WBCでフル稼働したソフトバンク・近藤はFA移籍初年度。心身の疲労は大丈夫なのかと勝手に心配してしまう WBCでフル稼働したソフトバンク・近藤はFA移籍初年度。心身の疲労は大丈夫なのかと勝手に心配してしまう

2月下旬以降、世間の注目がWBCに集中する中でも、コツコツと各球団の動向を日々チェックし続けた記者の皆さんが集結! "WBC後遺症"の心配や4者4様の新監督のキャラ、期待の新戦力、そして出しどころがなかった小ネタまで、全部ここで放出していってください!!

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■WBC「登板1試合組」は調整不足が否めないはず

スポーツ紙デスク 久々に声出し応援も復活して、プロ野球が帰ってきた!という感じの開幕。それにしても、WBCはすさまじい盛り上がりだったね。

記者A 大谷翔平(エンゼルス)は別格でした。侍ジャパンというよりWBC全体を通じて圧倒的な主役。

記者B その大谷が3年後の次回大会への参加希望を公言したことは、侍ジャパンの次期監督人事にも少なからず影響を与えそう。

記者C 栗山英樹監督は「契約が切れたら終わり」と強調しつつ、「野球界への恩返しのためになんでもやる」と、意味深な表現も。

デスク メディアの半分は「勇退」、半分は「続投の意思あり」と見解も分かれているけど、実際はどうだろう?

 日本ハム監督時代にも「今年で辞める」が口癖でしたよね(笑)。

 ただ、NPB(日本野球機構)側が続投を望むかどうかは微妙。組織人から見ると、栗山監督は〝独走プレー〟が多いから。

 昨夏、渡米して大谷やダルビッシュ有(パドレス)に直接会った件もそうです。本来ならNPBから所属球団に打診し、条件などを煮詰めて内諾を取ってから、初めて選手本人に相談するのが筋。

デスク 今回は問題にならなかったけど、所属球団が「頭越しに勝手に交渉された」とヘソを曲げるリスクもある。

 NPBからすれば、危ないところを自分たちがなんとか着地させたという感覚もあるかもしれません。ただ、今の状況でそれを言っても世間の反感を買うだけ(笑)。

 次も大谷を確実に呼びたいなら、栗山監督以上の適任者はいないだろうし。

 後任候補には工藤公康前ソフトバンク監督や高橋由伸前巨人監督らの名前も挙がっていますが、あんなドラマで世界一になった人の次は引き受けたくないでしょう(苦笑)。

デスク ところで、過去にはWBC後のシーズンで不調に陥る代表選手が多かった印象もあるけど。

 偶然ではないですよ。投手なら大会期間中の投げ込み不足、打者なら振り込めなかった影響が出てしまう。開幕直後につまずいて、そのままズルズルと......。

WBCでは主に代打待機となり、調整不足が懸念される西武・山川。帰国直後のオープン戦では元気に「どすこい」していたが、さてどうなる WBCでは主に代打待機となり、調整不足が懸念される西武・山川。帰国直後のオープン戦では元気に「どすこい」していたが、さてどうなる

 その観点から言うと、心配なのは打ち込んで調子を上げていくタイプの西武・山川穂高。帰国後はマシンにかじりついているようだけど。

 ソフトバンクの周東佑京や巨人の大城卓三については、大会前から所属チームの監督も腹をくくっていたようです。代表ではレギュラーじゃないから、練習不足・実戦不足で帰ってくるだろうと。

デスク 投手でも登板機会が1試合しかなかった楽天の松井裕樹やオリックスの宮城大弥、ヤクルトの高橋奎二らは調整不足が否めないはず。

 打者ではWBCで絶好調だった選手が、シーズンに入った頃に調子の下降線を迎えてしまうパターンもあります。

 ソフトバンクにFA移籍した近藤健介なんて、WBCでほぼフル出場し、帰国しても新しいチーム。相当疲れていると思う。

 ヤクルトの村上宗隆はどっちに転ぶか。WBCではジェットコースターのように乱高下して(笑)、心身共にくたくたでしょうけど、大谷を間近で見て「上には上がいる」とスイッチが入った気も。

デスク 巨人の岡本和真もWBCで目立ったけど、彼は天然だから関係ないかな(笑)。

 それと、今まさに伸び盛りの若手組は、WBCをステップにしてグンとステージが上がるかもしれません。

WBC決勝のトラウト&ゴールドシュミット連続斬りで名を上げた中日・髙橋 宏。先発ローテを守れれば結果はついてくるはず WBC決勝のトラウト&ゴールドシュミット連続斬りで名を上げた中日・髙橋 宏。先発ローテを守れれば結果はついてくるはず

 すさまじい重圧の中、アメリカ戦で好投した中日の髙橋宏斗なんかは今季、ものすごい活躍をしそう。

 「宇田川会」で有名になったオリックスの宇田川優希は、まだ新人王の資格がある。大本命でしょうね。

ダルビッシュの愛あるイジりで知名度爆上げのオリックス・宇田川。実は新人王の資格をまだ有している! ダルビッシュの愛あるイジりで知名度爆上げのオリックス・宇田川。実は新人王の資格をまだ有している!

■広島・新井監督は選手思いのガラケー派

デスク WBC組以外の最注目ポイントは、11年ぶり現場復帰の阪神・岡田彰布新監督。

 野球を見る〝眼力〟は健在ですよ。佐藤輝明に対してだったと思いますが、守備でのちょっとしたステップのミスをズバッと指摘したり。

 投手の配球に関しても、話し出したら止まらないほど豊富な理論がある。

 悪気のないストレートな物言いも健在です。記者に対して「だったらおまえ、やってみろや!」とか(笑)。

岡田阪神の今季のスローガンは「A.R.E.」。略語という建前だが、誰がどう見ても「アレ」ありきだ 岡田阪神の今季のスローガンは「A.R.E.」。略語という建前だが、誰がどう見ても「アレ」ありきだ

デスク 面白いのは、球団が今季のチームスローガンを「A.R.E.」にしたでしょ。

 元ネタは、かつて「優勝」をズバリ口にしたくない岡田監督が「アレ」と言い換えていたことですよね。

 阪神球団がこんなに堂々とイジって大丈夫なんだ、っていう(笑)。

 本人も面白がっているみたいだし、年齢的にも柔らかくなったのかなあ。

広島・新井新監督の地元人気は絶大。JR西日本「カープ応援ラッピングトレイン」に監督の姿がデザインされるのも初だとか 広島・新井新監督の地元人気は絶大。JR西日本「カープ応援ラッピングトレイン」に監督の姿がデザインされるのも初だとか

デスク 新井貴浩新監督が就任した広島は?

 ムードは完全に変わりましたね。ベンチから選手の声がよく聞こえる。菊池涼介會澤 翼といったベテランも、選手同士だった頃の関係とは違ってきちんと新井監督を立てています(笑)。

 新井監督は「チームは家族」とか「好き嫌いで起用しない」と宣言し、選手の悪口を決して言わない。ただ、それで実際にチームがあれだけ明るくなると......前任者の立場がない。

 問題は戦力的にほとんど上積みがないことです。シーズンに入って負けが込んでも、同じようにやれるかどうか。

デスク いや、今季は大丈夫だと思うよ。カープファンは新井政権が実現しただけで満足、温かく見守るぞという雰囲気だから。

 ファンだけじゃないですね。マスコミも、松田 元オーナーも。愛され監督!

 そういえば新井監督って、若いのにガラケーなんだよね。だからショートメールは使うけど、LINEとは無縁(笑)。

 連絡は基本的に通話。首脳陣はもちろん、時には選手とも電話で話すから、すれ違いや齟齬(そご)がないとか。

デスク 西武の松井稼頭央新監督も、2軍監督、1軍ヘッドコーチを経て、満を持してという感じ。

 渡辺久信GMの長年の構想がようやく完成を見ました。

オリックスの森はWBC出場を辞退し移籍1年目のシーズンに照準を合わせてきたが、守備面の負担も大きく過度の期待は酷か オリックスの森はWBC出場を辞退し移籍1年目のシーズンに照準を合わせてきたが、守備面の負担も大きく過度の期待は酷か

 ただ、就任していきなり正捕手兼主軸打者の森 友哉がFAでオリックスに流出したのは気の毒。守備の要・源田壮亮もWBCで右手小指を骨折しちゃったし......。

 どっちも埋め切れる穴じゃない。全員でなんとかやっていこうという雰囲気ですね。采配的にもサプライズをするタイプじゃなさそうです。

WBC投手コーチ業で1ヵ月チームを留守にしたロッテ・吉井新監督。さすがに帰国後のメディア対応はほぼなく監督業に戻った WBC投手コーチ業で1ヵ月チームを留守にしたロッテ・吉井新監督。さすがに帰国後のメディア対応はほぼなく監督業に戻った

デスク そしてロッテの吉井理人新監督は就任早々、WBCの投手コーチ業で1ヵ月もチームを離れた。前代未聞だ。

 大会期間中は日本にいてもアメリカにいても毎日、福浦和也ヘッドコーチらとリモート会議を開いてチームの状態を把握していました。

 WBCだけでも相当消耗するのに、本当にお疲れさまです。好材料は、佐々木朗希を自分の手元でチェックし続けられたことかな。

 しかし攻撃面など、まだチームを把握し切れていない部分は多いでしょう。当初は福浦ヘッドが攻撃のサインや指示を出し、吉井監督は投手部門に専念ですかね。

デスク しかし、ロッテは井口資仁前監督に続き、またメジャー経験者の指揮官。西武の松井新監督も、セ・リーグ連覇中のヤクルト・髙津臣吾監督、楽天の石井一久監督も。

 今後もトレンドになっていきそうですね。現役でいえばヤクルトの青木宣親、広島の秋山翔吾あたりは将来的に監督をやっても違和感なし。

 日本ハム時代にコーチとしてアメリカに派遣された経験のあるオリックスの中嶋 聡監督も含め、共通点は選手の自主性を尊重して、上から目線で指示しないこと。

 2軍に降格させる選手とも対話して納得させ、再昇格の具体的な時期や条件を示すケースが多いとか。まさにメジャースタイルです。

■オリックスはなぜ速球派を量産できる?

移籍1年目で開幕1軍を勝ち取ったオコエ。巨人の下馬評が高くないシーズンだけに、活躍すればチームにとっても大きい 移籍1年目で開幕1軍を勝ち取ったオコエ。巨人の下馬評が高くないシーズンだけに、活躍すればチームにとっても大きい

デスク ところで、キャンプから元気だと評判なのが、初の「現役ドラフト」で楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉。プロ7年目でついに覚醒か?

 「一度はクビになった身」と自覚してオフから練習を積み、打撃フォームも大幅に変えました。

 巨人は若返りの時期だから、周囲のギラついた空気にも刺激を受けたみたい。

 とはいえ1軍に定着するのは簡単じゃない。打てなくなる時期もあるでしょうし、2軍落ちもあるかもしれない。それでも今の気持ちを大事にできれば......。素質は誰もが認めていますからね。

デスク それと、高松商業出身のドラ1ルーキー・浅野翔吾。やや小粒な感もあるけれど、期待の星だよね。

 巨人が甲子園のスターをドラ1で獲得できたのは久しぶりじゃないですか?

 岡本(14年ドラフト)以来かな。

 開幕2軍スタートとはいえ、原 辰徳監督もうれしいんでしょうね。浅野の話題が出ると機嫌がいい(笑)。

デスク 阪神では浅野と同じくルーキーの森下翔太。あの力強いスイングは魅力だ。

 岡田監督が開幕スタメンに抜擢(ばってき)するんですから大したものですよ。

 ただ、阪神ではなぜか入団時に一番輝いて、だんだん沈んでいく選手が多い......。

 ちょっと活躍するとチヤホヤされる環境なんですよね。

デスク オリックスは吉田正尚(レッドソックス)の穴を埋め切れるかな?

 FAで森を獲(と)りましたけど、移籍1年目の捕手は守備面の負担も大きい。そこまで期待するのは酷です。

 むしろ、吉田の穴は投手陣が埋めるかもしれない。

 得点が減っても、それ以上に失点を減らすと?

デスク 確かに、オリックスは毎年いい投手が出てくる。今季の注目は山下舜平大

 宮城の調整遅れもあるにせよ、3年目右腕の1軍初登板が開幕投手とは! 中嶋監督も相当彼を買っています。

 山下はオープン戦で最速158キロを記録したけど、オリックス投手陣の速球派の層の厚さは異常。

 WBCに追加招集された山﨑颯一郎も160キロ。宇田川も160キロ。

デスク オリックスはドラフト指名してから1軍で使うまでの育成システムが確立されているんだよね。

 筋力や体力のデータを管理して、今年は育てる時期だとか、もう1軍で使っていいとか判断しているそうです。

 日本ではまだまだ監督やコーチの感覚でそれを決めているチームも多いけど、オリックスが結果を出したことで、他球団も追随するかもね。

 組織内のしがらみやパワーバランスもあるから、すんなりいく球団ばかりではなさそうですが(苦笑)。

デスク WBC熱の余韻もあって、今季ブレイクする選手は例年以上に人気も出そうだね。まずはスタートダッシュに成功するチームや選手に注目しよう。