「堂安 律という生き様と、これからも夢に向かって突き進み続ける俺の決意を伝えたいと思い、この本を出しました」「堂安 律という生き様と、これからも夢に向かって突き進み続ける俺の決意を伝えたいと思い、この本を出しました」

『週刊プレイボーイ』本誌で4年半近く続く連載コラム『堂安 律の最深部』を振り返りながら、初めての書籍『俺しかいない』に込めた思いを明かす――。

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■『俺しかいない』は自分らしい言葉

いよいよ初書籍『俺しかいない』が3月20日に発売されました。

担当編集の人が刷り上がったばかりの一冊を日本から届けてくれて、発売日の少し前にドイツでこの本を手にしました。

なかなか破壊力ある表紙ですよね。めちゃくちゃパンチあると思います。この写真はカタールW杯が終わって日本に戻ってきたタイミングで撮影しました。

もともと力強い目線のポートレートとか、爽やかな雰囲気のポートレートとか、いろいろなパターンで考えていたみたいですけど、撮影していく中で、「W杯でゴールを決めた後にやっていた〝吠え顔〟も撮ってみよう」ということになったんです。

それで「シャー!」と実際に声を出して撮ったのがこの写真です。モニターでチェックしたら、ものすごく迫力があったんですよ。カメラマンやスタッフの人たちも盛り上がってくれて。もう表紙はこれだな、と直感で思いましたね。

W杯でドイツとスペイン相手にゴールを決めましたけど、日本国民の皆さんの頭の中には、ゴールを決めた後の〝吠え顔〟で俺のことを覚えてくれている人も多いはず。あまり本の表紙でこういった表情のものはないし、迫力やインパクトがあるもののほうが俺らしいかなと思います。

タイトルの『俺しかいない』は、本を出そうという話をした時点ですでに決めていました。W杯中に俺が発した言葉はメディアやSNSでいくつも取り上げられていたけど、その中で特に自分らしいなと思っていたのがこの言葉だったので。

ほかの言葉は浮かばなかったですね。「『俺しかいない』ってどうですかね?」って俺が言ったら、「うわ、それはめちゃくちゃいいですね!」って反応が返ってきました。もう、これ一択でした。

俺は昔から、「唯一無二」という言葉が好きでよく使ってきたので、それをタイトルにするのもよかったのかもしれないけど、なんかカッコつけている感じがして。

『俺しかいない』はすごくシンプルだけど強い言葉だし、小さな子でも意味がわかる。中身をよく表している言葉だと思います。このタイトルにウソはないです。

担当編集が『俺しかいない』を届けた3月12日、堂安はホッフェンハイム戦で見事に決勝ゴールを決めてみせた担当編集が『俺しかいない』を届けた3月12日、堂安はホッフェンハイム戦で見事に決勝ゴールを決めてみせた

■イメージしていたのは 矢沢永吉『成りあがり』

タイトルも表紙も迷うことなく決まったし、本の内容や方向性も迷いはなかったです。俺の生き様がいろんな人にも伝わるように、担当編集の人がしっかり考えてくれました。

実は『俺しかいない』をまとめる上でイメージしていたのは、矢沢永吉さんの『激論集 成りあがり』だったらしいです。

『成りあがり』はいろんな人から「面白いよ」「読んだほうがいいよ」と言われていて、最近やっと読んだんです。矢沢さんの生き様がカッコいいし、彼の言葉がストレートに伝わってくるんですよね。

自分が思ってもいないようなことを言ったりするのは絶対違うし、賛否両論出るのが本のあるべき姿だと思うので。45年前に発売されたものですけど、今の若い人たちにもぜひ読んでもらいたい本ですね。

『俺しかいない』も俺らしさがものすごく出ている本だと思います。同年代の20代や、もっと若い10代の人たちに読んでもらいたいし、読んでくれた人が「堂安 律らしい本だな」と思ってくれたらうれしいですね。

■やっぱり人の根っこは 変わらない

中身ももちろん自信あります。これまでに自分が語ってきたすべてのことがまとまっているので。本当に包み隠さず、本音をさらけ出して語ってきましたから。ものすごく面白いものができたと思いますよ。

