「集客に関して、今後はコロナを言い訳にできなくなる。Jリーグの魅力をますます発信していかないとね」「集客に関して、今後はコロナを言い訳にできなくなる。Jリーグの魅力をますます発信していかないとね」

Jリーグにもようやく本当の日常が戻ってきた。感慨深いね。

30周年を迎えたJリーグが開幕した。今季はコロナ禍で定められていた感染防止のための規制が緩和。入場者数の上限は収容定員100%となり、マスク着用の条件付きとはいえ、声出しの応援も可能になった。

コロナのリスクがゼロになったわけではないにしても、すでに欧州各国リーグはもちろん、カタールW杯でもスタジアムは以前の熱狂を取り戻していた。正直、うらやましかったよね。お客さんが生み出す会場の雰囲気もプロスポーツの大きな魅力。拍手をするだけでは物足りない。これまではカラオケ店に行って、歌うなと言われていたようなものだ。また行こうという気にはならない。

選手にとっても、声出し応援の解禁はプラスしかない。コロナ初期には無観客で試合をやっていたけど、モチベーションの作り方が難しかったと思う。あれは僕の日本リーグ時代の試合みたいだった。無観客じゃないけど、お客さんが全然いなくて、監督がベンチから指示を出すと、相手にも観客席にも全部聞こえてしまうんだよ。

歓声がなければホームでもアウェーでも感覚的にはあまり差がなくなるし、実力以上のプレーが引き出されることも少なくなる。勝負へのこだわりみたいなものもどうしても薄れてしまう。練習試合みたいな感じだ。

その意味では、歓声だけでなくブーイングも同じ。浦和や鹿島、昔の柏やFC東京などのサポーターは、時に大きなブーイングをしたりするので「行儀が悪い」とレッテルを貼られがち。でも、選手たちはそれでプロの厳しさを感じるし、何より皆が皆、「お行儀よく」ではつまらない。

もちろん、女性も子供も安心安全に観戦できるのは、Jリーグが世界に誇る魅力だ。当然、越えてはいけないラインはあるよ。

再び古い話で恐縮だけど、僕のブラジル時代、アウェーの試合は文字通りに命懸けだった。スタジアムに着いてバスを降りると、何百人もの相手サポーターに囲まれ、「ぶん殴れ」「殺せ」と罵声を浴びせられる。そして、コワモテの応援リーダーが前に出てきたかと思うと、「落ち着け。(俺たちの応援するチームが)負けたらやればいいだろ」といった具合だ。

試合中もピッチと観客席が近いから、フェンス越しに棒で突いてきたり、花火を向けてきたりとやりたい放題。僕はポジションがウイングだったけど、サイドラインの近くでプレーしたくなかったし、副審もラインの内側を走っていたほど。時には副審が負傷し、頭から血を流すこともあった。

まあ、これは極端すぎるエピソードで、応援でも何でもないし、暴力行為は論外。当時のブラジルの環境は最悪だった。

でも、古今東西、スタジアムに来る観客の多くがストレスを発散しに来ているのも確かで、軽いやじを飛ばしたり、ブーイングをするくらいはアリじゃないかな。

話がそれたけど、あらためて今回の規制緩和はJリーグを盛り上げる大きなチャンス。集客に関して、これからはコロナを言い訳にできない。選手は今まで以上にいいプレーを見せ、クラブも今まで以上の営業努力をして、1試合でも多くスタジアムを満員にできるか。期待して見守りたい。

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