今季の王者、クボタスピアーズのルーキーWTB木田。スピードはもちろん、子供の頃に極真空手で鍛えたフィジカルとメンタルの強さも武器 今季の王者、クボタスピアーズのルーキーWTB木田。スピードはもちろん、子供の頃に極真空手で鍛えたフィジカルとメンタルの強さも武器

5月20日、「NTTジャパンラグビー リーグワン」の2季目の決勝が行なわれた。強力FWを擁し、リーグ屈指の攻撃力を誇るクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(リーグ戦2位)が、トップリーグ時代からの3連覇を狙った堅守の埼玉ワイルドナイツ(リーグ戦1位)を17‐15で下し、初優勝に輝いた。

そして今年はラグビーワールドカップ(W杯)イヤーであり、フランスで9月8日(現地時間)に開幕するため、残りは約100日。日本代表&候補選手は6月12日から合宿を開始し、急ピッチで強化を進めていく。

そんな中、前回大会の後にブーツを脱ぎ、医師を目指す福岡堅樹さんの〝後釜〟として期待されるトライゲッターのひとりが、スピアーズのルーキーWTB木田晴斗(立命館大学出身)だ。

リーグ戦で全体2位の16トライ、プレーオフ決勝でもトライを奪ってチームの優勝に貢献。新人賞は逃したが、「ベストラインブレイカー」と「ベスト15」の2冠を獲得した、売り出し中の24歳のランナーだ。

木田のウリは、極真空手で鍛えたフィジカルと強気のメンタル。中学2年生まではラグビーと並行して空手をやっており、小学校4年時には世界ジュニア王者にも輝いた(1学年上の部門王者は那須川天心!)。

そこで培われた体幹の強さなどは、ラグビーでも十二分に生かされているという。また、日本代表では数少ない左足キッカーという点も有利に働くだろう。

大学時代から「海外でプレーしてみたい」というプロ志向で、昨春、スピアーズの新人としては異例のプロ選手として入団した。

そして今季の開幕直後、「圧倒するパフォーマンスを出せれば、日本代表に必然的に選ばれる」と明言し、見事に有言実行。さらに決勝後も、「W杯に出たいので合宿でアピールしたい!」と意気込んだ。

トヨタヴェルブリッツ4季目の髙橋は、リーグでキャリアハイの10トライ。神戸製鋼で活躍した父・晃仁と同じWTBでW杯出場を目指す トヨタヴェルブリッツ4季目の髙橋は、リーグでキャリアハイの10トライ。神戸製鋼で活躍した父・晃仁と同じWTBでW杯出場を目指す

もうひとり、〝ポスト福岡〟として耳目を集めているのが26歳のWTB髙橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)。チームは6位でプレーオフに出場できなかったが、髙橋は4季目の今季、キャリアハイの10トライを重ねて好調をキープ。スピードで勝負する、決定力の高いランナーだ。

兵庫県出身の髙橋は、伏見工業高→神戸製鋼で活躍した名WTB、髙橋晃仁を父に持つ。常翔学園(大阪)時代はまだ線が細かったが、明治大でフィジカルを鍛えてその才能を開花させ、22年ぶりの大学選手権優勝に貢献した。

ジェイミー・ジョセフHCも「福岡とは違うタイプだが『Xファクター』になりうる」と高く評価。2021年に日本代表入りし、昨年7月には地元・豊田でのフランス代表戦で初キャップを獲得した。持ち前の決定力を武器に、W杯への道を切り開きたい。

さらに、FBでもプレー可能で3度目のW杯出場が濃厚な松島幸太朗(東京サンゴリアス)、フィジカルが武器で花園ライナーズではCTBでプレーするシオサイア・フィフィタ、ひとりでもトライを獲(と)りきれるジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)らがおり、切磋琢磨(せっさたくま)しながらWTBの狭き門を争う。

ブレイブルーパス東京のリーチは、股関節のケガも治って絶好調。34歳ながら躍動し、4度目のW杯出場に向けて視界は良好だ ブレイブルーパス東京のリーチは、股関節のケガも治って絶好調。34歳ながら躍動し、4度目のW杯出場に向けて視界は良好だ

ほかに、ポジション争いが激しいのはバックロー(FL/NO8の総称)。今季のボールキャリー回数(196回)でトップに立つなど絶好調だったのが、4度目のW杯出場を狙うリーチ マイケル(ブレイブルーパス東京)だ。

実は、リーチは19年春に負傷した股関節が原因で、前回のW杯以後もなかなか調子が上がらなかった。しかし北九州の名医の下で治療したそうで、昨秋には「完璧に治った!」と断言していた。その後は日本代表戦だけでなく、リーグワンでもボールキャリー、タックルと獅子奮迅の活躍を見せた。

34歳で迎えるW杯に向けては、「毎回毎回、W杯はスペシャル。年を取ったからといって最後と言わない、本当にベストを尽くしたい」と腕を撫(ぶ)している。

前回のW杯で「ジャッカル」が話題になった、トヨタヴェルブリッツのFL姫野。NZでの経験を経て、メンタルも成長して頼もしさがアップ 前回のW杯で「ジャッカル」が話題になった、トヨタヴェルブリッツのFL姫野。NZでの経験を経て、メンタルも成長して頼もしさがアップ

リーチだけでなく、今大会も中軸として活躍が期待されているのはFL姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)。19年のW杯で相手からボールを奪う「ジャッカル」の名手として一躍有名に。最近はYouTubeのゲーム実況などでファンと交流するなど、28歳らしい一面も持ち合わせる。

常々、「ラグビーを日本の文化にしたい」と話す姫野は、21年に単身でニュージーランド(NZ)に渡り、ハイランダーズで1シーズン過ごした。

結果は新人賞を獲得し、「自分にプレッシャーをかけたりして、パフォーマンスが維持できなかったが、NZに行ってから圧倒的にメンタリティが軽くなった」と笑顔で話した。

そのほか、東京サンゴリアスの下川甲嗣も、ピーター・ラブスカフニやファウルア・マキシ(共にスピアーズ船橋・東京ベイ)、テビタ・タタフ(東京サンゴリアス)といった外国人選手が多いバックローで、若手の注目株として存在感を示している。

福岡の修猷館高時代は全国の舞台には立てなかったが、早稲田大でLOとして台頭。接点で働き続ける〝黒子役〟として、3年時には大学選手権優勝に貢献した。社員選手としてサントリーに入社し、FLに転向すると、10日余りで試合に出場してトライを挙げるなど、すぐに活躍した。

昨季は攻守にわたって運動量豊富なプレーを見せ、「ボールキャリーとしてゲインし、接点で繰り返し同じクオリティでプレーできる」と高評価されて日本代表入り。そして昨年10月のオールブラックス戦で初キャップを得た。リーチ、姫野をお手本にしつつ、24歳でのW杯出場をうかがっている。

W杯に登録できる選手は前回大会から2人増えて33名となった。7、8月に国内で5試合が予定されているが、最後まで熾烈(しれつ)なポジション争いは続く。