あらためてこの本を読み返してみたんですけど、やっぱり人の根っこは変わらないですね。19歳の頃のインタビューもこの本には載っていますけど、今も変わらない思いを持っていますから。

ビッグになりたいという強い思いがあって、その目標を常に口に出し続けてきたからこそ、今の俺があるんだなと本気で思います。

今まで2週間に1回くらいのペースでずっと話をしてきてよかったなと思いましたね。その時々の思いがこうやってカタチに残っているというのは、今振り返ると自分にとっても大きいです。

パッとページをめくると、どれも印象深い話ばかりなので、自分で読み返しても面白いですね。

例えば、東京五輪直前に連載でしゃべったこととか。世間的には中止のほうがいい、という声が大きくて、アスリートが誰も声を上げていなかった時期に、「聖火ランナー、俺ひとりで走りますよ」と強い言葉で言っていたのを思い出します。

あと、目次に目を通して思ったのは、逆境や壁など、成功とは反対の言葉がたくさん並んでいたこと。挫折、どん底、不甲斐なさ、そういった言葉がズラーっと並んでいるのは、本当に俺らしいなと思いました。

■堂安 律というひとりの人間がどうやって人生を歩んできたのか

このタイミングで本を出すことにしたのは、やっぱり4年半、5年近くも連載を続けてきて、ようやくひとつのカタチになると思ったからです。

正直、本を出すこと自体が目的ではなかったですから。W杯で堂安 律というサッカー選手を知ってくれた人が多いからこそ、今このタイミングで、堂安律という生き様と、これからも夢に向かって突き進み続ける俺の決意を伝えたいと思い、この本を出しました。

そもそも成功者としてではなく、挑戦者として出す本なので、ここに成功体験は書かれていません。

俺はこれまでたくさん葛藤して悩み抜いてきたし、決して順風満帆の人生ではなかったです。生まれながらの天才なんかじゃないし、常に、誰かしら上の存在がいる環境に身を置いてきました。

でも、下を向いたことは、ただの一度もありません。どんな逆境でも、野心と反骨心を燃えたぎらせ、夢のために、自分を誰よりも信じて生きてきました。

この本を読んでもらった人には、ありのままの俺を知ってもらいたいし、「堂安ってこんな人間なんだ」「そんなことを考えていたんだ」と感じてもらえたらうれしいです。すでに夢を見つけた人も、まだ夢を探している途中の人も、今を本気で生きている人なら、きっと共感してもらえると信じています。

堂安 律というひとりのサッカー選手、ひとりの人間がどうやって人生を歩んできたのか――。ぜひ感じ取ってもらえたらうれしいです。

★YouTubeチャンネル『Ritsu Doan/堂安律』「表紙撮影の舞台裏」を公開中!!

●堂安 律(どうあん・りつ) 
1998年6月16日生まれ、兵庫県尼崎市出身。ガンバ大阪、FCフローニンゲン(オランダ・エールディヴィジ)、PSVアイントホーフェン(オランダ・エールディヴィジ)を経て、2020年9月にアルミニア・ビーレフェルト(ドイツ・ブンデスリーガ)へ期限付き移籍。21年には再びPSVアイントホーフェンでプレーし、22年7月にSCフライブルク(ドイツ・ブンデスリーガ)へ完全移籍。18年9月からサッカー日本代表としても活躍中。21年の東京五輪では背番号10、22年のカタールW杯では背番号8を背負った。また、地元・尼崎で実兄の憂とともに、未来の日本代表10番を育成するフットボールスクール「NEXT10 FOOTBALL LAB」を運営中

■『俺しかいない』 
集英社 定価:1650円(税込) 
たとえ批判を浴びようとも、大きな壁にひるむことなく、逆境を楽しみ、常に自分を信じ続けることができるのはなぜか――。挫折や葛藤を乗り越えて揺るぎない自信を身につけ、W杯という夢舞台で圧倒的な輝きを放つまでの軌跡を克明に記した、待望の初書籍。日本代表デビューを飾った2018年から4年半以上続く本誌連載コラム『堂安 律の最深部』で赤裸々に明かしてきた本音のほか、これまでのサッカー人生で最大の挑戦となったカタールW杯の舞台裏、新生日本代表のリーダーになる覚悟と決意など、初公開の情報をたっぷりと収録