12年半ぶりに古巣のC大阪に復帰した香川。開幕戦では後半26分から途中出場し、得点の起点になるスルーパスを出すなど存在感を示した 12年半ぶりに古巣のC大阪に復帰した香川。開幕戦では後半26分から途中出場し、得点の起点になるスルーパスを出すなど存在感を示した

サッカーファンが待ちに待ったJリーグの新シーズンが幕を開けた。とりわけ今年はリーグ開幕30周年に当たるメモリアルイヤー。しかも昨年のカタールW杯における森保ジャパンの活躍によって国内サッカー人気が再燃しており、例年以上に注目度がアップしている。

近年は、2017年以降で優勝4回(17、18、20、21年)を誇る川崎フロンターレと、優勝2回(19、22年)の横浜F・マリノスがタイトルを争う構図が定着しているJ1だが、果たして2強の牙城を崩すチームは現れるのか。各チームの補強状況から、飛躍が期待できそうなチームと、不安を残すチームをそれぞれピックアップしてみたい。

まず、2強に割って入るだけの陣容を整えたとみられているのが、昨シーズン5位のセレッソ大阪だ。もちろん最大の目玉は、12年半ぶりの古巣復帰でサポーターを歓喜させた元日本代表の香川真司。日本中のサッカーファンが注目するビッグネームの加入は、ピッチ内外でチームに好影響を及ぼすに違いない。

その香川に加え、2年連続2桁得点を記録して昨シーズンは横浜FMの優勝に貢献したFWレオ・セアラを獲得し、自慢のクロスでチャンスをつくるMFジョルディ・クルークスもアビスパ福岡から加入。

さらに、ジェアン・パトリッキが抜けた穴を新助っ人のFWカピシャーバで埋めることができれば、昨シーズンの課題だった得点力不足は確実に解消されるはずだ。

注目の開幕戦では昇格組のアルビレックス新潟に引き分けてしまったが、早速途中出場した香川が起点となってゴールが生まれるなど、積極補強の効果は見て取れた。就任3年目を迎える小菊昭雄監督のサッカーも浸透しているだけに、悲願の初優勝も夢ではないだろう。

同じく、積極的な補強でウイークポイントを補ったのが、「常勝軍団復活」を誓う鹿島アントラーズだ。注目は、ここ数シーズンは精彩を欠いている伝統の堅守をよみがえらせるべく、ガンバ大阪から昌子 源、ニーム(フランス)から植田直通という代表クラスの即戦力CBを〝ダブル獲(ど)り〟したことだ。

かつて鹿島で数々のタイトル獲得に貢献したふたりのOBが復帰したことで、守備の強化のみならず、勝者のメンタリティもチーム全体に伝播(でんぱ)することが予想される。

また、攻撃陣には川崎から知念慶が加入し、レンタル先で成長した染野唯月と垣田裕暉も復帰。サンフレッチェ広島から獲得した〝スピードスター〟の藤井智也は開幕戦で右ウイングとして先発するなど、前線は一気に激戦区と化した印象だ。

ほかにも、ディエゴ・ピトゥカを軸とする中盤に即戦力の佐野海舟(←J2町田ゼルビア)を補強し、各ポジションに申し分のない戦力がそろった。あとは昨夏にコーチから昇格した岩政大樹監督が、確固たるチーム戦術を浸透させられるかどうか。そこにチームの命運がかかっている。

「量より質」を重視したピンポイント補強が奏功しそうなのが、名古屋グランパスだ。百戦錬磨の長谷川健太監督の就任初年度となった昨シーズンは、優勝した横浜FMと並ぶリーグ最少の35失点に象徴されるように、強固な守備が最大の強みだった。

逆に、30得点は京都サンガと並んで下から2番目の少なさで、そこに課題があった。

名古屋は浦和からFWのユンカーを獲得。2021年に途中加入ながら公式戦16得点を挙げたストライカーがチームの得点力不足を解消するか 名古屋は浦和からFWのユンカーを獲得。2021年に途中加入ながら公式戦16得点を挙げたストライカーがチームの得点力不足を解消するか

そこでフロントは、新得点源として期待できるキャスパー・ユンカーを浦和レッズから獲得。マテウス・カストロ、永井謙佑との3トップが形成されたことで、その悩みは一気に解消されるだろう。

実際に、横浜FCとの開幕戦ではユンカーが早々に先制点を決め、持ち前の堅守で逃げ切ることに成功するなど、勝利の方程式も見えてきた。

基本布陣の3-4-3の「4」にはマルチロール(複数のポジションをこなせる選手)の和泉竜司(←鹿島)とウイングバックの野上結貴(←広島)が加入し、ボランチには米本拓司も復帰。盤石の陣容を整え、上位進出を虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。

一方、新戦力獲得に消極的だったのが、横浜FMと川崎の2強だ。

川崎はW杯で活躍した不動のCBで、長く主将を務めた谷口彰悟がカタールのアル・ラーヤンに移籍。その代役として柏レイソルから大南拓磨を獲得したものの、大黒柱の抜けたDFラインの不安は拭えない。

また、前線には湘南から瀬川祐輔を獲得し、宮代大聖も復帰したが、こちらも戦力アップとは言い難く、現状、離脱中のレアンドロ・ダミアンと小林悠にかかる負担は軽減されそうにない。

就任5年間で4度の優勝を誇る鬼木 達監督は、今シーズンから可変システムに取り組んでいることもあり、現有戦力をベースに王座奪回を目指す構えのようだ。

王者・横浜FMは、昨シーズンのリーグ年間MVPの岩田智輝がスコットランドのセルティックに移籍したほか、開幕直前に守護神の高丘陽平がカナダのバンクーバー・ホワイトキャップスに電撃移籍。さらに19年のリーグ年間MVP仲川輝人がFC東京に、レオ・セアラも流出するなど戦力ダウンは否めない。

新戦力としては、復帰したGK飯倉大樹(←神戸)、FW植中朝日(←V・ファーレン長崎)とMF井上健太(←大分トリニータ)のJ2組、柏から加入したDF上島拓巳らに期待がかかるが、さすがに連覇を狙うには厳しいと言わざるをえない。

もっとも、この2チームは現有戦力だけでも十分に優勝を狙えるだけの力があり、他チームと比べて財政的な余裕もあるため、仮にスタートダッシュに失敗した場合、最初の移籍期限(3月31日)までに新戦力を獲得する可能性は高いとみていいだろう。

いずれにしても、2強が大幅な戦力アップを図らなかったことで混戦は必至。面白いシーズンになりそうだ。