キリンチャレンジカップのメンバー選考をフカボリ! キリンチャレンジカップのメンバー選考をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第57回のテーマは、明日より開催されるキリンチャレンジカップ2023について。今大会の位置づけや森保ジャパンがまだいまいち機能していない理由、そして初招集となった国内組3選手について福西崇史が解説する。

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先月25日、明日から開催されるキリンチャレンジカップ2023に臨む日本代表メンバーが発表されました。今大会は来年1月に開催されるAFCアジアカップ2023に向けたレギュラー争いの場という位置づけになります。メンバーを見たときの率直な印象としては、思った以上にベース作りの部分に重きを置いたメンバー選考になった、というところです。

3月のウルグアイ、コロンビアとの親善試合からカタールW杯まで活躍してきたベテランの選手たちが外れ、それまでのベースはありつつもフレッシュな面々も名を連ねました。今回はエルサルバドルとペルーという前回ほど実力のある国ではないので、もっと初招集メンバーがいてもおかしくはないと思っていましたが、実際は森下龍矢、川崎颯太、川村拓夢の3人のみとなりました。

ベース作りという点で、CBのレベルアップは急務だと思っています。吉田麻也が抜け、W杯レベルで計算できるのは冨安健洋、板倉滉の2人。3バックでは谷口彰悟も戦力になりました。ただ、それだけでは層が薄い。瀬古歩夢や伊藤洋輝がそこに割って入れるレベルに成長することが必要です。

前のポジションでは古橋亨梧、旗手怜央が久しぶりに招集されました。彼らを含め、攻撃陣に能力の高い選手は多くいますが、攻撃の形は整備されていません。プレミアリーグやラ・リーガ、ブンデスリーガをはじめ、海外組が増えてきたことはポジティブなことですが、各国でサッカーのスタイルや質はまったく異なり、それゆえに難しい面が出てきていると思っています。

選手各々はクラブでやっているスタイルを代表で主張するものですが、レベルやスピード感、テンポ、距離感などが違うので、どうしても合わない。ドイツ組が多いからそっちに合わせようと思っても、他のリーグでやっている選手が合わせるのは難しいものです。

また、例えば代表では三笘薫や久保建英はクラブでやっているときより、ボールをもらう位置が低いし、古橋の動き出しにタイミングよくパスを出せるパサータイプが少ないわけです。彼らがクラブで結果を出してきた形はそれぞれ違うのに、それを代表という一つの枠の中ですべて再現するのは無理があります。だから、カタールでは森保一監督が志向する堅守速攻スタイルの中で、ハマる選手たちを当てはめて戦いました。

とはいえ、抱えるタレントを活かさないのはもったいないし、ファン・サポーターはそのタレントが代表で躍動する姿を求めています。次の大会に向けて、うまくバランスが定まらないチームを森保監督がどう活かして、一つの形にまとめ上げていくのか。それを期待したいところですが、思っている以上に時間のかかる作業だと思います。

また、アジアカップとW杯では攻守の比重がまったく違うものになります。W杯と違ってより自分たちがボールを握る時間が増えるアジアでの戦いで、今の代表チームがどんなスタイルを確立していくのか。今回のキリンチャレンジカップもその過程の一つとして楽しみです。

ベースのチーム作りのほかに、個人的にはJリーグ勢が4人しかいないのは気になるところです。ただ、ほとんどが海外組となっている時代にJリーグでの活躍がしっかりと評価され、こうして呼ばれるということは国内組にとって良い刺激になると思います。

今季名古屋で好調の森下が代表に呼ばれることを期待していた人も多いのではないでしょうか。スピードを活かしたダイナミックなプレーが、代表チームに入ったときにどれほど通用するのかは見ものです。

左サイドバックは中山雄太や伊藤洋輝など、ある程度実力を示している選手もいれば、3月に招集されたバングーナガンデ佳史扶(かしーふ)といったポテンシャルのある若手が他にも多くいます。そんな中でもまだ軸となる選手は定まっていないポジション。今回は森下にとって大きなアピールのチャンスになると思います。

川崎は国内の選手にとって強いメッセージを持った選出だと思います。今季の京都はチームとして現在苦しい状況にあります。それでも選ばれたのは選手個人のパフォーマンスを見て、評価しているということです。ボランチは遠藤航という絶対的な存在がいる競争の厳しいポジション。だからこそ、川崎にとって得るものが非常に多い機会になると思います。

川村も今Jリーグで好調な選手の一人です。ただ、彼が得意とするボランチから2列目にかけては代表の中でもとくにポジション争いが激しいセクションです。正直、今回は森下と川崎も含めて代表定着を狙ってではなく、前回の藤井陽也や半田陸がそうだったように、彼らの今後の成長を促す経験としての選出が狙いだと思います。

3人にとっては試合でチャンスをもらえれば当然ですが、練習も重要なアピールの場です。まずは代表メンバーの中で同等にやれることを練習で見せつけなければいけません。だから初招集の選手にとって練習は試合並みに緊張感があるものです。海外組はシーズン終わりで、国内組はシーズン真っ只中。コンディションやモチベーションに大きな差があると思うのでなおさらです。

ただ、最初は思い通りにいかないことは多々あるでしょう。それでも爪痕を残すため、Jリーグでやっているプレーからもうワンランク上のレベルが求められます。3人がそのワンランク上が何なのかを感じ取り、将来的に本当の代表レベルになるための成長につながる機会になると思います。

アジアカップに向けてチームとしての強化はもちろんですが、選手個々のアピールやレベルアップの機会としても今大会は楽しみにしたいと思います。

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