昨季はメジャー自己最高タイの16勝を挙げ、30代半ばにして第二の全盛期を迎えた感のあるダルビッシュ有。この2月、パドレスと新たにトレード拒否条項付きの6年総額1億800万ドル(約145億円!)の大型契約を結んだ 昨季はメジャー自己最高タイの16勝を挙げ、30代半ばにして第二の全盛期を迎えた感のあるダルビッシュ有。この2月、パドレスと新たにトレード拒否条項付きの6年総額1億800万ドル(約145億円!)の大型契約を結んだ

3月9日にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)本大会の初戦を迎える、栗山英樹監督率いる侍ジャパンの強化合宿。大谷翔平(エンゼルス)はじめメジャー勢4人の合宿不参加を忘れさせるほどの〝ダルビッシュ旋風〟に、ファンも選手たちも熱狂中!

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栗山英樹監督が悩みに悩んだ末、選び抜いた30人のメンバーのうち、国内組とダルビッシュ有(パドレス)が参加して始まった宮崎での強化合宿。現場ではそのダルビッシュが、いきなり圧倒的な存在感を発揮している。

若い選手たちはダルビッシュが投球練習をすれば「すげえ!」を連発。しかも、ひと回り以上も年下の選手にも気を使わせないよう、ダルビッシュのほうからさりげなく、かつ積極的に話しかけるケースが目立つ。

ダルビッシュ有 パドレス/投手/36歳 合宿2日目に初めてブルペンで投球練習を行なった際には、キャッチャーの後ろに侍ジャパン投手陣の〝見学組がずらりと並んだ ダルビッシュ有 パドレス/投手/36歳 合宿2日目に初めてブルペンで投球練習を行なった際には、キャッチャーの後ろに侍ジャパン投手陣の〝見学組がずらりと並んだ

投球練習では、弾道測定機器「トラックマン」で計測したボールの軌道や回転軸、回転数などをタブレット端末で1球ごとにチェック 投球練習では、弾道測定機器「トラックマン」で計測したボールの軌道や回転軸、回転数などをタブレット端末で1球ごとにチェック

「アドバイスのつもりはなく、情報のシェアです。僕も若い選手たちのことは知らないし、彼らから学べることもありますから」(ダルビッシュ)

そう本人は言うが、特に変化球の握り方、身体の使い方などの話は大好評で、みんなが〝ダル塾〟の塾生というムードだ。栗山監督はこう語っていた。

「(自身がキャスターとして取材した)第1回、第2回大会のときはものすごい緊張感を練習から感じたけれど、今は時代なのか、選手たちはプレッシャーを楽しんでいるように感じますね」

練習中は選手やコーチにたびたび声をかけている栗山監督。脳内ではすでに無数の選手起用シミュレーションを済ませているはずだ 練習中は選手やコーチにたびたび声をかけている栗山監督。脳内ではすでに無数の選手起用シミュレーションを済ませているはずだ

もちろん時代もあるだろうが、それ以上にダルビッシュが進んでメディア対応も行なうなど、注目を一身に浴びていることによる〝風よけ効果〟が大きい。スポーツ紙WBC担当記者が言う。

「その代表格が佐々木朗希(ロッテ)でしょう。もしダルビッシュがいなかったら、どれだけ重圧を感じていたことか。スライダーの握り方など細かな助言も受けているようですが、精神的にもずいぶん頼っているみたいですね」

栗山監督は「全員がキャプテンのつもりでチームを支え、引っ張ってくれることでより大きな力となることを期待したい」と、特定のキャプテンを置かず大会に臨む。だがすでに、その任はダルビッシュが担っている。まとう雰囲気や周囲の反応は、まるでかつてのイチローのようだ。

ダルビッシュ、大谷、佐々木、山本......という豪華投手陣を預かる吉井理人投手コーチ。大会後はロッテ監督職に戻る ダルビッシュ、大谷、佐々木、山本......という豪華投手陣を預かる吉井理人投手コーチ。大会後はロッテ監督職に戻る

では、チームの仕上がり具合はどうか? 吉井理人投手コーチは落ち着いた表情でこう語っている。

「投手は順調です。まあ、ブルペンだけでは良し悪しは言えませんけど、それぞれのチームのエース格がそろっている。何も心配していません」

特に、WBC使用球にも問題なく順応している戸郷翔征(巨人)、高橋奎二(ヤクルト)、今永昇太(DeNA)の〝第2先発陣〟は、いつ本番を迎えてもいい状態。また、リリーフ陣では大勢(巨人)が目を見張るボールを投げており、抑えかセットアッパーで重要な場面を任されそうだ。

「宮城大弥(オリックス)、松井裕樹(楽天)あたりはまだちょっとWBC球に対応しきれず、制球に戸惑っているかな。でも、好調な投手にあおられることはなく、マイペースで練習できているから本番は大丈夫」(チーム関係者)

山川穂高 西武/内野手/31歳 西武にいるときのまんまのキャラで代表合宿を盛り上げるパ本塁打王。一塁のポジションは岡本和真(巨人)との競争になる 山川穂高 西武/内野手/31歳 西武にいるときのまんまのキャラで代表合宿を盛り上げるパ本塁打王。一塁のポジションは岡本和真(巨人)との競争になる

野手組では、ジャパンの重圧などどこ吹く風、いつもどおりのリラックスぶりを見せているのが山川穂高(西武)。フリー打撃では本塁打狙いに徹してスタンドの観客を盛り上げ、ダルビッシュの感想を求められれば「顔ちっさいっすね」と爆笑を取る。過去大会の川﨑宗則や松田宣浩とはまた違うタイプのムードメーカーになるかもしれない。

村上宗隆 ヤクルト/内野手/23歳 合宿4日目、初の実戦形式練習でダルビッシュからバックスクリーン弾。ダルの「おかわり」要請に応じ、再び打席に立つひと幕も 村上宗隆 ヤクルト/内野手/23歳 合宿4日目、初の実戦形式練習でダルビッシュからバックスクリーン弾。ダルの「おかわり」要請に応じ、再び打席に立つひと幕も

そして〝村神様〟こと村上宗隆。合宿序盤はスロー調整気味だったが、21日には初の実戦形式の練習でダルビッシュからバックスクリーン弾。これで4番当確か。

「テレビで見ていた人ですから。まさか自分が打席に立てるなんて。幸せを感じながら打席に立ってました」

と村上が言えば、打たれたダルビッシュは、

「公開処刑されて悲しいです」

と笑わせた。そして栗山監督もうれしそうにこう言う。

「僕だけじゃなくて、コーチとか選手もワクワクドキドキ。野球っていいなあって。ああいうのがチームの推進力になっていると思います」

走塁の判断が勝敗を決める際どい試合になる可能性も(左から清水雅治外野守備・走塁コーチ、ヤクルト・山田哲人、牧、西武・源田壮亮、阪神・中野拓夢、白井一幸ヘッドコーチ) 走塁の判断が勝敗を決める際どい試合になる可能性も(左から清水雅治外野守備・走塁コーチ、ヤクルト・山田哲人、牧、西武・源田壮亮、阪神・中野拓夢、白井一幸ヘッドコーチ)

ほかにも牧秀悟(DeNA)が持ち前の渋い当たりをレフト、ライトに打ち分けたり、ショートのレギュラー当確の源田壮亮(西武)も打撃に守備に〝名脇役ぶり〟を披露したりと、各自がキャラを生かして存在感を示している。

出だしは十分すぎるほど順調な侍ジャパン。ここに大谷翔平(エンゼルス)はじめ、メジャー組が合流したら――さらにとんでもない騒ぎになりそうだ。