トミー・ジョン手術から復活した24歳のロッテ・種市はここまで防御率1.51。奪三振数でも同僚の佐々木朗希、西武・髙橋光成らとリーグトップを争うトミー・ジョン手術から復活した24歳のロッテ・種市はここまで防御率1.51。奪三振数でも同僚の佐々木朗希、西武・髙橋光成らとリーグトップを争う

2005年に始まり、今年で18回目となるプロ野球セ・パ交流戦が5月30日に開幕する。パ・リーグがほぼ上位を独占していた時期もあったが、実はここ2年はセ・リーグが全体成績で勝ち越している。

対戦相手が変わり、流れも変わる約1ヵ月の戦い。注目しておくべきキーポイントはここだ!(プロ野球交流戦はここを見逃すな!全3回/第2回目)

■そもそも初対戦は投手側が有利

セでは阪神・村上の快投が目立っているが、パでも各球団からイキのいい若手投手たちが台頭している。

大洋・横浜(現DeNA)のエースとして通算101勝を挙げ、引退後は投手コーチも務めた野村弘樹氏は言う。

「パ・リーグの若い投手たちはとにかく投げるボールがエグい。オリックスの山下舜平大(しゅんぺいた)、ロッテの種市篤暉(たねいち・あつき)、ソフトバンクの大関友久、今季から先発に転向した西武の平良海馬(かいま)らはいずれもパワーピッチャーで防御率も良く、セの打者たちは相当苦労すると思います。そもそも打者にとって、初対戦の投手は対処が難しいですから」

中でも野村氏のイチ推しはオリックス・山下。

「いわゆる"ストレートの強さ"は天下一品です。同じオリックスの山本由伸も力強いストレートを持っていますが、山下はまた違うタイプの強さ。山本が高精度のミサイルなら、山下は威力抜群な大砲でしょうか(笑)。

それに長身なので、落ちるボールも角度がある。パワフルなパの打者たちが対戦を重ねても打ちあぐねているわけですから、初対戦でとらえるのは相当厳しいでしょう。ローテの事情で実現するかどうかは不明ですが、個人的には山下と阪神・村上のマッチアップが見たいですね」

オリ・山下はプロ初登板で開幕投手に抜擢される衝撃デビュー。規定投球回未満ながらここまで防御率0.98!オリ・山下はプロ初登板で開幕投手に抜擢される衝撃デビュー。規定投球回未満ながらここまで防御率0.98!

それにしても、パでは毎年のように好投手が出てくる。野村氏は「単なる偶然ではなく理由がある」と言う。

「ドラフトで好素材を獲(と)っているのももちろんですが、パではどの球団もまず大事な基礎であるストレートを磨き、その後に応用ともいうべき変化球を投げるような育成方針を立てている印象です。どこかの球団が独自でそうしているというより、6球団がそれを共有しているかのように、毎年多くの投手が伸びてきますよね」

逆に、セではなかなかパワーピッチャーが育ちにくい土壌があるのでは、とも。

「制球力重視といいますか。それはそれで大事なことですが、やっぱり若いなら力強いピッチングも見たいですよね。そんな中でも出てきた阪神の村上は、低めのストレートに力があるからベース板の上で勝負ができるんです。

同タイプをパから探すとしたら、誰だろう......若い頃のマー君(田中将大[まさひろ]、楽天)と言ったら言いすぎかな」

では、パの剛腕投手に立ち向かえそうな打線を持つセ球団はどこか?

「今、阪神と共に振れているのがDeNAの打線です。好投手ぞろいのチーム相手でも苦にしないラインナップになっていると思いますね」

DeNA打線では、3番の宮﨑敏郎が打率4割超で三冠王も狙えるほどの絶好調。2番の関根大気(たいき)は打率3割台半ば、出塁率もリーグ3位。6番に入る桑原将志(くわはら・まさゆき)も打率3割2分台。そして4番・牧秀悟は現在セの打点王だ。

「最近は投手陣の乱れにやや苦しんでいるだけに、交流戦でなんとか踏ん張りたい。ここを5割で乗り切ってリーグ戦復帰となったら十分というところでしょう」

セのチームにとって交流戦は生き残りをかけたサバイバルだ。野村氏はこう続ける。

「開幕後は不調にあえいだ巨人が、交流戦前に調子を上げてきました。打線では坂本勇人(はやと)や丸佳浩(よしひろ)が復調し、故障離脱していた中田翔も1軍復帰と、実績十分の戦力がそろいつつある。ひょっとしたら、パにとって最も怖いのは巨人になるかもしれません」