シーズン開幕から2ヶ月が経ち、成績の明暗が分かれてきました。そんな中、チームにフィットし始めている新人たちがいます。
がむしゃらで、初々しさが残るルーキーのプレーを見ていると心があらわれる気がします。ということで、新婚の山本が「1年目」というテーマでお話しいたします。
ルーキーが活躍できるかどうかは、その選手の能力によるところも大きいと思いますが、「運」も必要だと思います。たとえば、常勝チームでは若手が活躍機会を得るのはなかなか難しいと思いますし、状態がよくないチームの首脳陣は「若手を使ってチームを活性化させよう」と思うかもしれません。
今年のヤクルトでは、ドラ1の吉村貢司郎投手が活躍しています。
大学、社会人を経てからの入団ですから、即戦力として入団当初から期待されていましたが、それに違わない活躍を見せてくれていますね。新人はみな、「1年目」という条件は変わりませんが、社会人出身の吉村投手が高卒ルーキーと違うのは、周囲が即戦力だと思っていることです。
そのプレシャーは相当なものだと思いますが、マウンドさばきも落ち着いていて、相手のタイミングにのまれたりすることもありません。常に自分のペースで投げている"強心臓"は、「さすがドラ1」と感心せずにはいられません。
さらに同じヤクルトで、まだ1軍で大活躍とまではいきませんが、ファームで実績を残している大卒1年目の澤井廉選手は「レッドソックスの吉田正尚選手みたいになるのではないか」と、ヤクルトファンでおなじみのライター・長谷川晶一さんも期待しています。
シュアなバッティングをする上に、時折見せる豪快なスイング。さらにファームの試合では、本塁打を放った直後に豪快なバットフリップを見せる大物ぶり。いい意味で、新人選手っぽくないスケールの大きさを感じます。
現在スタメンで活躍している高卒5年目の濵田太貴選手も、1年目からスケールの大きさ、ふてぶてしさを感じました。そういう選手のほうが、いい意味でプロに向いているのかもしれません。そういえば、"トリプルスリー男"山田哲人選手も、1年目のCSでデビューしたのですが、ひょうひょうとしている姿に大物の雰囲気を感じました。
1年目の選手は、最初から完成されているわけではありません。あの村上宗隆選手だって、最初は結果が出なかったけど、首脳陣が我慢して使い続けたことで、現在の成績につながりました。村上選手がいなかったらリーグ2連覇も達成できてなかったはず。ヤクルトは5月にして自力優勝が消滅しましたが、そんな今だからこそできる起用もあるのかなと思います。
しかし、ヤクルトは最下位-優勝-優勝-(現在)最下位と、ファンを飽きさせない素晴らしいチームですね(笑)。まだまだ優勝を諦めたわけではありませんが、2連覇で満足させてくれた思い出がありますから、あまり欲張らないようにしようと思っている自分もいます。そんな時こそ、小さな幸せを見つけたいですよね。私は1年目のルーキーを見ると、希望を感じます。
私が『ワースポ×MLB』のキャスターになって1年目の時は、経験が浅い自分を起用してくれたことへの感謝と、大きなプレッシャーがありました。ただ、そんな新人を見かねてか、みなさんが大きな救いの手を差し伸べてくれたので、なんとか乗り切ることができました。
荒削りではあったと思いますが、経験を重ねながら成長できたと思っています。今年で『ワースポ×MLB』のキャスターとして5年目を迎え、新人という立場から、積極的に発言や発信をして、番組をよくする役割を求められていることを感じます。そして何年経っても、「今日の進行はとてもよかったね」と言われると嬉しいものです。
もしかすると私にとっての番組は、プロ野球選手にとっての球団なのかもしれません。
私は意外と器用なほうなので、キャスター1年目からそつなくこなそうと思えば、できたのかもしれません。でも、当時の私に求められていたのは、きっとフレッシュさや荒削りな魅力だったと思います。起用する側も覚悟を持って使っていただいたわけですから、思い切ってプレーしたほうが、みんなが幸せになると思います。
キャスターも5年目になると、「できて当たり前」が基本になります。それをプレッシャーに思う時もあるけれど、期待していただけるのはとてもありがたいことです。
だから、私は1年目の選手を見るたびこう思います。「もっと失敗していい」って。
ということで結婚1年目も、いつか振り返った時に「いい一年だった」と思えますように。
それではまた来週。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン