昨季は得点ランキング2位となり、カタールW杯の日本代表メンバーに追加招集。相手のマークが厳しくなった今季も得点ランキング上位に名前を連ねている。森保ジャパンでの活躍も期待される23歳のストライカー・町野修斗(まちの・しゅうと)を直撃した!
* * *
■「気づいたら4点取っていた(笑)」
プロ5年目の昨季、13得点を挙げてブレイクした湘南ベルマーレの町野修斗。カタールW杯の日本代表メンバーに追加招集されると、今年3月に再スタートした森保ジャパンにも名を連ね、次期エース候補として期待を集めている。
身長185㎝の体躯(たいく)を武器に右足、左足、頭と、どこからでも点の取れるストライカーは、いまJリーグで最も旬な選手のひとりだ。
――今季は11試合を終え、チームは2勝5分け4敗(暫定14位)ですが、自身は6得点をマーク(得点ランキング3位タイ)。手応えは?
町野 チームとしては(第9節まで勝ちなしだった)昨季に比べればいいですけど、引き分けの中には勝っていてもおかしくない試合がありました。それをいかに勝ちに持っていけるかが大事。
個人としてはチャンスが増えてきていますし、シュート本数も悪くないですけど(1試合平均シュート数3.5本はリーグ2位)、もう少しシュート精度を上げたいです
――第6節のガンバ大阪戦では前半だけで4得点の大爆発。
町野 フィニッシュはパーフェクトに近かったですし、初のハットトリックだったので、うれしかったです。ただ、割と簡単なゴールが多く、気づいたら4点取っていたというか(笑)。そのG大阪戦を含め、まだ3試合でしか点が取れていないのは課題です。
――開幕前には「得点王になる!」との発言もありました。
町野 FWなら得点王を狙っていない選手はいないんじゃないですか。昨季は自分の可能性を広げられたシーズンでしたし、自分にはまだまだ伸びしろがあると思っています。『昨季を超えるシーズンにしたい』と思ったら、得点王はわかりやすい目標かなと。背番号の18(点)くらいは取りたいです。
昨年7月の東アジアE-1選手権で日本代表デビューを果たした町野。だが、追加招集されたカタールW杯では、チームがドイツやスペインに勝利してベスト16に進出した中、出場機会はなかった。
――追加招集されたときは、どんな思いでしたか?
町野 うれしさはありましたけど、(ケガで離脱した)中山雄太選手がサイドバックだったので、『えっ、俺?』と驚きました。
――チームが躍進する一方、自身はベンチで過ごす時間が続き、難しさもあったのでは。
町野 モチベーションが下がるとか、試合に出られずふてくされるとかはまったくなかったです。むしろ、海外組の選手たちと毎日一緒に練習ができ、刺激だらけだったというか。
もちろん、試合に勝った後、宿舎に戻ると悔しさがこみ上げてくることはありましたし、その思いは1試合ごとに倍、倍に大きくなっていたのは確かですけど。
――決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では、出場の準備をしていたそうですね。
町野 アップをしておくようにと言われていましたけど、(結果的に出番がなかったのは)しょうがないです。正直、予選も出場していないし、本大会にサプライズ的に呼ばれた僕が、試合に出てどういうプレーをできるかは明確ではなかったと思います。
そういう状況では監督も使いづらい。だから、やっぱり予選から戦うことが重要で、まず代表の常連になることでチャンスは広がるのかなと感じました。
――海外組の選手とは、これまであまり交流はなかったと思います。チームにはうまくなじめましたか?
町野 あまり話すのがうまいほうではないので、昨年9月の欧州遠征のときはなじめず終わりました。でも、W杯のときは顔がデカいことをイジってもらって溶け込めました(笑)。末っ子だし、先輩が多いのはよかったです。
カタールW杯での日本代表は、ボールを奪ってからの素早いカウンター攻撃でジャイアントキリングを起こした。
だが、2026年W杯(カナダ、メキシコ、アメリカの3ヵ国共同開催)に向け、森保一監督は「よりボールを握りながら主体的に攻撃する」スタイルを目指したいと公言し、町野は新体制2戦目となった3月28日のコロンビア戦に先発出場している。
――前線でのポスト役も巧みな町野選手にとっては、より持ち味を発揮できそうな戦い方にも思えます。
町野 新体制になって最初の活動に呼んでもらえたことは大きかったですし、コロンビア戦で前半のみですけど出場できたのはよかった。先制点の場面にもうまく絡めましたし。
3年後の次のW杯までこの状態を維持するのが難しいことは覚悟していますけど、1年前までは森保監督の眼中にも入っていなかったのに、いまは常に見てもらえる存在にまではなれた。そう考えればチャンスはあるし、FWのひとつの選択肢として選んでもらえるように、結果にこだわってやるだけかなと。
――代表に入るようになって何か変化はありましたか?
町野 街で声をかけてもらえるようにはなりました。まあ、ほぼ(地元の)平塚ですけどね(笑)。Jリーグでは、対戦相手が意識的にマークしてきているのは感じます。そのときはうまく味方の選手を使えたらと考えています。
――ストライカーには「俺にボールをよこせ」というエゴの強い選手が多い印象ですが、町野選手は自身の性格を「空気を読むタイプ」と分析しているとおり、そうしたプレーが少ないように見えます。
町野 そういうプレーができないことはないです。でも、僕はどちらかというと周りのバランスを見てプレーするタイプ。もちろんストライカーですし、僕が点を取らずにチームが勝っても全然うれしくないときもあります。
ただ、例えば僕と味方の選手が相手GKと2対1になった場面で、味方にパスを出すことでより確実にゴールが奪えるなら、僕はシュートではなくパスを選択すると思います。
■「街を歩けないくらい人気の選手に」
町野のキャリアを振り返ると、履正社高校から横浜F・マリノス入りした18年には1試合も公式戦に出ることなく、翌年にJ3のギラヴァンツ北九州へ移籍する挫折を味わっている。
――北九州への移籍時は、どんな心境だったのですか?
町野 試合に出れば活躍できるはずという思いはありましたけど、(横浜FMでは)練習でもボール回しくらいしか参加させてもらえなくて。カテゴリーはふたつ落ちて、しかも北九州は前年にJ3最下位。プライドがなかったこともないですけど、そんなことを言ってられる状況じゃなかったですね。
ただ、移籍して久しぶりに試合に出て、あらためてサッカーの楽しさに気づけましたし、使ってもらえれば活躍できるんだということを再確認しました。
――将来は海外でのプレーが夢だそうですね?
町野 チャンスがあればイングランドとかドイツでプレーしてみたいです。W杯に行かせてもらってそうした思いは強くなりました。欧州チャンピオンズリーグでプレーできたら最高ですね。
――今年でJリーグは30周年です。幼少期の思い出は?
町野 小学生の頃、Jリーグのレジェンドマッチの前座イベントに出て、点を決めたことは覚えています。
――地元では有名な小学生だったのですか?
町野 小4のとき、三重県大会で優勝し、東海地区で3位になったんですけど、そのときは試合開始の笛が鳴ると同時にピッチ中央からドカーンと蹴る〝キックオフシュート〟で何点も決めていました(笑)。キック力だけは当時から自信がありました。
――最後に今後の抱負をお願いします。
町野 次のW杯では予選から中心選手としてプレーし、自分がベスト8進出を決めるゴールを決めたい。サッカーを知らない人にも知ってもらえるような活躍をしたいですし、街を歩けないくらい人気の選手になりたいですね。