宇田川(左)、高橋奎二(右)と話しながらランニングするダルビッシュ(中)宇田川(左)、高橋奎二(右)と話しながらランニングするダルビッシュ(中)
大谷のエグいスライダーにトラウトのバットが空を切り、日本が世界王座を奪還!! 出来すぎなストーリーで幕を閉じたWBCの余韻にまだまだ浸りたいですよね? 侍ジャパンと関係の深い方々に、超個人的な視点からMVPとベストシーンを選んでいただきました! 今回は宮崎合宿から取材を続けたスポーツライター・高木遊さん!【WBC侍ジャパン 俺のMVP&ベストシーンその6】

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【MVP】ダルビッシュ有 

【ベストシーン】宇田川会

今大会の侍ジャパンの特徴は、大きなミスや絶不調のまま終わった選手が誰ひとりいなかったことです。お世辞ではなく「誰ひとり必要ではない選手はいない」チームでした。

これは、メジャーリーガーでありながら宮崎合宿初日から参加したダルビッシュ有投手の献身が非常に大きかったと思います。その象徴が合宿最初の休日に行なわれた「宇田川会」でしょう。

当日の日中に出た「宇田川優希が苦悩している」という記事に大きな反響があったからこそ、ダルビッシュ投手は投手陣による懇親会を「宇田川さんを囲む会」と表現し、集合写真で中心に立たせました。

前日、記事を書いた記者と私のみで宇田川投手を囲んでいましたが、表情は本当に暗かった。大会使用球への対応の苦慮はもちろんのこと、チームになじめていない旨の発言を聞いて不安になったものです。

ところが「宇田川会」翌日の第2クールから宇田川投手の表情は明るくなり、連鎖するように球もどんどんよくなりました。獅子奮迅(ししふんじん)の活躍だった昨年の日本シリーズを彷彿(ほうふつ)とさせるレベルにまでよみがえっていき、WBC本大会でもひとりの走者も出しませんでした。

宮崎合宿から取材を続けたスポーツライター・高木遊さん宮崎合宿から取材を続けたスポーツライター・高木遊さん
また準決勝以降、投手陣はメジャーリーガーだらけのメキシコ、メジャーリーガーしかおらずオールスター軍団と言ってもいいアメリカに対して臆することはまったくなかった。

これはダルビッシュ投手が「友達感覚で」と、若い投手陣とも積極的に交流を図り、技術面だけでなく精神面を含め、さまざまなものを有形無形で授けてきたことも大きいでしょう。

最後に、過去最高の盛り上がりを見せたWBCですが、宮崎合宿からその機運を高めたのは積極的にメディア対応をし、サインなどのファンサービスを欠かさなかったダルビッシュ投手のおかげにほかなりません。

あえて主将を置かなかった今大会の侍ジャパンですが、栗山英樹監督が大会中に「ダルビッシュジャパンと言ってもいいほど」と語ったとおり、まさに八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍でした。

●高木遊(Yu TAKAGI)
1988年生まれ。侍ジャパン(ジュニア世代からトップチームまで)やアマチュア野球(特に大学)などを中心に取材・執筆