投手の世代で、33歳なんですって。私(26歳)なんか阪神だったらすでに中堅からベテランの域に達しているということですよね。
おそらくチームが若返りをはかっているのでしょうが、そうなればきっと押し出されてしまうベテラン選手もいることでしょう。そんな選手が誓うのが「再起」です。諸事情でチームを出た選手は、新しい活躍の場を求め再起を図ります。
「再起」。
辞書によると「悪い状態から力を盛り返して、再び活動を始めること」とあります。いいことも悪いこともあるのが人生ですが、野球選手は結果を求められますから、調子が悪かった、では済ますことができません。たった1年であっても調子が上がらなければ、クビになってしまう可能性もあるのがプロの世界です。
再起を図るシチュエーションはいくつかあります。まず、契約更改されずトライアウトなどで他球団に移籍する場合。
ヤクルトはかつて「野村再生工場」と言われたようにそのDNAは今でも健在で、他球団で活躍の場を失った選手が再び輝きはじめる魔法のような場面を、私たちは何度も目撃しました。
たとえば近藤一樹投手は、2016年にオリックスからヤクルトへトレードでやってきましたが、移籍2年目には球団新となる35ホールドを記録しています。ダイナミックなフォームも印象的でしたが、リリーフで降板したあとは必ず守っていたナインをハイタッチで出迎えていました。
最後の闘牛戦士、坂口智隆選手も苦労を知っているからこそ人を惹きつける力がある選手でした。なぜかおじさんたちから人気があるのが昔から不思議でしたが、もしかすると自分自身の姿を重ね合わせていた方もいたのかもしれません。
昨年末に中日を自由契約となり、合同トライアウトを経てヤクルトに入団した三ツ俣大樹選手は、まさに再起をかける選手の一人。チームになかなか溶け込めずにいた三ツ俣選手ですが、村上宗隆選手が一発ギャグをお願いして一気にチームの人気者になったというニュースを目にしたとき、なんだかホッとしたのは私だけではないでしょう。
移籍選手は、見ず知らずの土地にやってきた転校生みたいなもの。周りの皆をライバルだと思って緊張していた三ツ俣選手の心をほぐした村上選手の心遣いは素敵ですよね。そして、1年を通して一緒に戦っていこうという、彼なりのメッセージだったのかもしれません。前の球団をクビになったとしても、改めて声がかかる選手はやはり戦力であり仲間だということですから。
移籍はベテランになればなるほどハードルが上がるもの。家族がいたら、さらにプレッシャーも大きいことでしょう。他チームに移籍して新たな挑戦をする。私たちに例えるならば転職に近いでしょうか。
小さい頃から野球一筋に打ち込んで、ようやく掴んだプロ野球選手という地位を失うかもしれないというプレッシャーはどれほどでしょう。高卒ルーキーたちに混ざって戦う、その勇気に敬意を表したいと思います。
怪我からの再起も胸が熱くなります。私が愛してやまない由規投手が、2016年に5年ぶりにマウンドに帰ってきた試合は今でも忘れられません。みんなでボードを用意して応援しに行ったのですが、スタジアムの雰囲気や最初から全力で飛ばした由規投手のピッチング、すべてが今でも鮮烈に焼き付いています。ファンのみんなも由規投手と一緒に戦った試合でした。
病気からの再起もありますね。白血病を公表したカラスコ投手は(当時インディアンス)、オールスターで投げられるまでに復活を果たしました。復帰登板の日は敵味方関係なく、その偉大なカムバックを大きな拍手で称えました.
再起をかける選手を応援したくなるのはなぜなのでしょう。きっと野球というスポーツは単なるスポーツの枠を越え、小説に近いのかもと思うことがあります。ファンは自身の姿を選手に投影しているのでしょう。だから、苦労している人には輝いてほしいと思うのです。
再起をかける選手の活躍に注目して、シーズン開幕を楽しみにしたいと思います。それではまた来週。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン