2005年に始まり、今年で18回目となるプロ野球セ・パ交流戦が5月30日に開幕する。パ・リーグがほぼ上位を独占していた時期もあったが、実はここ2年はセ・リーグが全体成績で勝ち越している。対戦相手が変わり、流れも変わる約1ヵ月の戦い。注目しておくべきキーポイントはここだ!!(プロ野球交流戦はここを見逃すな!全3回/第1回目)
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■岡田監督は自ら試合を動かして勝ちにいく
2012~22年の交流戦(20年はコロナ禍で中止)の結果を振り返ると、ここで優勝したチームはペナントレースでもほぼ優勝か2位(優勝が6回、2位が3回)。単なる印象論ではなく、シーズン全体を見ても非常に大事な期間となっている。
また、相変わらず「パ高セ低」のイメージは強いが、21年、22年はセ・パの勝敗が拮抗(きっこう)し、見応えのある戦いが繰り広げられている。
では、現在絶好調の岡田阪神は、交流戦でも勢いを落とさず勝ちを積み重ねていけるだろうか?
「今季の阪神は、『勝つべくして勝つ』ような正統派の野球ができている。言い換えれば、これはリーグに関係なく勝てる野球です」
そう語るのは、近鉄、ヤクルト、巨人などで打撃コーチを歴任し、ヤクルト時代には故・野村克也監督の右腕として「ID野球」の構築に一役買った〝神コーチ〟の伊勢孝夫氏だ。
「例えば5月17日の中日戦。2点リードした6回、ヒットで出塁した佐藤輝明は次打者・島田海吏の初球で二盗を成功させました。状況的には絶対に佐藤輝を走らせる必要のある場面ではなかったのですが、それでも岡田彰布監督はこの試合のポイントととらえ、1点を取るためにサインを出したのです」
その後、見事に後続が佐藤輝を生還させ采配は的中。試合も3-1で阪神が勝利した。
「岡田監督は勝負どころを見逃さず、試合が動かなければ自ら動かして点を取りにいく。こうしたツボを心得た采配は、行き当たりばったりだった昨年までと大きく違う点です」
ちなみに、昨年まで盗塁はグリーンライト(走れると思えば誰でもいつでも走っていい)だったが、今季はすべて監督のサインだという。
では、交流戦のカギを握る選手は誰か。伊勢氏は主軸の大山悠輔や佐藤輝ではなく、脇役の名を挙げた。
「8番の木浪聖也ですね。今、チームで最も振れていて、7番や2番などに上げてもおかしくない打撃を見せていますが、岡田監督はあえて8番にこだわってきた。彼が打つことで、走者を置いた状態で上位の近本光司、中野拓夢らにつながる――その〝流れ〟を意識しているからです」
ちなみに、1番の近本はここまでリーグ8位の23打点、長打が少ない中野も同13位タイの19打点(共に5月23日時点。以下同)と、かなり打点を稼いでいる。これは8番・木浪の〝お膳立て〟のおかげなのだ。
「中野も成長しました。打ち方そのものは変わりませんが、がむしゃらにバットを振るだけだった昨年とは違い、狙い球を絞って打席に立っています。WBCで近藤健介(ソフトバンク)らを間近で見て影響を受けたか、あるいはアドバイスをもらったか......」
実際、今季の中野はファーストストライクを見送るケースがこれまでより増えた。これは狙い球を絞り、見極めができている証拠で、四球数も格段に増えている。
「木浪が出塁し、1、2番が中軸につないでいく攻撃ができれば、パ・リーグ相手でもいい試合になるはずです」
投手では、やはり突如としてブレイクした3年目の先発右腕・村上頌樹がパの打線に通用するかどうかが見どころ。
「村上のストレートは最速でも150キロですが、打席に入ると数字以上に速く感じるタイプ。そして何より、外角低めへの制球が飛び抜けていいのです。
『外角低めにさえ投げられればプロで飯が食える』と昔からよく言いますが、その典型ですね。好調を維持し、この特長を発揮できれば、強打者ぞろいのパ球団相手でも好投できるはずです」
ひとりの好不調に左右されづらい打線のつながり、球威に頼らない制球力抜群のエース。このあたりが好調の要因というわけだ。
ただし、最後に伊勢氏は苦笑してこう続けた。
「それでも交流戦の優勝は簡単ではない。よくて3位、4位くらいではないでしょうか。それほど今のソフトバンクやロッテ、オリックスは選手がそろっていて手ごわいです。
もちろんそれはほかのセ球団にとっても同じことなので、阪神が頑張って勝ち越し、ほか5チームはそろって負け越して結果的にゲーム差が開く――そんな予想をしています」