将来的にメジャーでの活躍を期待できる選手、リーグを代表するレベルになりそうな選手、ひと皮もふた皮もむけそうな選手、復活劇に期待がかかるベテラン選手は誰だ!?

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■メジャーも狙える逸材! 今季期待の大化け投手

WBCの熱狂のまま始まったプロ野球。一方で、オープン戦をチェックしきれず、開幕後に「こんな選手いた?」「こんなに伸びた?」と驚いている人も多いのではないか。

そこで、昨季と比べて「進化」や「レベルアップ」、さらには「大化け」した選手について、プロ選手からの支持も厚い野球評論家のお股ニキ氏に分析してもらおう。

お股ニキ氏は2021年シーズン開幕直後の本誌特集で阪神・青柳晃洋投手に対して、「今年は13勝以上を期待したい」と語ったところ、見事に的中(青柳投手は自己最多13勝で最多勝に輝いた)。今年はどんな選手を挙げてくれるのだろうか。

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1軍登板経験なしで開幕投手に抜擢された20歳の190㎝右腕、オリックス・山下 1軍登板経験なしで開幕投手に抜擢された20歳の190㎝右腕、オリックス・山下

まず投手では、オリックスの開幕投手に抜擢(ばってき)された20歳の190㎝右腕、山下舜平大の名前が挙がった。

「150キロ台後半の高回転ホップ型ストレート、高校時代から得意なカーブに加えて、フォークも習得。また、大谷翔平(エンゼルス)の日本時代のようなフォームとリズムに加えて、ショートアームにしたことも奏功し、ポテンシャルが開花しました。今季は中10日で休ませながら、5回10奪三振無失点のような投球を重ねそうです」

ショートアームとは、テイクバックが自分の体の後ろに隠れるくらい小さい投げ方を意味する。

「打者からするといきなり球が来る印象のはず。ストレートはすでに世界屈指のジャスティン・バーランダー(メッツ)級でなかなか対応できないと思います。経験を積んで投球を学んでいけば、山本由伸のポスティング移籍と入れ替わる形で新エースになるでしょうし、将来的にメジャーでの活躍も狙える投手です」

高回転ストレート、フォーク、カーブ、カットボール、スラッターも操る王道型の阪神・才木 高回転ストレート、フォーク、カーブ、カットボール、スラッターも操る王道型の阪神・才木

将来的な大化け度で抜きんでるのは山下だが、ほかにもメジャーを狙える逸材がいる。山下と同じ長身(189㎝)で、高回転ホップ型ストレートを操る才木浩人(阪神)だ。

「高速ストレート、フォーク、カーブに加え、山下にはないカットボールやスラッターも操れる王道型です。トミー・ジョン手術明けの昨季は中10日間隔で防御率は1.53。今季は中6日でフル回転できれば、12勝以上&防御率1点台も狙えます。WBC強化試合で大谷に特大アーチを打たれ、負けん気に火がついたこともいいですね」

WBCを経験したことで「精神的にも成長し、さらにワンランク上がった」と評するのは戸郷翔征(巨人)だ。

「力感のない独特の腕の振りで、高めにストレートを投げ込めるように。その結果、得意のフォークとのコンビネーションも威力を増しています。スライダーも良くなり、カウント球にも苦しまなくなった。安定して7回2失点できる投手から、いよいよ菅野智之を超え、巨人のエースになるシーズンと言えそうです」

そして、開幕から好投を続ける髙橋光成(西武)の名も。

「メジャー挑戦の夢をかなえるべく、フォーム改造で球速を確実に上げてきました。総合力や変化球の質、制球力を維持したままパワーアップした印象で成長の仕方は理想的。三振も増えるはずです」

■リーグ屈指の存在へ! セ・パ注目の逸材たち

まだまだ投手の大化け候補は多い。ここからはセ・パに分けて球界新エース候補たちを見ていこう。セ・リーグ勢では阪神の投手陣がずらり。先発陣では西 純矢だ。

「昨季、投球フォームをショートアーム気味に変更して覚醒。WBC強化試合で侍ジャパンを相手に三振を奪いまくったスプリット中心のパワーピッチも可能ですが、さまざまな球種を駆使した投球術にも優れています。やや力任せになりやすく、疲れやすい点を克服できれば、将来的なメジャー挑戦も見えてきます」

阪神救援陣では石井大智加治屋蓮の名も挙がった。

「石井は昨季、防御率0.75。フォーシームの指標もトップクラスで、得意のシンカーに加えてフォークを習得して、より絶対的に。球質や制球力、投球フォームは素晴らしく、大事な8回を任せられる力はあるので、あとはその力を出し切れるかどうか。一方の加治屋もフォークやカットの軌道や制球力が安定しています」

トミー・ジョン手術を経て、888日ぶりに勝利を挙げたのは平良拳太郎(DeNA)だ。

「もともと投球術や制球と技術のある投手でしたが、今季はより高めのストレートやインローに沈む変化球などを駆使して空振りが奪えるように。登板間隔を空けて大事に起用すればいい結果を残しそうです」

左腕では中日の開幕投手・小笠原慎之介と、巨人の新外国人フォスター・グリフィンを推す。

「小笠原は昨季に続き、防御率2点台、2桁勝利できる力はあります。もともと質の高いカーブとチェンジアップに加え、制球と再現性も良くなってきた。肘の手術で離脱した大野雄大に代わり、左のエースになる年だと思います。

グリフィンはカットボールやカーブ、右打者のインコースへの制球がいいです。広島で活躍したクリス・ジョンソンのような投球が期待できそう」

続いてパ・リーグ勢。まずは先日、あわやノーノーかという快投劇を演じた今井達也(西武)について。

「個性的な髪型以上に投げる球はトップクラス。これまで安定感は皆無で日によってフォームも異なっていましたが、今季は再現性を身につけてきた。もともと変化球の感覚は天才的で、リーグを代表するレベルになれる存在です」

そんな今井同様、2試合を終えた時点で2勝&防御率0.00の安定感を誇るのは藤井皓哉(ソフトバンク)だ。

「一度広島を戦力外になり、独立リーグから這い上がり、育成から覚醒した投手です。昨季は伸びるフォーシームとお化けフォークのようないわゆる『フォースラ』とスライダーを駆使し、リリーフで好成績を残しました。

今季は千賀滉大(メッツ)の穴を埋めるべく先発転向。6回程度でスタミナ切れを起こさないかが心配でしたが、〝程よい全力〟を1イニングずつ積み重ねていく感覚をつかんだようです」

ほかに、気になる存在として、西武の救援陣から大曲 錬佐藤隼輔羽田慎之介の名前が挙がった。

「平良海馬の先発転向でその穴が心配されましたが、若手の成長で十分に埋められています。大曲と佐藤は球速がアップし、かなりいい。1軍デビューはまだですが、羽田は191㎝、最速155キロ前後の剛腕左腕で将来が楽しみなポテンシャルを持っています。まだ経験・技術不足で2軍が主戦場ですが、名前を覚えておきたい投手です」

新人からもセ・パひとりずつピックアップ。セでは吉村貢司郎(ヤクルト)を推す。

「まだ本来の力を出せていませんが、軽めの力感、独特の『振り子投法』から、質の高いストレート、スライダー、カーブ、フォークを操ります」

一方、パ・リーグでは金村尚真(日本ハム)を推す。

「テイクバックが小さく、力感のない再現性あるフォームでコントロールも安定。すべての球種が必要な変化量でキュキュッと曲がる上に、ストレートはビシッと来る。データだけでは表現しようのないキレ味があります。宇田川優希(オリックス)とともに新人王有力候補のひとりです」

■ベテラン勢の復権も! 野手期待の大化け候補

ここからは野手の大化け選手を見ていこう。真っ先に名前が出たのは昨季開幕直後の不運な大ケガから復活した栗原陵矢(ソフトバンク)だ。

「内野も外野も捕手もできる超優秀なユーティリティ選手でしたが、オフに打撃がパワーアップして真の中軸レベルになりました。今季は4番・サードで固定。1年間レギュラーで見るのが楽しみです」

そんな栗原とオープン戦で本塁打王争いをした日本ハムのふたり、万波中正清宮幸太郎も飛躍を見せている。

「万波はオフにスイングを改善。アイビジョントレーニングを行なうなどして着実にレベルアップしています。清宮はもともとポテンシャルが一級品で天性の打球角度を持っているのに点でしかとらえられていなかった。でも、今季はスイングに柔らかさが出てきています。サードの守備でもスローイングの良さを見せて、起用の幅も増えています」

また、「進化」という意味とは異なるが、ベテランの復活劇もしっかり押さえたい。まずはセ・リーグ打率1位を争う秋山翔吾(広島)だ。

「西武最終年からやや落ち始め、アメリカではやはり苦労しました。日本に復帰した昨季もあまりいい状態ではなかったですが、今季は西武で全盛だった頃のようなフォルムが戻っており、レフト方向への本塁打が出るなど、高打率と長打を期待できる形に戻りつつあります」

もうひとり気になるベテランは中田 翔(巨人)だ。

「紆余曲折ありましたが、昨季後半から好調を維持。スイングがコンパクトに鋭く回転できているので長打力を発揮できます。

ただし、ベンチの方針なのか、走者がいると併殺を恐れて反対方向へのチームバッティングを無理やりしてしまっている印象です。これがなければ、打率2割7分、本塁打29本くらいの力はあると思います」

最後に、境遇が変わったことで本領発揮している巨人・オコエ瑠偉の名前も挙がった。

「オフの打撃改善でスイング軌道が良くなり、開幕から1番・レフトに定着。巨人に来て後がなくなり、注目される環境が良い結果を生んでいるのかもしれません。あとはケガなく1年を乗り切る体力があるかどうか」

■〝神の領域〟を凌駕!? 佐々木朗希の可能性

最後に、日本にいる「本物のメジャー選手」にも触れておきたい。まずは、元メジャー最多セーブ投手、ロッテからソフトバンクに移籍したロベルト・オスナだ。

「メジャー屈指の投手陣をそろえるアストロズで抑えを務めた人物ですから、実力は折り紙付き。軽く投げても球がビシッと来る上に制球力は抜群。ロッテ時代の映像では、20m先にあるペットボトルを狙って一発で当てていましたから。まさに神の領域です」

そしてもうひとり、DeNAに電撃入団したサイ・ヤング賞投手、トレバー・バウアーを外すわけにはいかない。

「技術的にはダルビッシュ有(パドレス)と同格以上。DV騒動で出場停止になり、2年近く実戦から遠ざかっていることによる試合勘、スピードのみが懸念点でしたが、2軍戦で本気を出したら155キロ。低いリリースポイントから沈み込んで投げてくるのでさらに浮き上がって見える。あとはケガなく、本気でやれるかどうか」

昨年、完全試合を達成したロッテ・佐々木。「次元がさらに違ってきた。世界でもここまですごい投手はいない。何回もノーヒットノーランをしそうな勢い」(お股ニキ氏) 昨年、完全試合を達成したロッテ・佐々木。「次元がさらに違ってきた。世界でもここまですごい投手はいない。何回もノーヒットノーランをしそうな勢い」(お股ニキ氏)

そんな〝神の領域〟ともいえるふたりを凌駕(りょうが)する存在なのが、ロッテの佐々木朗希だ。完全試合達成から1年がたった今の姿を、「次元がさらに違ってきた。世界でもここまですごい投手はいない」と絶賛する。

「僕から言わせると大谷翔平は〝技巧派の最高峰〟で、佐々木は〝速球派の最高峰〟。体も太くなってどっしり感が出てきたことで、球速も162キロくらいで安定。ダルビッシュ直伝のスライダーもいい。

あとは1試合を通じたスタミナ、そしてシーズンを通じたスタミナだけが課題です。何回もノーヒットノーランをしそうな勢いですね」

まさに日進月歩のプロ野球。次のWBCで主役になるような選手の登場を大いに期待したい。