大谷のエグいスライダーにトラウトのバットが空を切り、日本が世界王座を奪還!! 出来すぎなストーリーで幕を閉じたWBCの余韻にまだまだ浸りたいですよね? 侍ジャパンと関係の深い方々に、超個人的な視点からMVPとベストシーンを選んでいただきました! 今回は通訳としてWBCに09年から4大会連続参加している小島克典さん!【WBC侍ジャパン 俺のMVP&ベストシーンその5】
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【MVP】大谷翔平
【ベストシーン】河野徳良氏率いるメディカルチームの奮闘
WBCはMLBが主催する大会なので、どの言語も一度英語に翻訳する必要があり、僕は通訳として09年大会から参加しています。今大会で感じたのは、各国とも熱の入れ方がこれまでとは全然違うことです。監督や選手たちのコメントも素晴らしかった。
チェコのパベル・ハジム監督は精神医学者ですからコメントも哲学者のよう。中国から初勝利を挙げた試合後には「この1勝がヨーロッパの野球の未来を明るく大きく前進させた」とか、言葉の熱量がとにかく高く、他国の監督のコメントもつられて熱を帯びてきました。国を挙げて戦うとはこういうことか、と。
プレーではやはり、あの冷静な大谷翔平選手がヘルメットを飛ばして激走したり、帽子やグラブを投げ捨てたりと感情をあらわにしたことで、WBCがそれだけの大会であると認識させられました。それも大会の歴史が積み重ねられてきたからこそでしょう。
なお日本代表のベンチ裏では、その大谷選手も使う「HYPERICE(ハイパーアイス)」という空気を膨らませて疲労を取る最新のマシンが導入されていました。
WBCは選手を無事に所属チームへ返すことが最重要なので、かなり細やかなケアが行なわれ、各選手の状態が共有される。各球団からトレーナーが派遣される場合もあり、情報の取り扱いは極めてセンシティブです。
そういったマネジメントの音頭を取って非常にうまくやっていたのが、侍ジャパンのメディカルチームを率いる河野徳良(こうのとくよし)さんです。
メディカルスタッフミーティングを毎日行ない、日本のためという大義の下で、各球団が「このサプリは疲労回復にすごくいい」といった秘密にしておきたい必殺技のような情報を共有していたことも。
ダルビッシュ有投手や大谷選手を中心に、選手同士では「サプリはこういうものがいい」といった情報を共有していましたが、トレーナー陣の連携も素晴らしかった。これも侍ジャパンが本当の意味でワンチームになったことの表れだったのではないでしょうか。
●小島克典(Katsunori KOJIMA)
1973年生まれ。米ジャイアンツ、メッツで新庄剛志(現日本ハム監督)の通訳を務め、WBCには09年から4大会連続参加